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闢発の妖精王1 壊滅編  作者: C先輩
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手厚い歓迎

執筆中に寝落ちする為、二酸化炭素計を買って換気を始めました。

 大樹の中は大きな空間が出来ていた。広場があり、壁面を螺旋状に階段が設けられ、何階層にも区画が設けられている。

 トアンに1階広間の中央に招かれると、ここで待つように言われたので、そのまま周りのエルフ達を眺めていた。

 行き交っているのはどれも肌の青白い、ヤリンと同じシンカーと呼ばれるエルフ達だが、幾らかトアンやリヨースのような、人に近い肌色をしたエルフも混ざっていた。恐らく彼らがリンカーなのだろう、あとで違いについてリヨースかトアンにでも聞いてみたい所である。


「お待たせしました」


 ぞろぞろと人を引き連れてリヨースがやってきた。


「改めてご挨拶を。私はリヨース。ここダグの町を取りまとめている者です。そしてこちらの方々はトアンと同じく、ここを守る戦士たちです」


 紹介されたエルフ達は、殆どが肌の青白いエルフの男達だった。鞣した革鎧に弓矢と鞘を差し、これからひと狩りにでもいきそうな出で立ちだ。


「シュウだ。こちらの少女が保護したヤリン。そして彼女はアシュリー、フィガロスの元騎士だ」


 ヤリンは深々とお辞儀をし、アシュリーは何やら胸を張っている。元騎士という紹介で何故そこまでドヤ顔できるのかは謎だ。


「本来ならば歓迎の宴を催す所ですが、少々込み入った事情がありまして、ご容赦下さい」


 今度はリヨースが頭を下げてくる。その様子を、後ろの戦士達はその様子を不満気に見ていた。その顔は知っている。人が酷くプライドを傷つけられた時に見せる顔だ。下らないが、成程込み入った事情である。


「気にしません。こちらの機体を整備させて頂ける一点において貴方がたに深く感謝しています」


「恐れ入りますわ。それで、早速なのですけれど――」


「待て」


 リヨースはここへ自分達を招き入れた用件を話そうとした時だった。戦士達の中から、他のエルフ達より随分と肩幅のあるシンカーの偉丈夫が歩み出る。その眼差しは険しくこちらを見据えていた。


「バルカン」


「リヨース、こいつか?」


「ええ」


 バルカンと呼ばれた男と目線がピタリと合う。その表情が嘲笑の混じったものへと変わるのを見ながら。


「はっ、お前が妖精王の力を持つだのなんだのと嘯くから期待してみれば、ただの人間じゃないか!」


 バルカンは不満を隠そうともせず、背負っていた長槍を手に取ると穂先をこちらへ向けて来る。


「おい、構えろ」


 いきなり臨戦態勢である。


「何故?」


 有無を言わさずバルカンが疾駆する。一気に間合いを詰めて槍を突き出してきた。咄嗟に思考を加速――自重を抜いてサイドステップでそれを躱す。すかさずバルカンは回避した方向とは逆に槍を横薙ぎ、その反動を使って回し蹴りをしてきた。さらにバックステップ――遠心力を得た槍のリーチ外まで逃げると、バルカンはそのまま槍を投擲してきた。素粒子を圧縮させて小さな壁を作り、槍の軌道を少しズラして最小限の動きで躱すと、バルカンは目前に迫っていた。突き出してくる拳には、きらりと反射する鋭利な刃が見える。

 脳裏に浮かんだ名はジャマダハル。握りこみ、パンチの要領で繰り出す刺突武器だ。自重を乗せやすく、腰の回転などの運動エネルギーを伝えやすい事から貫通力や衝撃力といった部分が短刃系の武器で飛びぬけて強い。使い手の技量次第だが、パイルバンカーのような架空兵器に最も近しい武器だといえる。


(珍しい武器だ。浪漫さえ感じるな)


 加速した思考でそんな事を考えながら、バルカンの姿勢、目線、腕の向きから軌道を予測し、ラッシュの如く繰り出してくる拳をスレスレで避けていく。素粒子エンジンを全開で回して強引に制圧するのは容易い。だが思惑の分からん連中に手の内を見せる程親切では無いし、バルカンがそういうものを引き出す為の当て馬にされている予感さえある。ここは楽をするべきでは無い。


「なんだ、あいつは」


「バルカンの動きを全て見切っているぞ」


「何て速さだ」


 ギャラリーは一様に驚いていた。

 正直バルカンはかなりの実力だ。思考加速ができない身体だったならば、全く追従できない速度と戦術、そして技術と力の前に勝ち目は無かっただろう。というか見目麗しく品行方正なエルフという自分のイメージがこの程どんどん崩れている。この筋肉ダルマは本当にエルフなのか。


「ッチ、おいてめぇ!」


 バックステップを取り、バルカンが悪態をついてくる。


「なんで反撃しない!」


「何故反撃しなきゃならん」


「ぁあイラつくぜ!おいリヨース!後で文句言うなよ!」


「いやだから説明しろって――」


「プレシーコ!ロウ!ニンファエナ!シルウェストレ!アヴェ!」


 何事かバルカンが叫ぶと、その身体の周りを風が渦巻き始めた。エルフの魔法だろうか。リヨース達が何も言わない所を見るに、想定された事態なのだろう。いや若干溜息をついている、これは――諦めだろうか。

 ――というかいい加減無視され続けて腹が立ってきた。


 バルカンが動いた。それは突風のような加速で、常人が見れば一瞬でバルカンの姿が消えたように見えただろう。しかしこのアバターが持つ"速さ"には追いつけない。瞬間的に自重をゼロにして、床を蹴る。接近してくるバルカンへ敢えて猛スピードで突撃した。

 相対距離が詰まる速度が倍以上に速まる。脳の処理がまるで追いついていないのか、バルカンは眼前に迫ったこちらの姿をまるで捉えられていない。前傾になったバルカンの懐へ潜り込み、相手の自重を奪うと掌底で打ち上げた。ガッと言う短い声と共に錐揉みしながら打ち上がったバルカンを追いかけて先回りする。衝撃と突然揺さぶられる三半規管にパニックとなったバルカンの胸倉を掴んで叩き落とし、腰に差している短刀を奪って首に添えた。怪我をしないよう落下の衝撃は和らげてやったこちらの手心に咽び泣いて感謝して欲しい。


「待ってくれ!」


 その声は背後から。聞き覚えのある、トアンの声だった。


「すまない。バルカンを止めなかった事、心から謝罪する。皆も異論無いな!?」


 広間を囲う人だかりはシンと静まり返り、リヨースが静かに歩み寄る。


「シュウ様、同胞達を納得させる為このような手段に出たこと、大変申し訳ありませんでした」


 そう言ってリヨースは深々とお辞儀すると、倒れているバルカンの元へ駆け寄り、なんと頭頂部を思いっきり蹴り飛ばした。


「この大馬鹿!ちゃんと対話するって言ったから任せたのに台無しよ!」


 見目麗しく品行方正なエルフという自分のイメージがこの程どんどん崩れていた。

シュウ「エルフってどんな種族なんだ?」

ガスパル「魔法に長けてる、ただ性格が悪い」

シュウ「えぇ…」

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