表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闢発の妖精王1 壊滅編  作者: C先輩
35/66

青の戦士と銀の長

 光学迷彩を維持したまま傍観していると、エルフの里を襲ったグレートウォームと迎撃に現れたコバルトブルーの妖精機の戦いは、瞬く間に終わりを迎えた。


 正直な感想を言えば、驚いたと言わざるを得ない。

 最近フレイでサクっと仕留めた記憶が新しくて失念していたが、グレートウォームは強力だった。触手による攻撃は俊敏で、生身の傭兵では鎧ごと吹き飛ばされ、打ち所が悪ければそのまま息の根を止められかねないぐらい程強力だ。そしてかなりの質量攻撃を加える事でようやく倒せるタフネスを持つ為、妖精機であっても複数の機体で包囲してようやく倒し切っていた。

 積もる所、妖精機の性能を侮っていたというほかない。アシュリーが乗っているサラマンダーも高性能だと思うが、この青い機体は兎に角"速い"のが特徴だ。

 卓越した俊敏性と強力な魔法による戦術。グレートウォームを一撃で粉砕するその落雷魔法にはどこか銀竜を思わせる凄味があった。


 〈アレを受ければ、こちらもタダでは済みませんね〉


 〈ホントにそう思ってる?〉


 〈いえ全く〉


 それはそうだろう。あの機体は短剣を誘導体として落雷を意図的に命中させる技術を持っている事が見て取れた。裏を返せば、それはフレイに対して無謀な前提条件であり、脅威にはならないのだ。


 〈とはいえ相手は魔法だ。俺達の予想だにしないインチキを目の当たりにする可能性は常に捨てないように〉


 〈承知しました〉


 程なくしてアシュリー達が森へ到達し、露骨に警戒されているエルフ達の前へと歩み出る。


『そこで止まれ!』


 コバルトブルーの妖精機が呼び止めた。

 機体の両手には、先程も使用していた二振りの短剣を構え、油断なくサラマンダーを見据えている。


『その気配は知っているぞ――無尽の火、太祖サラマンダーか!』


『私の名はアシュリー・ガーランド、かつてサラマンダーの器を託された始祖ガーランドの末裔。故在って我らはシンカーの娘を保護し、追手から逃亡中の身。どうかしばらく匿って頂けないでしょうか』


 予めアシュリーが準備していたという経緯を語る。ガーランド家というのは結構なお家らしい。


『下野の同胞か、よくぞ辿り着いた。我が名はダグの守護戦士トアン。太祖に認められしヒトの子よ、同道大儀であった。だが同胞以外の者が、我ら最後の郷へと足を踏み入れる事はならん』


 トアンはよく通る綺麗な声だった。しかし困ったことに拒まれてしまっている。


『理由を伺っても?』


『同胞は兎も角、ヒトの子は信用できぬ。例えお前達に悪意が無かろうとも、その繋がりは消せるものでは無い。先の襲撃も、そちらと無関係とは限らない』


『そんな!』


 アシュリーが言葉に詰まる。駄目だ、やはり閉鎖的な種族の住処に、妖精機ごと居座るのは無謀だったか。

 どうしたものかと考えていると、ムベベから降りたヤリンがトアンの機体へと駆け寄っていく。


「トアン様!シンカーのヤリンです!どうか話を聞いてください!私達はあるお方の守護を受けてここまで逃げ延びてきました。実はそのお方は傷を負っていて、手当をして欲しいのです。その方は、我らの希望です!」


『ちょっとヤリン!?』


 アシュリーが驚く、当然だ。完全に予定外の行動なのだから。


『その者とは、太祖では無いというのか?』


 ヤリンは頷く。


「優しく、強いお方です。そして、私は見ました。そのお方に王の力が宿っているのを!」


『なに!?』


 トアンの機体と、後ろで身を潜めていたエルフ達が騒めく。


 〈もうコッソリと潜入という雰囲気では無さそうですが〉


 アイリスの言う通りだ。いっそのこと開き直って、偉そうに登場してしまおうか。


 〈後光でも出しましょうか?演出で〉


 〈――あんまり派手な事しちゃ駄目だよ〉


 アイリスと脳内会議を終了し、光学迷彩を解いた。


『お初お目にかかる』


 姿を現し、音も立てずにサラマンダーの隣へと降下する。背後にはアイリスが素粒子の摩擦によって起こしたスパークがバチバチと鳴り響き、発生した熱が機体頭上の大気を揺らめかせていた。


『なっ――』


 誰もが息をのむようにして固まっていた。ちょっとやりすぎたかもしれない。

 この際だからヤリンの勘違いに乗っかっていこう。コイツだって、自分の世界ではちゃんと妖精王なのだ。


『私はシュウ、この機体は妖精王の遺した遺産。どうか我らの願いを聞いてもらえないだろうか』


 足元で目を輝かせてこちらを見上げて来るヤリンと、その後ろで頭を掻いているガスパルを確認して、トアンへ向き直った。


『待て、待ってくれ、これは私の判断できる規模を超えている。一度戻って――』


「その必要はありませんよトアン」


 小さな鈴のような、しかしハッキリと聞こえる声が鳴った。

 洞穴の入口に人が立っている。シルクのような透き通る白い衣を纏った、やや桃色の混じった銀髪の女性だ。


『リヨース様!』


 トアンは慌てて、リヨースと呼んだ女性へと機体を跪かせる。


「顔を上げてトアン。それからお客人がた、よく私達の仲間を助けて下さいました」


 リヨースはゆったりとした所作でこちらに一礼すると、宣言した。


「シンカー最後の楽園、ダグの町はあなた方を歓迎します。そしてどうか、その力を使って我らを危機からお救い下さいませ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ