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闢発の妖精王1 壊滅編  作者: C先輩
33/66

来訪者と潜入者と、襲撃者と。

書き続けて腕が上がったら、もっと読みやすい序章にしたいな。

今年最後の投稿です。

 ・・・server access error ――time out.

 ・・・cloud app reboot ――time out.

 ・・・error check start ――time out.

 ・・・Safe mode boot on.

 ・・・System boot ――HelloVector.


 EL.F.と神経接続し、機体と脳波が同期すると、続けざまに機体のあちこちから莫大な情報が集まってくる。


 〈おかえりなさいませ〉


 アイリスの声が、耳ではないどこかから聞こえた。機体と脳が直接繋がった証だ。


 〈よし、出発だ〉


 機体を立ち上げて、光学迷彩を起動させると、上空へ舞い上がった。これから向かうのは、眼前に広がる山脈の、竜の渓谷と呼ばれる地帯を抜けた先にある森林地帯。竜という強力な自然の要害を備えたエルフの里。


 〈サラマンダー以下、移動開始しました〉


 今回アシュリー達とは別行動だ。目的地の里はシンカーのエルフ達によって開墾された村であり、その歴史から見ても来訪者に対して閉鎖的と言わざるを得ない。

 但し、例外もある。同胞と、サラマンダーのような元素機に対しての敬意を払うという彼らは、アシュリーとヤリンを恐らく受け入れてくれるだろうという事だ。追われていたヤリンを保護し、連れて来た道中の損耗を治すべく、修理できる設備を借りる。その際に、こっそりとフレイも潜入して修理してしまうという作戦だった。


 〈機体の状態は?〉


 人間の脳がそのまま受信すれば過負荷で障害を負ってしまうであろう情報の津波は、EL.F.に搭載されたシステムによって選別され、必要最低限の情報のみが届く。フレイの場合、その役目はアイリスのものだ。


 〈主機、補機共に正常、ただ腕部は今にも千切れそうですので、()()()()支えています〉


 〈影響は?〉


 〈粒子占有率はアイドル時で2割、戦闘機動で6割です〉


 EL.F.が制御する素粒子も無尽蔵では無い。周囲の大気中に存在する量と、素粒子エンジンが生み出し、機体に貯蔵している圧縮粒子の量によって瞬間出力の上限が定められているのだから。

 それを6割――腕を千切れさせない為だけに戦闘中は6割も出力に制限がかかるのだ。


 〈竜というのは凄いな〉


 思い起こすのは成層圏で激戦を繰り広げた銀の竜。大質量の見た目に違わぬパワー、何よりその巨躯でもってフレイの速度に追従し得る速度、まさに次元の違う生命体だった。

 そんなものと正面から戦い、倒した。その代償としては、安いぐらいだろう。


 〈この状態で戦おうとしないで下さいね〉


 〈まさか、振り切るさ〉


 アイリスに釘を刺されてしまったが、そもそも銀竜程の個体が棲息している等とは考えていない。そんなものが近くに居たら呑気にヒトが暮らせる場所なんて無さそうだ。


 〈行こう〉


 視界の下ではヤリン達が、アシュリーの機体に先導されるようにして、山へと分け入っていた。それを脇目にフレイを加速させていく。爆発推進を使わず、粒子制御のみによる緩やかなで、静かな加速。光学迷彩も組み合わせての隠密移動は、そこにEL.F.が居ると分かっていても見つける事さえ困難だ。


 山脈を見下ろせる程の高度まで上昇すると、それらはあった。

 渓谷地帯を飛び回る巨大な生物、濃い緑色の肌色を持つ翼竜達。その先に見える稜線の外れに、隆起したような山肌が囲うようにして、森林地帯がある。


 〈どれどれ〉


 狙撃用のカメラアイに視界を切り替えてズームすると、森林地帯の中にある少し拓かれた区画を見つけた。

 櫓のようなモノ以外は、見張りと思わしき数人のエルフがいるだけで、特に何もない。その先の岩壁に、妖精機がそのまま入れそうな大きな入口がある事を除いて――


 〈もしかして、エルフの里って地中にあるのか?〉


 ありえない話では無い。そもそもここは竜が飛び交っている地域なのだ、自分達だけ襲われない等という道理は無い。

 上空からゆっくりと森林地帯へと近づいていく。翼竜達とは一定の距離を保っていたが、有視界距離というだけではこちらに気付く様子は無かった。


 〈アシュリー達は――〉


 アシュリー達の進行ルート上に翼竜達は居ない。原生動物か魔物か不明の、巨大な熊のような生物に襲い掛かられていたが、アシュリーがドロップキックで吹き飛ばしていた。


 〈相変わらず素晴らしい強度ですね〉


 それを見たアイリスが感嘆したように言う。ギャグのような一コマだったが、その意見には概ね同意だった。

 EL.F.や妖精機ぐらいのロボットとなればその総重量はかなりのものになる。それ故格闘戦などしようものなら、関節部にかかる負担は甚大であり、素粒子によって重量をかなり誤魔化しているEL.F.でさえ、褒められた戦い方とは言えない。

 それがどうだ、妖精機はその重量を素粒子も無しで受け止め、剣を振り、盾で受け、相手を蹴り飛ばしさえするのだ。


 〈今回エルフの工房を見せてもらって、その謎が解けるといいが――〉


 何かしらのからくりはあるのだろう。是非とも参考にしたい技術だった。

 そんな事を考えていた時だった。


 〈鐘の音?〉


 下方、エルフの里入口を思わしき場所で、何やらカーンカーンと鐘を打ち鳴らしている。見ればそれは、周りに響かせているというより、洞穴の中へと打ち鳴らしているようだった。

 まさかアシュリー達が補足され、襲撃者と思われたか――

 そう思ってアシュリー達の位置を確認するが、まだまだその距離は遠く、櫓などから見えるような場所には居ない。


 その答えは、すぐさまやってきた。

 アシュリー達とは反対の方角から、地鳴りが響いてくる。岩壁を突き破り、森林地帯へと雪崩れ込んできたその巨体は、かつて倒したグレートウォーム。それも、黒獣化した個体だった。


 〈彼らは、地中から近づいてきたあの生物をどうやって補足したのでしょう〉


 〈分からん、さて助けるべきか――〉


 恩を売る――にしては些か状況が面倒だった。急に現れた怪物、急に現れてそいつを倒す謎の機体、正直言ってマッチポンプを疑われても仕方ない。とはいえ彼らに甚大な被害が出れば、友好的な協力をどうのこうのという余裕も無くなる。


 数秒の逡巡。

 動きがあったのはエルフ達だった。

 洞穴から、1機の妖精機と思わしき機体が姿を現した。

 やや細身のサラマンダーよりも更に線の細い、コバルトブルーの機体だった。


『参る!』


 透き通るような高い声と共に、蒼の妖精機は疾駆した。腰から二振りの短剣を抜き、黒いグレートウォームへ一瞬で間合いを詰めると、殺到する触手を潜り抜けて巨躯を駆け上がり、その脳天に短剣を勢いよく突き刺した。

「投げてる短剣ってカッコいいわよね」

「重心が違うから使いにくいだけだぞ」

「夢がない!」

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