頑固娘と、謎多き乙女
職場が変わってバタバタしていました。
更新がこれ以上滞らないよう頑張ります。
ボーっと書いてると拙速な文章になるので困ります。でも肉厚にすると、1話がなげぇんですよね…
結局、デナン・スーンは妖精機を明け渡した。
素直に機体を降りたにも関わらず、その後も別の物を差し出すだのとしつこくゴネていたが、半壊して着底していた空艇ピーフォウルをフレイで上空に浮かばせて、地面に思いっきり叩きつけてやると大人しくなった。
条件を飲んだデナン達が帰路についた後は、大混乱に陥っている白騎士の皆さんのもとへ、機体のマニピュレータに掴まれてぐったりしているユズベルトを送り届けた。
一部始終を蚊帳の外から見守っていた傭兵諸君も、帰りの便が無いと困るだろうからとEL.F.で空艇の甲板まで輸送した時だった。
「まだ、1人中に残っているんです!」
大声をあげたのはウィッツだった。1人ぐらいならこちらで町に運ぶと伝えると、深々とお辞儀してきた。あの妙な面倒見の良さは性分なのだろう。
「何故私を助けたのです?」
『不要な殺生だ。後ろの者達も困るだろう?』
ユズベルトの問いには適当な建前をそれらしく話した。何せ妖精王と名乗ったのだ、殺人は嫌などと言言えば途端に胡散臭くなってしまう気がする。
彼らは話し合いの末、一旦身を隠すつもりらしい。自分達の嫌疑を晴らす手段が見つかるまでは、正面から無実を訴えても望みは薄いという事だ。
こうして白騎士隊とは一度別れ、コーンロウに戻った。鹵獲した妖精機は随分と邪魔になるものだから、アイリスに郊外まで運ばせて、迷彩状態で待機してもらう事にした。
町へ戻ると、組合へは向かわず宿へ戻った。オーナーのルクレツィアは快く出迎えてくれて、美味しい料理を沢山用意してくれた。
「随分早いお帰りなのね、空艇の遠征って聞いたからもっと日が長いと思ってたのよ」
「それがね、デカい黒獣に襲われて大混乱になるわ、聖騎士って奴らが乱入してきて白騎士の皆を捕まえようとして戦闘になったりして、依頼どころじゃなくなったから隙を見て逃げてきたんだよ」
「あらまっ、オオゴトになっちゃってるじゃない!シューちゃんは怪我は無かったの?」
「ありがとうオーナー、俺の魔法は逃げる時にも便利なんだよ。他の人達は見捨てるようで悪い事してしまったけど」
「いいのよぉ~傭兵は命あっての物種、最後は自分の身を守るものだから皆その辺は恨みっこ無しってね」
「含蓄があるなあ、もしかして元傭兵?」
「あら、乙女の秘密を詮索なんて野暮よ」
「ごめんごめん、今日も料理凄く美味しいよ」
ご馳走に舌鼓を打ちながらこれからの立ち回りを考える、オーナーも怪我の心配以上の事は詮索しないでくれた。この絶妙な距離感がオーナーの魅力なんだろう。
翌日からはコーンロウで妖精機の技師に関する情報を聞き込んだ。何せ早い所鹵獲した妖精機を解析するなり技師を捕まえるなりしてフレイの修理に繋げたい。
数日間発着場の近くへ通い、露天商や工廠で働いてそうな薄汚れた作業服の男達から聞いた話をまとめると、空艇や妖精機の技師はどこかの組織が専属で雇っている事が多く、また作業量も多いので、個人の仕事を請けている職人は滅多に居ないのだという。
――困った。
正直な所そうなんじゃないかとは考えていた。文明レベルでいえば、電気はおろか蒸気機関も見当たらない世界で、EL.F.と同等の巨大さを誇る人型兵器を組み上げ、あまつさえ量産化まで行えているというのだ。製造ライン化が不可能な以上、人海戦術で量産と整備をこなしているのだろう。
気落ちしながら宿に戻り、束の間の幸せな夕食タイムに浸っていると、自分を訪ねて女性の騎士がやってきた。信じられん、空気が読めないにも程がある。
オーナーも人が悪い。EL.F.の事以外はある程度事情を話したというのに、わざわざ襲撃者の一味を待たせて自分に会わせよう等と。
どうも話を聞く限り、白騎士の隊長さんは反逆罪の容疑がかけられていて、俺は他国のスパイかその隊長さんとグルかという疑いがかかっているという。
いやまあ叩けば埃ってレベルでは無いほど隠し事はある身だが、下らなくて上手く弁明する元気すらも沸いてこなかった。
「あ~はいはい間諜です間諜です」
「貴様!」
食器を返しつつ投げやりに返事をしてみたら、随分と怒らせてしまった。こちらへ踏み込み、上段から袈裟斬るような軌道で剣を打ち下ろしてくる。
――正気だろうか、普通あんな斬り方したら容疑者が死ぬぞ。
流石に死ぬ訳にはいかないので、素粒子エンジンを励起させて騎士の女を空中に拘束する。
「おい乱暴な娘、いつもそうやって証拠が固まっていない容疑者を斬り殺しているのか?」
「くっ降ろせ!卑怯な!戦うなら正々堂々と戦え!」
なんじゃこいつは。
話が通じないし、ひどい言われようだった。段々腹が立ってきた。
「そうか、そんなに言うなら――」
「は~いそこまでよ」
パンパンと手を叩いてオーナーが仲裁に入ってきた。
「シューちゃん、彼女はアシュリー。私の古い友人の姪っ子なの。私に免じてここは抑えてくれるかしら?」
「えっ!?」
突然のカミングアウトにアシュリーの方が驚いていた。
「俺はともかく、問題はこいつだろう?」
するとオーナーはウフウフといつも以上にご機嫌で不気味な笑い声をあげながら近寄り、そっと耳打ちをしてきた。
「私の言う通りにしてくれたら、あなたの探し物が見つかるわよ」




