99話 リップティッチの王
ーーエリック陣営にて
「嘘だろ、リーヤまで攫われてしまった……」
そう言って悲しそうに顔を覆い隠すエリック。
「顔を上げてくれエリック、まだそうとは決まった訳じゃない、もしかしたら昨日ラナトスが話していたグリフという人物がアンドリューを助けて、ゲナトへ連れ帰ってしまいリーヤはその後を単独で追っているだけかもしれないし」
アーチボルトはまたしてもほぼ正解を言い当てる。
「んな訳ないですよサンダースさん、絶対攫われたんだ、そうに決まってる」
そう言って塞ぎ込んでしまうエリック。
アーチボルトの読みはほぼ当たっており、明け方グリフはアンドリューの元へと現れ、氷を破壊してアンドリューを回収している。
その時、近くで寝ていたリーヤには気がついていたが、手を出す理由もないのでそのままにして逃げたのだ。
「落ち着けよ、お父さん」
「やめてくれルース、今お前に慰められたくないんだ」
「……」
とても2歳児と父親の会話ではないものを目の当たりにして、アーチボルトは固まってしまう。
百戦錬磨を誇る彼が固まってしまう事は、史上初である。
「待てよ、リーヤと俺は守護竜契約を結んでるんだ、ならここへ呼べるはず」
「おお!流石だぞ父よ」
「おう息子よ!」
「……なんだこの違和感は」
2人のやり取りをみて怪訝そうな顔を浮かべるアーチボルト。
そうしてエリックは、リーヤを召喚すべくラナトスに教えてもらった召喚魔法を発動する。
「召喚獣契約発動、出よ守護竜リーヤ!」
『バシュンッ』
「え、け、煙だけ?」
エリックが召喚魔法を使用すると、辺りに煙が立ち込めるだけで、肝心のリーヤは現れなかった。
「どういう事だ父よ、お主リーヤとは召喚獣契約を結んでると前に話しておったろ」
「そ、そのはずなんだけど……」
「……」
その様子を黙って見つめるアーチボルト。
「……もしかしたら召喚拒否かもしれないな」
「召喚拒否!?」
アーチボルトからのその言葉に驚くエリック。
「ああ、召喚魔法は基本的にお互いの同意があって成立するんだ、つまり一方の同意がない場合には成功しないんだ」
「そ、それってつまり……」
「どうやら嫌われたようじゃな父よ」
そう言ってニヤつくルース。
「う、嘘だろリーヤ、俺が何したって言うんだよぉ」
エリックはそう嘆くと地面に伏してしまう。
「落ち着けエリック、リーヤさんにはもしかしたら何か理由があるのかもしれない」
「理由?」
「ああ、彼女は責任感の強い性格をしている気がするし、取り逃したアンドリュー達を追いかけたくて召喚拒否をしているのかも」
またしても正解を引くアーチボルト。
「いや違いますよサンダースさん、きっと俺のことが嫌いなんですよ」
そう言って落ち込むエリック。
「父よ……」
「なぁ2人とも、気になったんだがどうして君たちは親子なのにそんなにぎこちないんだい?」
どうしても気になったアーチボルトは、2人にそう訊ねる。
『……』
その問いにお互いの顔を見合わせるエリックとルース。
「うーん、仕方ない話すか」
エリックはそう言って、アーチボルトにルースの正体を打ち明けるのだった。
ーーリップティッチ、王都にて
「国王様ー!!」
王のいる部屋に緊迫した様子の1人の衛兵が1人忙しなく入ってきた。
「どうした?」
「大変でございます、システィーナ様が……」
「システィーナがどうしたのじゃっ!」
「さ、攫われました、犯人はゲナトの者です」
「な、なんじゃと……」
『バタンッ』
そう言ってリップティッチの王は床に倒れ込んでしまう。
『国王様ー!!』




