100話 アンドリューの謎
ーーエリック陣営にて
「……事情はわかったが、まさか過去のベルーナ領主が子孫の身体に宿るとはな」
エリックからルースの事を聞いたアーチボルトは、納得したようにそう呟く。
「その反応めっちゃよくわかります、本当に不思議ですよね~」
「そうだね父さん」
「いやルース、お前には言ってない」
軽妙な掛け合いを見せるエリックとルース。
「違和感がもの凄いが、ルースさん貴方はエリックの3代前の領主で間違いないのですよね」
「そうだよー!」
アーチボルトの問いにまるで2歳児のように明るく答えるルース。
「おいルース、もう子供のふりはいいだろ」
その様子を見てエリックはルースにそう話す。
「はは、まぁそうじゃな」
「それで2人とも、これからどうするつもりなんだい?私はリーヤさんの事が心配なのでこのまま、追いかけようと思うのだが」
アーチボルトは真顔でそう提案した。
「え、追いかけてくれるんですか?」
「もちろんです、リーヤさんの事が心配ですのでね」
「そこまでしてくれるのはありがたいですが、他所の国の方にそこまでしてもらうのは悪いですよ……」
遠慮気味にそう話すエリック。
しかし隣のルースは不適な笑みを浮かべていた。
「いや父よ、こやつ他に狙いがあるようだぞ」
「……」
ルースがそう言うと、アーチボルトの表情は曇り始める。
「お、おいルース、サンダースさんはリーヤを助けたいから協力しようとしてくれているんだぞ!」
「いいんだエリック、ルースさんの言っていることは当たっているから」
「え?」
アーチボルトは諦めたようにそう話す。
「どうやって気がついたのですか?」
「勘だよサンダースの若造」
「なるほど、その様子だとどうやら私の家についてもお詳しそうですね」
「まぁな、ひょっとするとお前よりも詳しいやもしれんぞ」
そう言ってルースはニヤリと笑った。
「まったく、ルースさんには敵いませんね」
「さ、サンダースさん?」
アーチボルトとルースのやり取りに1人取り残されているエリックは、不安そうにアーチボルトにそう訊ねる。
「エリック、別に大した事ではないので安心してください、実は私が気がかりにしているのはリーヤさんだけではないのです」
「それは誰なんですか?」
エリックは間をおかずにそう訊いた。
「アンドリューです、彼とは昔一度だけ手合わせをしているのです」
「そうなんですか!?」
アーチボルトからの突然のその告白に驚きを隠しきれないエリック。
「ええ、そこで私はまだ若い彼を再起不能にしました」
「う、うん……」
アーチボルトのその言葉に複雑な表情を浮かべるエリック。
「ですがそこで会った彼と昨日会った彼とは何か違う気がしたのです」
アーチボルトは不思議そうな顔をしてそう話す。
「違うとはなんだサンダースよ」
「ルースさん、違和感というのでしょうか、以前戦った彼にはもっと焦っている感じがありました、そうまるでそう遠くないうちに死ぬ事が決まっているかのような必死です」
「ほう」
「そして最大の謎は、彼が私を忘れていたという事です、半殺しにされた相手を忘れるとは考えにくいですし」
「た、確かに……」
「そこで私は一つの仮説を立てました」
「仮説?」
「ええ、それはすでにアンドリューという人物は死んでいるという仮説です」
アーチボルトはそう言うと、眼鏡をクイっと上げる。
「な、何を言っているんだよサンダースさん」
「いや父よ、サンダースの言っていることはあながち間違いではない、その昔、私も獣人化した者と戦った事があるが、その時奴は自分派短命だと嘆いていた」
「短命……」
「私はアンドリューやルースさんの戦った方の言っている死とは、人格の死なのではと考えています」
「人格の死か、なるほど面白い仮説だなサンダースよ、つまりお前は獣人化した者の人格は早々に消滅し、残った獣の心が身体を奪うと言いたいのだな」
「流石はルースさん、理解が早くて助かります」
「はは、そんな事ないさサンダースよ」
そう言って笑い合うルースとアーチボルト。
エリックはその様子に疎外感を覚え、一歩引いてしまう。
「俺の身内がどんどんサンダースさんに靡いて行っている気がする……」
エリックは複雑な心境でそう呟くのだった。




