101話 リップティッチの王太子
ーーエリック陣営にて
「とりあえず状況を整理すると、システィーナさんがまず攫われていて、そのあとをリーヤが追いかけていて、俺達はなるべく早くその2人の後を追わないといけないという状況で間違いかな?」
エリックはルースとアーチボルトにそう確認する。
「うむ、合っていると思うぞ父よ」
「うん、それで間違いないと思うよ」
「ありがとう2人とも、それでだけど俺はリーヤの事が心配だしこのままゲナトに向かうよ」
「私も一緒だエリック」
「ああ、助かるよサンダースさん、ルースはエリーを母さんを頼むよ」
「了解した」
ルースはそう答えると宿屋へ歩き出す。
「ルース!ラナトスに皆んなを頼むと伝えてくれ」
「ん、父よラナトスは連れて行かんのか?」
「まだ何があるかわからないし、なるべくラナトスには家族の近くにいてもらえたいんだ」
「なるほど了解した、ならばそう伝えておく」
そうしてルースは宿屋の中へと入っていった。
「……改めて見ても、2歳児が1人で歩いていく姿は違和感だな」
去っていくルースを見て、思わずそう呟くアーチボルト。
「まぁ気持ちはわかりますよ、俺も今でも違和感ありますし」
『ガチャガチャ』
その時、アーチボルトの耳にこちはに近づいてくる騎士の鎧の擦れる音が聞こえてきた。
「ん、何か来る……エリック、何者かがここへ近づいているぞ」
「え、ルースとかラナトスじゃないんですか?」
「いや違う、この音はーー」
「やぁどうも、ベルーナの方々!」
現れたのは白い鎧を身に纏ったリップティッチの騎士達だった。
「誰ですか貴方達は?」
「我々はこの国の騎士です、そして今は王の命令によりここへ来ております」
「王の命令だと?」
「はいそうです、昨晩攫われた我が国の姫システィーナ・ティッチの捜索と奪還のため我らはここに参った次第です」
リップティッチの騎士の1人は、アーチボルトから訊ねられそう答えた。
システィーナ奪還部隊、今朝方発覚したシスティーナ誘拐事件を受け急遽作られた部隊である。
そしてその隊長はーー。
「ちょっといいかな」
「あ、隊長!」
10名ほどいる騎士の後ろから現れたのは、一際豪華な鎧に身を包んだ若い騎士だった。
「初めまして、えーっとベルーナの領主は……」
若い騎士はそう言ってエリックの方を見た。
「俺です、俺がベルーナの領主のエリックです」
「おお!君が噂のベルーナの若領主か」
「噂の?」
「ああ、ベルーナはアルトで今最も勢いのある領地と聞いているからね」
「そんな噂があるんですね……」
エリックは複雑な顔を浮かべそう話す。
「はは、悪い噂じゃないんだしいいじゃないか!」
「まぁそうですね、ていうか貴方は誰なんですか?」
「僕はマイルズ・ティッチ、システィーナの兄でこの国の第一王太子さ!」
『ニコッ』
そう名乗るとマイルズは綺麗な歯を見せて笑った。
「……君が噂の"乱剣技"なのか」
マイルズの名を聞いて驚いたようにそう呟くアーチボルト。
「ほぉ、そっちの眼鏡の方は僕の事を知っているのですね、さすがは"雷追"のアーチボルトさん」
「バレてましたか」
「そりゃあもちろん」
マイルズはそう言うと、また綺麗な歯を見せて笑うのだった。




