98話 翌朝
ーー翌日、リーヤとアンドリューにて
『ピピ』
アンドリューの近くの木で寝てしまっていたリーヤの頬を1匹の小さな鳥が頭でなぞった。
「あ、もう朝ですか」
『パサパサ』
リーヤが起きるのを確認すると小さな鳥は天高く飛び立ってしまった。
「行ってしまいましたか、さてゲナトの者はいますかね」
そう言ってリーヤは氷漬けのアンドリューの元へと向かう。
「う、嘘でしょ」
だがそこには昨晩までいたはずのアンドリューの姿がなかった。
「まずい、アーチボルトさんやエリック様に挽回すると誓ったのに……こうなったら私一人でゲナトの者を追うしか無い」
そう言ってリーヤはアンドリューの後を追いかけるべく、ドラゴンモードとなった。
そしてこのリーヤの単独での追跡が後にエリック達を困らせる事となる。
『挽回するんだ、エリック様のためにも……あと、アーチボルトさんのためにも』
『バシュッ』
そうしてリーヤは天高く飛び上がるのだった。
ーーリップティッチ国境付近にて
「ん、ここは……」
「やっとお目覚めかよ半獣野郎」
「ちっ、お前かよ」
アンドリューは目が覚めると、空飛ぶグリフ・ワイズによりゲナト法国へと運ばれていた。
「失礼な奴だな、助けてやったてのによぉ」
「お前の助けは求めてない」
「おいおい兄弟だろ?俺たち」
「違う、少なくとも俺はお前を弟をとは思っていない」
「可愛くねぇ兄貴だな」
アンドリューは、グリフが天使に支配された事をもちろん知っている。
パズールからその事実を聞かされたとき、アンドリューは本来それは自分の仕事だったと嘆いていた。
しかし今はグリフ元に戻すため天使の適合者を連れて帰る事に邁進しており、そうしていつの日か元戻った弟に謝りたいとアンドリューは思っていた。
「……おい天使、システィーナはちゃんと連れ帰ったんだろうな」
「当たり前だろ、お前ら兄弟がこいつを返してほしいと思ってるように、俺もこの身体からは早く出たいと思っているからな」
天使にとってグリフの身体は居心地の良いところではない。
適合者の血を継いでいるとはいえど、グリフの身体は完全な適合者とは程遠く、いつ拒絶反応によりグリフの肉体が朽ちてもおかしくない状況からである。
そんな身体に長く居座るつもりはないため、天使もこのシスティーナ誘拐作戦には協力的なのだ。
「ならいいんだ」
天使からシスティーナの確保が上手くいったことを知らされるとアンドリューは静かにそう呟く。
「とりあえずだ兄貴よ、このままゲナトへ行かせてもらうぜ」
「ああ頼む」
そうしてグリフはアンドリューを抱えてゲナト法国へと帰還するのだった。
ーーエリック陣営にて
『パシャ』
「……冷え」
エリックは宿にある井戸水で顔を洗っていた。
『ファサッ』
そのとき、エリックの元に一枚の布が投げられた。
「なんだこれ」
「おはようお父さん」
「ルースか」
布が投げられた方をみると、そこには井戸に腰掛けるルースがいた。
「元気がないなお父さんよ」
「そりゃあ昨日あんな話を聞けばこうなるだろ」
「はは、なんだゲナトの三兄弟に同情でもしてるのか?」
「同情って、そんなんじゃないよ、でもなんか色々と考えるんだよ」
「難儀じゃのぉ」
エリックのやりきれない表情を見てそう呟くルース。
「ほんと……難儀だよ」
そう言って天を仰ぐエリック。
その時、大きな雷鳴と共にとある人物が現れる。
『バチィン』
「エリック……大変な事になった」
「サンダースさん、大変なことって?」
現れたのはリーヤとアンドリューの様子を見に行っていたアーチボルトであった。
「リーヤさんがいないんだ、それとアンドリューも」
「なっ、なんだよそれー!!」




