89話 雷追と若領主
「大丈夫かエリック」
「ええ、大丈夫です」
まさかアーチボルトに助けられる日が来るとはな。
でも不思議とこの人なら信頼できる。
「見たところ、あいつはゲナトの獣人のようだね」
「ええそうです、サンダースさんは獣人とやり合った事はあるのですか?」
「いやないな、でも魔力が少ない事や魔法が使えない事は知っているよ」
流石はアーチボルト、ゲナトの獣人の事も色々と詳しい。
それに引き換え俺たちベルーナはゲナトについてほぼ知識ゼロ……。
いや、ちょっと待てよ、ラナトスが何も知らない訳はないよな。
……戻ったら色々と聞いてみよう。
「なら話は早いです、奴の名前はアンドリュー・ワイズ、ケルベロスの獣人です、異常なタフさがあります」
「アンドリュー・ワイズだと?」
アンドリューの名を聞くとアーチボルトの顔つきが険しくなる。
アーチボルトがこんな顔するなんて、ひょっとしてアンドリューって結構強いのか?
「知ってるんですか?」
「あ、ああ少しな」
アーチボルトの様子が明らかにおかしい。
まるで死人でも見たかのような顔をしている……。
「大丈夫ですか?」
「……なぁエリックよ、彼は本当にアンドリュー・ワイズなのか?」
「え、ええ、本物だと思いますよ」
「そうか、なら仕方ないな」
俺がそう答えるとアーチボルトは、何か覚悟を決めたような真剣な顔つきになりそう答える。
何があったかは知らないが、吹っ切れたみたいだな。
とりあえず今は、アンドリューに集中しないと、でも気になるし終わった後にアーチボルトに色々聞いてみよう。
「サンダースさん、俺に策があります時間を稼いで貰えませんか?」
「ああわかった、お前の策なら信用できる」
『バチチチ』
そう言うとアーチボルトは、左腕の小手に強力な電気を流し始める。
『もう終わったのか、作戦会議は?』
「ああ終わった、ここからはひたすらに私がお前を殴るのみだ」
『うっわ、怖えなお前』
「おいアンドリュー・ワイズよ、最初で最後の質問だお前俺のこと覚えているか?」
アーチボルトはいつもよりも低い声でそう訊ねる。
覚えてるかってなんだ?
アンドリューとアーチボルトは知り合いなのか?
『いやしらねぇなぁ、お前のことなんざ』
「そうか、ならば仕方ない次はしっかりと殺してやろう」
『バチチチ』
そう話すとアーチボルトは左腕の電力をさらに強めていく。
何があったかはこの際どうでも良い、今俺のすべき事は魔力を貯める事。
アーチボルト、少しの間任せたぞ。
『黒狼弾!』
アンドリューはアーチボルトへ先ほどの黒弾を1つ放った。
「ふんっ」
『バチィン』
アーチボルトは雷を纏わせた小手で、黒弾を勢いよく弾いた。
『やるなぁ、レヴァンスの』
「本気でこいアンドリュー、そうしないと話にならんぞ」
『言うじゃねぇか、なら今度は三重でいってやるよ』
『ギュオオオ』
アンドリューはそう言って3つ首全てで黒弾を生成し始める。
「サンダースさん!!」
「その技はーー」
『バチィン』
『ごはっ』
アーチボルトは一瞬姿を消し、気がつくとアンドリューの腹に正拳突きをかましていた。
「さっき見た、やらせるわけないだろ」
『スチャッ』
そう言ってアーチボルトは眼鏡をクイっと押し上げる。
そしてそのタイミングで俺の魔力が溜まり切る。
「サンダースさん!!」
「……さらばだ、アンドリュー」
『バシュッ』
そう言ってアーチボルトは、雷速で何処かへ移動した。
よしこれでアンドリューへの道ができたぞ。
「特別認定魔法発動"氷輪絶花"」




