87話 雷訪者の影
ーーエリックvsアンドリューにて
『パキキキ』
『またそれかよ』
アンドリューがそう言うとエリックの氷人形が崩れ去った。
「あ、あぶねぇ」
そう言ってエリックは横の茂みから顔を出した。
『上手く避けたなエリックよ、でも次は当てるからな』
「はは、次も防ぐよ」
擬似魔道具の生成速度を利用した氷人形の変わり身術は効率よく相手の攻撃を凌ぐ事ができる。
そのためアンドリューの攻撃を凌ぐだけなら、エリックはいくらでもできる。
しかしここで4年前のアーチボルトの言葉がエリックの頭をよぎった。
"これが貴方の弱点、火力不足"
「わかってるよ、そのためにこの4年間色々試したんだ」
『なんだどうしたエリックよ、独り言か?』
「まぁな」
『ギュオオ』
そうしてエリックは右手に魔力を集め始める。
『……その感じ、何かヤバいもんでも撃つつもりだな』
「どうだろうね?」
『野生の勘が言ってんだよ、その技は危険だってな』
エリックの持つ擬似魔道具には、生成魔法以外にももう一つ能力がある。
それは放つ魔法の威力の拡張。
ただそれは通常魔法までなら可能なのだが、特別認定魔法クラスではまだこの擬似魔道具では耐えられない。
しかし火力不足の否めないエリックがケルベロスを倒すにはこれしか無いのだ。
「良い勘してるね、特別認定魔法発動"迅雷風烈"」
『バチチチ』
特別認定魔法"迅雷風烈"高威力の雷を右腕に纏い相手へぶつける単純な魔法。
エリックのオリジナルにして、モデルはアーチボルトである。
『凄まじい雷だな』
「まぁ現時点で俺の最高威力の技だからね」
『そうかよ』
『ギュオオ』
そう言うとアンドリューは、両脇の首で二つの黒狼弾を準備し始める。
「さっきのやつを2発同時ってわけか」
『生半可な事はしねぇ、木っ端微塵にしてやるよエリック』
「それはこっちもそのつもりだから、お互い様だろ」
『バチチチ』
エリックがそう言うと右手の雷の威力は増していった。
『いくぞエリック!」
「来いアンドリュー!!」
『ズドォン』
エリックめがけて放たれた黒狼弾とそれを相殺するエリックの特別認定魔法により、周囲は大きな爆発に飲まれていくのだった。
ーーエリック達のいる街の他の宿にて
『ゴゴゴ』
「う、うーん、この揺れなぁに」
深夜1時、エリックとアンドリューの衝突により起きた地震で寝ていたリオール・レヴァンスが目を覚ます。
「お嬢様、少し宜しいでしょうか?」
「アーチボルト!い、いきなり現れないでくれるかしら」
「申し訳ございません」
アーチボルトはそう言うとペコっと頭を下げる。
「それで一体何用なのかしら?」
「この揺れ何か嫌な予感がします、少し見回りに行ってきても良いでしょうか?」
「ええ構いませんよ」
リオールは少し不貞腐れた様子でそう話す。
「ありがとうございます、見張りにセッタを置いていきますので」
「どもども~」
アーチボルトに名を呼ばれたセッタという女性は、軽めの挨拶をするとリオールへ小さく手を振った。
「気をつけてねアーチボルト」
「はい、すぐ戻ります」
『バシュッ』
そうしてアーチボルトは、地震の起きている所、即ちエリックの元へと向かうのだった。




