85話 ラナトスの剣技
ーー監獄前にて
『うぉりゃああ』
『ギャリンッ』
ミノタウロスとなったパズールの大斧をラナトスは細い刀で受け止めた。
『ギチチチチ』
『う、動かねぇ』
「研鑽がまだまだ足りてないね」
そう呟くラナトスには余裕すら感じられる。
ラナトス・リンガード、元アルト王国、王直下近衛騎士団団長。
そして現在は、ベルーナ領の騎士。
彼の経歴は謎が多く、そもそもリンガード家はベルーナの騎士家系ではない。
諸事情があり今はベルーナにいるが、リンガード家は、元々王家の騎士家系。
立場的には、レヴァンスのアーチボルトに近いのだ。
しかし今のベルーナには、リンガード家に代わる王家の騎士がいるため、ラナトス達は事実上の追放処分を受けている。
『く、くそぉ、でもこれならどうだ!』
「なんだ?」
『錬成魔法発動』
『ギュオッ』
パズールは大斧を2つの斧へと錬成し直した。
「便利な魔法だね」
『一撃でダメなら手数で押し切るまでよ』
「なるほどね、だから斧2本ってわけか」
神話種・ミノタウロス。
獣人化すると4メートルの体躯に加えて、錬成魔法を操る事ができようになり、そして魔力量も5000に跳ね上がる。
そんなミノタウロスになれるパズールはゲナトの4使徒と呼ばれる最高戦力の1人でもある。
『これでお前を切り裂いてやるよ』
「ふふ、おもしろい発想だ相手してあげるよ」
そう言ってラナトスは愛刀を構える。
『舐めやがって、獣人流魔剣技、二連斬!!』
パズールは左右の斧を同時に振り下ろした。
「夜兎流魔剣技、夜逃げ封じ」
『スパンッ』
『なっ、嘘だろ』
ラナトスは二つの斧を真っ二つに切り裂いた。
「耐久性が脆すぎるね」
『て、鉄だぞこれ』
「はは、本当に?」
『舐めがって』
パズールはそう言うと、監獄の前にある銅像の方へと向かう。
『ピタッ』
『錬成魔法発動』
そう言うとパズールはニヤリと笑った。
「そんな大きなものどうするつもりだい?」
『こうするんだよ!!』
『グニャグニャ』
そうして銅像はあっという間に巨大な大剣となった。
『ガコンッ』
『け、結構重いな』
それを持ち上げたパズールはそう呟きながら、大剣を構える。
『さぁラナトス、仕切り直しといこうか』
「随分と重たそうだけど、大丈夫かい?」
『余裕だクソ野郎』
パズールはラナトスのその問いに語気を強めてそう返す。
「そうかい、なら俺も少し本気を出そうか」
『ズズッ』
そう言ってラナトスは力属性の魔力を愛刀に纏わせる。
『その感じ、シャークと同じ力属性か?』
「そうだよ、でも俺の力属性は少し違うよ」
『ズオッ』
そうしてラナトスは、そのまま刀を紫色のオーラで覆いはじめる。
『なんだよその不気味なオーラは』
「さぁ、なんだろうね」
そう言ってラナトスは不敵に笑うのだった。




