84話 疑惑の騎士
ーー街の監獄にて
システィーナの攫われた場所である監獄にラナトスは到着した。
「やぁ、リップティッチの騎士よ」
「これは、ベルーナの騎士様ではないですか」
監獄の前に着くとシャークの身柄をリップティッチ側に引き渡す際にいた、システィーナの騎士団の者がいた。
「システィーナ様の話を聞いて心配になってさ」
「ありがとうございます、攫われるのを止める事ができず情けない限りです、ほんとあの狼男には困った者ですよ」
システィーナの部下は困った顔を浮かべてそう話す。
「監獄の番は君がしていたのかい?」
「はい、私と他の者達5人でしてました、あとはシスティーナ様が奴……狼男から話を聞くために奴の牢屋の前に居たくらいです」
「なるほどね」
ラナトスはそう言うと、その騎士の顔をじっと見つめた。
「な、なんです?恥ずかしい」
騎士は顔を少し赤らめて目を逸らす。
「君さ何か付けてる?」
「え?」
「いや匂いがしないんだよ」
ラヤトスの不意のその質問。
騎士とラナトスの間に緊張が走る。
「あっははは、いやぁ最近お風呂に入れてなくて、消臭玉を使ったのでそれかもです」
「ふーん消臭玉ね、でもなんで消臭玉なんだい?」
「え?」
「お風呂に入ってないなら、他にも洗浄魔法や浄化魔法とかもあるはず、むしろ入浴できていないならその方が自然だよ」
ラナトスがそう言うと騎士の表情に綻びが生じる。
「俺、浄化魔法とか苦手なんですよね」
「違うだろ、使えんないんだろ」
「……ど、どう言う意味ですか?」
「お前らゲナトの獣人は、自身の魔力がほぼ無い、それこそ日常生活で使う魔法ですらその使用を控えるほどにね」
「お前、なんでそんなに詳しいんだよ」
そう話す騎士に先ほどまでの柔らかい表情はなかった。
「一度だけ部下をゲナトに放っていてね、それでこの事を知ったんだ、ゲナトには獣人がいて奴らは魔法を使えないってね」
「なぜ俺を疑った?」
「あっははは、そんなの簡単さ……お前獣臭いんだよ」
『ビキビキ』
ラナトスのその言葉を聞いた騎士の体はみるみる巨大化していった。
『図に乗るなよ、このベルーナの腐れ騎士が!』
そうは話す騎士の体は、あっという間に4メートルほどの巨大なミノタウロスへと変貌してしまう。
彼の名はパズール・ワイズ、アンドリューの弟である。
「腐れ騎士か、随分ひどいねその言い方」
『ギラッ』
そう言うとラナトスも腰の愛刀を引き抜いた。
『ここでの仕事はまだあったのに、お前のせいで台無しだよ、ラナトス!』
「それは良かった、良ければどんな仕事をする予定だったか教えてくれないかな?」
『教えるわけねぇだろ、お前はこれから死ぬんだよ』
『バギィン』
そう言ってパズールは、監獄の門にあった銅像の持っていた槍を奪い取った。
「へぇ、その槍で俺とやり合うつもりかい?」
『槍だと?笑わせんなよ、錬成魔法発動』
パズールは、ミノタウロスの魔力を使い錬成魔法で槍を大斧へと得物を変えてしまう。
「凄い魔法だ、ミノタウロスの力は興味深いね」
『その口黙らせてやるよ、ラナトス!』




