82話 魔力量1万
狼男、それはゲナトで長年行われてきた獣人研究が作りあげた傑作である。
異常なタフさに並外れた嗅覚、そして常人離れした腕力、その全てが普通の人間を凌駕する……はずなのだが。
『ギチチチ』
「クソォ、なんでだ!なんでお前なんかの力に押されるんだよ!」
氷剣2本に自身の大剣を止められたアンドリューは、悔しそうにそう叫ぶ。
「こんなもんかよ狼男の力ってのは」
「うるせぇ!」
『パキィン』
その時、アンドリューの一撃が氷剣砕く。
「あ、砕けた」
『ズバァン』
そうしてそのまま大剣はエリックを切り裂いた。
「うっしゃあああ、完全勝利だぜ」
「そうか、ちなみに誰に勝ったんだ?」
「え、ああ、それはなエリック、俺はお前に……は!?なんでお前生きてんだよ」
そう話すアンドリューの背後にエリックは立っていた。
「ああ、さっきお前が切ったのはアレだよ」
「あれ?」
エリックがそう言って指差す先には、崩れた氷の人形があった。
「名付けて、氷人形変わり身の術ってところかな?」
「な、なんだとー!!」
「お前が俺を切り裂く寸前にやったから、気が付かなかったろ」
エリックは笑みを浮かべてそう話す。
まだ試作品だがエリックの付けている擬似魔道具の指輪は、あらゆるものを瞬時に生成可能。
そうこの魔道具の真価はその生成速度にあるのだ。
「ああ、気が付かなかったよ、そして俺が甘かった」
『ザワザワ』
そう話すアンドリューの体を漆黒の体毛が覆い始める。
「おいおいなんだよ、それ」
「ここからはさらに本気で行くぞ、エリック」
そう言うとアンドリューは、真っ黒い大きな狼へと変貌していくのだった。
「これは一体どういうことなの」
凍おりついた馬車の裏に周り、荷台の中を覗き込んだリーヤはそう呟く。
荷馬車の中はもぬけの殻だった。
「中の人は一体どこにいったの?」
ーー森の中にて
「へへ、上手く逃げられたみたいだぜ」
ゴリラの獣人ラングレーは、ゴリラモードとなりシスティーナと凍ったシャークを担ぎ森の中を走っていた。
「間一髪だったが、この女さえいればこっちの勝ちだぜ」
ラングレーはそう呟くとシスティーナの方を見た。
「まさかこの嬢ちゃんが、我々ゲナトの悲願である"天使の適合者"になり得る人材とはな」
天使、それはこの世界における最上位の存在であり神話の中の存在。
そしてゲナトの建国当初からの目標は天使の確保である。
「ま、確かめようにもここだとよくわからんし、早く本国に連れて行かないとな」
『ヒュオ』
その時、ラングレーの頭上に何かが降りてきた。
「見つけましたよ、ゲナトの人」
「だ、誰だよお前は!」
「私の名前はリーヤ・ドラクル、ちなみにリーヤはラナトス様から、そしてドラクルはエリック様から頂いた名でございます」
そう言ってリーヤは小さくお辞儀をするのだった。




