80話 アイスバースト
ーー町外れにて
「ワォーン!!」
リーヤの遠吠えに反応したアンドリューは、馬車の中で遠吠えをしてしまう。
「ちょっ、何やってんすかボス」
「す、すまんな、本能には抗えなくて」
アンドリューはそう言ってシュンとしてしまった。
「もしかして今のでこの場所がバレるとか?」
「いやそれは流石にないだろ、まず第一に追っ手がいるとも限らんし」
シャークのその問いにラングレーがそう答える。
「待てお前ら、どうやら追っ手が近づいてるようだぞ」
狼男の鼻で近づくエリック達の匂いを捉えたアンドリューは、2人にそう告げる。
「ま、まずいですね」
「どど、どうするんですかボス!」
「奴らの狙いはそのお姫様だ、俺が時間を稼ぐからお前ら何としてもこの馬車を死守しろ」
アンドリューはそう言うと大剣に手を伸ばした。
「りょ、了解です!」
ラングレーはそう言うと馬車のスピードを上げた。
『シャッ』
「さぁ来るなら来いよ、ベルーナの若領主!!」
大剣を引き抜きアンドリューは、空に向かってそう叫ぶ。
ーー上空にて
『来るなら……ベルーナの……』
馬車の上空にて、リーヤとその背中に乗るエリックの耳にアンドリューの叫び声が断片的に聞こえた。
『エリック様、下で何やら叫んでる奴がいますよ』
馬車の上を飛ぶリーヤはエリックにそう話す。
「この声の感じ……絶対アイツだよな」
『アイツとは?』
「アンドリュー・ワイズだよ」
『なんと!この大声の主がアンドリューなのですね、しかし遠吠えだけでなくこんな大声まで出すとは、奴は我々に居場所を教えたいのでしょうか?』
リーヤは戸惑いながらそう言った。
「いやおそらく、気がついていないと思うんだよね」
『なるほど……それならばエリック様、このままゆっくりと降下してみますか?』
「いや、空中からこのまま攻撃してみよう」
『パキキキ』
そう言ってエリックは右手に冷気を溜め始める。
『エリック様!それでは奴等と一緒にいるティッチ家のお姫様に攻撃が当たってしまうのでは?』
「大丈夫策があるんだ、リーヤはこのまま奴らを追い越して先回りしたところに降りてくれ」
『わかりました!』
そしてリーヤは馬車を追い越し、100メートルほど先回りして地面に着地した。
『ドサッ』
『ここでいいですか、エリック様?』
リーヤはエリックにそう確認した。
「ああ、問題ない」
『パキキキ』
そう話すエリックの右手には凝縮された冷気の塊があった。
その時、前方に馬車が現れる。
『来ましたエリック様!前方、1時の方向です!』
リーヤはドラゴンの目により夜目が効いており、誰もよりも早く馬車を発見しエリックに指示を送った。
「了解!」
『バッ』
そう言ってエリックは、右手を馬車の方へと向けた。
「いくぞ、魔力操作【解放・アイスバースト】」
『ヒュオオオ』
エリックがそう言うと、右手から高出力の冷気の塊が放出され、一直線に馬車へと向かった。
『パキキン』
「なんだ?」
一瞬にして馬ごと凍りつく馬車、そして中にいるアンドリューは動かなくなった馬車に異変を感じて、前方に座り運転しているシャークの方を見た。
『パキッ』
「う、嘘だろ」
小窓から前の様子を見ると、そこには固まったまま動かないシャークと、さらにその先にエリックの姿があった。
「さぁ降りてこいよアンドリュー、システィーナさんを返してもらうぞ!」
エリックは凍らせた馬車に声を張り上げて、そう話すのであった。




