79話 リーヤの力
ーー最初の街の外れにて
『ドサッ』
「ふぅ、なんとか作戦成功ですねボス」
システィーナを荷馬車に乗せたラングレーは、アンドリューにそう話しかけた。
「ああ何とか成功だ、システィーナ・ティッチ、この国の国王ラウール・ティッチの一人娘にして次の王候補筆頭、そんな奴を欲しがらない理由ってまず無いよな」
アンドリューはニヤッと笑いそう言った。
「まったくですぜ」
「お、お前もそう思うかシャーク」
「へへ、全くの同意見ですよ」
短剣を持つゲナトの刺客シャーク、はじめにラナトスやシスティーナとやり合った者である。
「だよなぁ、よしお前ら目的は達成したし手早く国へと帰るぞ」
『了解!』
システィーナを乗せた馬車は、そうして動き始める。
「あ、アイツはどうすんですか」
「アイツとは誰だ?」
「あの目障りなベルーナの若領主ですよ」
「ああ、アイツか」
アンドリューはそう言うと空を見上げた。
「……ボス?」
「あいつはいいやどうでも」
「え、何すかその適当な判断は!」
「俺の勘が言ってんだよ、アイツとはまた何度も会うってさ」
アンドリューは難しい顔をしてそう呟くのだった。
ーー街の上空にて
「ちっ、全然どこにいるかわからないな」
竜に戻ったリーヤの背中に乗ったエリックは、そう言いつつも街を見下ろしシスティーナを探していた。
『エリック様、見つからないのですか?』
「ああ、手掛かりもないし正直、手詰まりだよ」
両手をあげてエリックはそう話す。
『まぁまぁエリック様、そう言わずに』
「何か目印とかがあればいいんだけど」
『目印ですか……あ、もしかしたらこれなら効くかも』
リーヤは何かに閃きそう呟く。
「何だリーヤ?」
『エリック様、アンドリュー・ワイズは狼男だったのですよね』
「ああそうだけど」
『それなら、遠吠えはどうでしょう?』
「遠吠え?」
『はい、狼男は単独での行動を好みますが縄張り意識がとても高いです、それを利用します』
そう話すリーヤに、エリックは怪訝そうな顔をする。
「しかしリーヤよ、俺は遠吠えなんてできないぞ」
『誰もエリック様にやれなんて言ってませんよ、私がやるんです』
「え?」
リーヤは笑ってそう言った。
『私にはあらゆる動物の身体的特徴を模倣できる特異体質があります、それを使って狼の遠吠えをするのです』
「なるほど!てかそんな能力あったんだ」
『はい!守護竜化した時に獲得しました』
「そ、そうなんだ」
そう話すとリーヤはさっそく声帯だけを狼のものへと変換した。
『ワォーン』
竜の身体から狼の声が出るという違和感しかない絵面だが、リーヤの声は町中に谺した。
「……」
『……』
「どうだリーヤよ、相手の声は聞こえるか?」
『いいえエリック様、狼の声はどこにもーー』
『ワォーン!!』
その時、街外れのほうから狼の声がした。
「あそこか!」
アンドリューの居場所がわかったエリック達は急いでそこへと向かう。
「でかしたぞリーヤ!」
『ありがとうございますエリック様!」




