72話 ルースの行方
ーー街外れの酒場にて
『バタッ』
フードを被った男が荒々しく酒場の扉を開けて入店した。
「いらっしゃい」
「2人だ、酒と水を頼む」
「あいよ」
男は席に着く前にそう注文する。
『ガタッ』
「お前はあっちの席に座れ」
「うん」
ルースは男に促され、対面の椅子に座った。
「お前、やけに大人しいな」
「ううん、怖いよ」
ルースはそう真顔で訴える。
「いや怖がってる奴はそんな真顔で怖いって言わないんだわ」
「そうなのか?」
「そうだよ、あとな攫った犯人にそんな風に聞けるのもおかしいぞ」
フードの男はそう言って怪しんだ目でルースを見た。
「ではどうすればいいのかな?」
「おいおい、ベルーナの坊ちゃんよぉ、そんな事を犯人の俺に聞くなよな……」
フードの男はそう言って苦い顔をした。
「へい、酒と水ね!」
『ドタンッ』
そのタイミングで店主が酒と水を運んでくるのだった。
ーー宿屋にて
「……はぁ、どうしよう」
自室に戻ったエリックは椅子に腰を下ろすと、額を抑え深いため息をついた。
「よりによって攫われたのがルース様とはね」
ラナトスは苦い顔をしてそう話す。
現在、この部屋にはラナトスとエリックの2人しかおらず、エリーは自分の部屋、そしてゲナトの刺客は白の騎士に連行され街の牢屋に入れられている。
「まったくだよ、まぁでも魔力量8000あるし、中身ご先祖だし多分大丈夫だろうけどさ」
「そうだね、エリック様の話が本当ならルース様は現状で俺よりも強い可能性があるからね」
ラナトスは腕組みをしてそう答える。
「……魔力量8000の元ベルーナ領領主で、おそらくだけど氷の属性体質持ちか、うん、間違いなく強いな、ラナトスより強いかはわからないけど」
ベルーナ家の血を継ぐものには、代々氷の属性体質が宿る。
そしてエリックは気がついていないが、ルーナとルースはゼネナル家の血も継いでいるため、そこに水の属性体質も含まれる可能性もあるのだ。
ちなみに、セントレアは火でゼネラルは水、そしてガネーシャの家にはランダムで様々な属性体質が宿る。
「でもさ、強いなら心配はいらないんじゃないかな?」
ラナトスはそうエリックに訊ねる。
「そうなんだけど、一応息子だから心配なんだよ……中身はあれだけど、よし決めた、やっぱり探しに行こう」
そう言ってエリックは立ち上がった。
「わかった、それでどうするまだ襲撃があるかもだし俺はここに残ろうか?」
「ああ頼むよラナトス、ルースは俺が探すよ」
「うん、わかった気をつけてねエリック様」
「ありがとう、それじゃあ行ってくる」
『バタン』
エリックはラナトスにそう言うと部屋からでて、ルースを探しに行くのだった。
ーー酒場にて
『バタン』
ルースとフードの男が酒場に入ってからほどなくすると、大きな大剣を背負った大男が酒場へと入ってきた。
「ボス!」
フードの男は席から立ち上がり、大男をそう呼んだ。
「おうよ、待たせたなエリオット」
大男はそう言ってフードの男の方へと歩いていった。
大剣を持つ彼の名は、アンドリュー・ワイズ。
ゲナト法国、法王サイモン・ワイズの息子である。
「……こいつ、中々強いな」
ルースは、アンドリューを見て静かにそう呟くのだった。




