56話 守るべきもの
ーーアーチボルト&エリック&ガードナー
「まず一つ目だけど、このままレヴァンス軍はガネーシャから無条件で撤退する事」
「わかりました」
俺の提案に間を置かず、アーチボルトはそう答えた。
おいおい無条件撤退だぞ、それでもいいのかよ。
「素直なのはいい事だな、次に二つ目だけど、アーチボルト、お前はもう今回の戦でアルト陣営に攻撃しちゃダメね」
「わかりました」
アーチボルトは眉ひとつ動かす事なく、またしても同意した。
こいつもしかして、今なら何でも言うことを聞くんじゃなかろうな。
よーし、ここは更なる無理難題をーー。
「エリック、こちらからも一つ提案を良いですか?」
「え、お、おういいぞ」
アーチボルトからの突然の提案。
なんだ、何が来るんだ?
「今回の戦いなのですが、我々レヴァンスはもう撤退します、ですので撤退する我が軍をどうか見逃して欲しいのです」
アーチボルトは真剣にそう頼んできた。
そこまでの事をお願いするなんて、一体どうして。
「わかった、その提案を受け入れよう、それで問題ないねガードナーさん?」
俺はこの交渉の見届け人であるガードナーさんにそう確認する。
「うんいいと思うよ、おいアーチボルトよ、嘘はつくなよ」
ガードナーさんは、そうアーチボルトに念押しした。
「ああ誓おう、"騎士"に二言は無い」
アーチボルトはそう答える。
騎士か、もしかしてアーチボルトもどこかの家の騎士家系だったりするのかなぁ。
「わかった、信じようその言葉を」
ガードナーさんはアーチボルトからそう返答を受け取ると、乗ってきた馬に跨った。
「じゃあエリック君、私はこの交渉の内容をロックウェル伝えてくるね」
「はい、お願いします」
俺がそう言うと、ガードナーさんは馬に乗ってロックウェルさんのところへと行ってしまった。
「……エリック、一つ頼み事をいいですか?」
アーチボルトは、俺にそう訊いてきた。
「なんだ?」
「この氷を解いてくれませんか?」
「え、いいけど、あんた自分でなんとかできるって言わなかったっけ?」
「……嘘ですよ、私には残りのこの氷を砕く事はできません、さっきのはかなり全力です、そもそも戦術兵器の特別認定魔法を個人に撃つのは、反則ですよ」
アーチボルトはそう言って遠くを見つめた。
この人でも嘘はつくんだな、あっ、もしかしてさっきの提案も踏み倒すつもりじゃ……いやそれは無いな。
短い時間だったが、アーチボルトと戦って、彼の真面目さが嫌というほど感じたし。
「あんたでも嘘つくんだな」
「守りたいものがありますからね、そのために必死なだけですよ」
アーチボルトは、俺に視線を合わせる事なく、どこか遠くを見ながらそう答えた。
『シュオッ』
俺はアーチボルトの氷を解いてやった。
「ほらよ」
「ありがとうございます、解いてくれた礼というわけではないですがエリック、魔道鉄の事についてもう少し教えておきましょう」




