10話 出発
翌朝、俺とエリー、そしてじーやの3人はベルーナ領に戻るため、ルージュおじさんの屋敷を朝早くに出た。
「おい、エリック!」
「父さん!」
屋敷を出て門の前まで行くと、父であるセドリック・ベルーナがいた。
「はは、すまんな領主なんて大役を押し付けてしまって」
「本当だよ!いきなり領主って言われてもめっちゃ困るし!」
「すまん、すまん……エリックよそれとエリーちゃん、君達はまだ若い、その若い目で領民を見てその耳で声を聞き、その足で民を導いて行くんだ、我が領民を頼むよ」
そう言って父さんは頭を下げた。
「お義父さん頭を上げてください、私達2人ともまだ成人になったばかりですけど、精一杯領民のため頑張りますので、信じててください」
「エリーちゃん!」
父さんはそう言うと軽く泣いた。
しっかしエリーのやつ、俺の奥さんになった途端、子供っぽさが抜けたな。
何というか大人になったというか……て、ていうかエリーと結婚したってことは、そういう事もこれからするって事だよな。
おいおい……急に恥ずかしくなってきた。
「よ、よしそろそろ行こうか」
「ええ行きましょうか」
『ギュ』
そう言ってエリーは俺の腕に抱きついてきた。
ちょ、ちょっとエリーさん!?
「それじゃあお義父さま、私達行きますね!」
そう言ってエリーは俺を馬車へと押し込んだ。
か、勝手すぎる……まぁでも悪い気はしないな。
「父さん!またね!」
「あぁまたなエリック!エリーちゃん!」
そうして馬車はベルーナへ向け走り出す。
ーー10分後
「エリック様!すみません前方に問題ありです」
「どうしたじーや?」
馬車を走らせてそんな経っていないのに、問題ってどうしたんだろう。
俺は前方のカーテンを開けた。
「げっ、何だありゃ」
前方500メートル先に、謎の黒服集団がいた。
「と、止めますかエリック様?」
「いやそのままでいいよ」
「で、ですがエリック様」
「大丈夫、俺がなんとかするから」
そう言って俺は後方の席から前方のじーやのいる席に移った。
「ちょ、エリック何してるの?」
「エリーか!危ないかもしれないから、この馬車に保護魔法だけ頼むよ」
「い、良いけど何するつもりなの?」
「何ってえっと……あいつらを蹴散らす、かな?」
そうして馬車は黒服集団から100メートル地点を過ぎていく。
「おい!そこのバカ黒服共、一度しか言わないぞ、そこを退け、さもなければ吹き飛ばすからな!」
「ベルーナの底辺共!我らはセントレアが所属の魔法使い、ここを通りたければ力づくで来い!」
「なっ、セントレアだと!?バナーの母親の仕業だな」
前方にいる魔法使いはセントレアの手先である事が判明した。
争う気はなかったが、向こうがその気ならやってやる。
「ベルーナの新しき若領主よ、ここで死んでもらう、特別認定魔法発動!黒炎烈火」
先頭の黒服魔法使いがそう言うと、後ろに控える20人ほどの魔法使いが両手を天にかざすと、大きな黒い炎が現れこちらへと向かってきた。
「エリー頼むぞ!」
「わかったわ、一級保護魔法発動!」
『キュワーン』
エリーの保護魔法により馬車の耐久度が馬ごと跳ね上がる。
よしこれで準備はできたな、向こうが特別認定魔法で来るならこっちもそれで返すしかない。
ただ俺の場合、魔力量が多過ぎて出力があいつら黒服集団の比ではないがな。
「特別認定魔法発動、女神の真水」
『ギュオ』
俺は右手に強力な魔力が込められた水を集めた。
「いくぞ、喰らえ真水!」
『ズドォォン』
俺の右手から放たれた真水は、物凄い水圧で相手の黒炎を掻き消し、黒服集団に向かっていく。
「ま、まずい!!」
『ぐわぁぁ』
そうして真水は黒服集団を蹴散らした。
「ふぅ、どうにかなったな」
「さすがねエリック!」
馬車の窓から顔だけ出してエリーはそう言った。
なんとかなったけど、セントレアは要警戒だな。




