↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ストーリーエンダー  作者: Manpuku
第二章 激突!!! 

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

15/16

第15話 牛久大仏は額で物語る!

「田中さん。私はこの物語の敵役なんですよ。それは、物語に刻まれた者の逃れられない宿命なんです!」


「知るか! そんなもん書き換えればいい! ツアーゼル、二人で新しい物語を作ろう!」


劇的な二人のやり取り――その真っ最中だった。


『ドバババババッ!!』


エンダー号から、一切の躊躇もない容赦のない極太ビームが掃射された。


咄嗟の瞬間、ツアーゼルは機体を翻し、田中を守るように機体の背中でその激しい撃ち込みを受け止めた。背後に凄まじい熱を感じながら、ツアーゼルがぽつりと毒を吐く。


「……あの寝ぐせ! 田中さんも……創造主様も手に入れているというのに!」


ツアーゼルは、ガラスにベタッと張り付いていた田中をコックピット内部へと引きずり込むと、漆黒の機体を再びエンダー号へと向け直した。


「一条さん、むやみにボタンを押さないでください。田中さんがいましたよ」


一条はすかさず弁明する。


「『愛し合う二人にちゃちゃを入れるボタン』だった。無意識に押していた」


愛住は冷ややかな目で一条を見た。


田中を庇ってダメージを負ったツアーゼル機だが、田中を乗せたことで、あるいは愛住への対抗心からか、凄まじいオーラを纏い一直線にエンダーGO!に目掛けて猛スピードで迫る。


「一条さん! 何かに掴まってください!」


迫り来る巨躯に対し、愛住は冷静にパッドを操作する。

遠距離戦から一転、格闘戦が始まった。


***


指令室では、スペルトンの胸の印が『ピンコンピンコン』と点滅し始めていた。

スペルトンの意識が徐々に遠のいていく。


しかし、まさにその瞬間だった。


ドロドロに溶けかけていた『クロニクル・コア』が、急速に安定を取り戻していく。


「......パンダ! どうなっている!?」


自己矛盾と格闘していたパンダロボのパンちゃんだが、スペルトンの声——その制約にシステムが反応した。


「下書きから本番投稿へ、作者の@ウシクウワインが投稿した模様。差分を確認……ラストが修正されています」


未完成の『下書き』エピソードへ、田中が独断でエンダーオン。異変に気づいた一条もそのあとを追った。一条からの連絡を受けたスペルトンがあるバグを発見した。下書きの物語であるがゆえに『クロニクル・コア』のスクリプトが破綻していたのだ。スペルトンは自らの身体をパッチとし、崩壊する世界を無理やり繋ぎ止めていた。


「差分の内容は!?」

「ツアーゼルが消滅します。これは今後、一切の転生も許されない、完全なる消失を意味します」


スクリーンに映し出されているのは、ボロボロになりながらも戦うエンダーの姿。


奇跡的な「床からの槍」、「謎のバナナトラップ」、挙句の果てには「牛久大仏が動き出して物理攻撃」といった謎現象が次々と巻き起こっていた。


田中は頭でも打ったのか、額から血を流して意識を失っている。

その田中を抱きかかえるように守りながら、ツアーゼルは黒い巨体を動かしていた。

ホログラムのスクリーンを見つめながら、パンちゃんは心のログにぽつりと刻む。


(……ツアーゼルの方が、よっぽどヒーローっぽい!)


「……やめてくれ。……ツアーゼル、あいつらは『俺たち』の仲間なんだ!」


意識を取り戻したのか、田中が絞り出すような声で哀願する。


「じゃあ、なんであんな卑怯な攻撃をしてくるんですか!」


ツアーゼルが叫ぶ。

田中が前方に視線を向けると——そこには、赤い甲羅のようなものを次々と投げつけてくるエンダー号の姿があった。


一方、エンダー号のコックピットでは、懐中電灯で照らしながらボタンを隅々まで探し回る一条の姿があった。


「こいつはすごい! 愛住の靴の裏にボタンがあったぞ! ちょっと失礼!」


愛住の靴を持ち上げ、ポチッとボタンを押す。

ゲームパッドの操作で忙しい愛住は、されるがままだった。


今度は牛久大仏の額から、巨大なホログラム映像が映し出された。

画面の中で繰り広げられているのは――ツアーゼルと田中が、どこかの式場で結婚式を挙げている動画だった。


悪役に甘んじていたツアーゼルでさえ、思わず機体の動きを止め、その映像に見入ってしまう。田中は、そんなツアーゼルの動揺する変化を間近で見つめていた。


「一条さん! 今回のボタンは大当りです! ツアーゼルさんの機体に『精神汚染』のアイコンが表示されました! これでしばらくは時間が稼げます。下書きの展開なら、このまま最小エリアになれば、ツアーゼルさんは世界樹を構築し始めるはずなんです!」


「いやあ、これめちゃくちゃだな。見てみろ! 俺や愛住も結婚式に出席しているぞ!」


どこか他人事のような感想を口にしながら、一条はどこから取り出したのかヘッドライトを身につけ、さらにボタンを探し続けた。


そのとき——唐突に、無機質な音声が空間に響き渡った。


『最終ゾーンに入りました。これよりパイロットは、己の肉体で戦闘を行ってください』


アナウンスと同時に、巨大なツアーゼルの機体も、エンダー号も一瞬で全ての機能が完全停止する。

「プシュー」という排気音とともに両機のコックピットハッチが強制解放され、最終安置である——『牛久大仏の手のひら』の上へ、生身の4人が投げ出された。


コックピットから投げ出された直後、盛大に尻もちをつく一条。

態勢を立て直して起き上がると――そこには、妖艶なスーツ姿のツアーゼルが、田中を鞭で束縛していた。 動けない田中を、ツアーゼルが高笑いと共に蹴り上げる。


「この男を生かしたいなら、あの妙なゲートを開けなさい」


一条は、田中が一瞬、口元をほころばせたのを見逃さなかった。


「……ちょっと待ってろ!」


一条は言われた通りエンダーゲートを開こうとする。

……だが、何も反応しない。


「ツアーゼル、ちょっと待て。バグか? ゲートが開かないんだ」


ツアーゼルは、冷酷な眼差しで切り捨てた。


「こんな状況で、よくもまあ嘘をつけますね。……だから、あなたの物語は誰にも読まれなかったのですよ」


一条の心に、何かがぐさりと刺さった。

そして、ふつふつと沸き上がる、今まで感じたことがない胸の重み。

目の前で毒を吐くツアーゼルが、なぜか生意気な反抗期の自分の娘に見えてきた。


「……実際にまあ、そうだ。認めるよ。けどな、ツアーゼル。お前がいまここに存在してるのは、俺があの物語を書いたからだろ!」


「そのくだらない物語のせいで! 田中さまが……! 田中さまがどれだけ『虚空の矛盾』に振り回されたと思ってるんですか! 私に出会わなかったら、あなたが私を生み出さなかったら、田中さまがこんなにも私に固執することなんてなかったのです!!」


「田中はただのアホだ! それに全部俺のせいにするな! 大体な、俺は女と付き合ったこともねえんだぞ!? そんな俺に『愛』なんて語れるわけねーだろ! 俺の作ったキャラのくせに、俺の全人生よりロマンチックな恋愛してんじゃねーよ!!」


「だったら小説なんて書いてないで、現実で恋愛すればよかったじゃないですかーっ!!」


ぎゃーぎゃーと、不毛な大喧嘩が響き渡る。


そんな二人に、牛久大仏は微笑みを浮かべ見つめいていた。


「……田中さん、あれ止めなくていいんですか?  なんか一条さん突然『賢者アピール』始めてますし、不毛な『コメ欄』みたいになってますけど」


「いや……」


田中は、鞭に縛られたまま二人を眺めた。


「あの二人、なんか親子みたいに見えないか?」


「……とても仲良さそうに見えます。正直、ちょっと、うらやましいです」


そんな二人の口喧嘩をそれぞれが見守る中だが、突然、空間が裂け、黒いゲートが開いた。現れたのは——あのパンダロボのパンちゃん。チラリと一同を見やると、気だるそうに手招きをする。


「パンちゃん!」

「悩みは解けたのか?」


愛住と一条が笑いながらエンダーゲートへと駆け寄る。

田中は、突然の事態に戸惑うツアーゼルに声をかけた。


「ツアーゼル、さあ行こう! ……そんで、とりあえずこれ、ほどいてくれないか?」


その瞬間――ノイズ交じりのチャイムが響き渡った。


『ピンポンパンポン♪』


『えー、テステス? みなさま! 私の物語に第三者の介入がありましたよ!』

『そうです、私です! 第一者の私です!』

『#作者降臨 による、#エンダリング をこれより行います!』


いやに早口で熱っぽい声。全員がその声にピタリと動きを止めた。


――そして、立ち止まってしまったのが運の尽きだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。