↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黎明のデシリア  作者: 中條利昭
第三十話「正義と救済の境界線」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
207/210

第三十話「正義と救済の境界線」-4-

 放課後の下駄箱で、瑞季みずき、優菜、星輝、そして沙耶さやの四人は、並んで自分の靴に履き替えていた。

 お昼休みの陣頭愛華とのことは伏せていたが、莉照と少し会話したくらいでは、あの怒りを発散できるはずなんてなかった。星輝はついに、彼女たちに昨日のことと、今日の昼休みのことを話した。

 三人とも、驚いていた。

「陣頭さんと分かり合おうとするなんて……さすが高梁さん」

 沙耶がそう言うと、瑞季が続いた。

「しかも、ギターに傷をつけられたんでしょ? 楽器なんて持ってない私でも、それが許せないことだってのは分かる。普通は、絶対にそんな相手に歩み寄ろうなんて思わないよ。ほんと、すごいと思う」

「いや、ウチは結局何もできなかった。すごくなんてないさ」

「結果はどうあれ、歩み寄ろうとすることがすごいんだよ。私には絶対にできない」

「でも、かなりムキになっちまったからな……。反省してる」

 すると、「いやいや」と瑞季が首を振った。

「星輝は悪くないよ! どう考えても陣頭さんが一方的に悪いよ。ねえ」

「うん。わたしもそう思う」

「星輝さんが落ち込むことはないよ」

 必死に庇ってくれる友の優しさが、少しだけ星輝のささくれた心を癒した。

 沙耶とは家の方向が違う。校門を出ると、彼女は「気をつけて帰ってね」と何度も振り返りながら、手を振って去っていった。


 残された三人。星輝は、少し歩いたところで意を決して、瑞季と優菜に向き直った。

「なあ。ふたりなら陣頭のこと——」

 その後の言葉は、不意に遮られた。

 瑞季の肩にかかったバッグが、がさりと大きく揺れる。

「ヒナ? どうしたの?」

 バッグの隙間から、切羽詰まったヒナの声が聞こえた。

「スレイヴだニャ! それも、かなり近くにいる!」

 その言葉に、三人の顔から、一瞬にして放課後の和やかな空気が消え失せる。

 人目のつかない路地裏に入り、瑞季がバッグを開けると、ヒナが飛び出してきた。

「すぐあっちだニャ!」

 そう言った途端、ヒナが顔を向けた方角から、鈍い打撃音が聞こえた。

「みんな、行こう!」

「アスラちゃんも呼んでおくね。ここからは遠いから時間かかっちゃうと思うけど」

 ヒナはその言葉に、小さく首を振った。

「それなら、ぼくに任せるニャ!」

 ヒナは一歩前に出て、三人を見上げた。その瞳には、強い決意が宿っている。

「ヒナ?」

「空の邦にいる間、ぼくだってみんなに負けじと、たくさん頑張ったんだニャ」

 ヒナがそう言った瞬間、ヒナの目の前の空気がぐにゃりと歪んだ。まるで水面のように揺らめきながら、淡い空色の、円形の穴が現れる。まるで異次元への入り口のようなそれに、彼女たちは見覚えがあった。

「それって……」

「ジンが使ってた瞬間移動の?」

「そうだニャ。空の精霊の難しい術のひとつだニャ。ぼくの力では、せいぜい一回で百メートルくらいしか動けないけど、それを繰り返せば、飛んでいくよりずっと早いニャ。時間はちょっとかかると思うけど、必ずアスラを連れてすぐに戻ってくるニャ!」

 ヒナは、その青い渦の中へと躊躇なく飛び込んだ。すると、ヒナも青い渦も、その場から消え去った。

「ヒナ……すごいね」

 ヒナの成長に、瑞季の胸が熱くなる。

 そして、三人は互いに視線を合わせ、力強く頷く。スレイヴの気配がする方角へと駆け出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。