ハルとオークスとの再会
ナナザールの朝は早い。
海洋国家という事もあり、水産資源が豊富だ。
魚や貝が豊富で、漁港にある市場は老若男女問わず訪れ、朝から賑わっている。
海鳥の鳴き声や海の波の音を聞きながら、朝日で照らされた市場を眺めながら、僕は朝を迎えた。
「朝か、賑わってるな」
僕は昔と変わらない賑わいを見せる市場を見る。
「さて、支度をして、市場に行くか」
僕は市場に出かけるために半袖の薄手のシャツに短いズボンに着替えると、宿屋から市場へ歩き始めた。
市場に通じる通りには、活気が溢れている。
香ばしいパンを焼く髭を生やした男性のお店や薄手の服を作りながら店先で服を売る若い女性の店、色鮮やかな花を揃えるお婆さんの店などさまざまだ。
「いらっしゃい、寄っていって!」
という声があちらこちらから聞こえてくる中、僕は横目でその様子を眺めながら、ゆったりと市場へ向かう。
市場の様子が見えてきた。
市場には仕入れた魚を捌いて、店先に並べる店主やそのまま魚を調理し、煮付け料理や刺身ををお客に出す店、貝を専門に取り扱う店など様々だ。
僕はお店には寄らず、市場の端にある雑貨屋に入った。
そこは市場で使われる調理器具や漁師が使用する網など、漁港に必要なものが揃う店だ。
雑貨屋に入ると、店の商品を整理している、赤みがかったショートボブの1人の若い女性がいた。
店に入った僕に気づいた女性が声をかける。
「シャルテ?久しぶりー‼︎元気にしてた?全然顔を見ないんだもん、心配したよ!」
と声をかけてきた。
この女性の名前は、ハル。
元気いっぱいの町娘のような娘だ。
僕がナナザールで仕事をする時はよくハルに手伝ってもらい、助けてもらっていた。
調べごとから書類仕事まで、なんでもそつなくこなす彼女は僕の心強い友人だ。
だが、挨拶が済むと、どこかハルの雰囲気が落ち込んでいるように見える。
「ハル、久しぶり、忙しくてなかなかこっちに来れなかったんだ、ごめんごめん」
と返事をした。
「いつからこっちに来たの?何か仕事?」
「実は調べたいことがあって、ナナザールに来たんだ、ハルに手伝ってもらいたい。いいかな?」
ハルは少し困った様子を見せながら、悩みつつ、
「いいわよ、実は私もシャルテに頼みたいことがあったの。」
と答えた。
「何かあったの?」
「実は最近仲良くなった女の子がいたの。身なりはしっかりしているのに、お金を持っていない様子で、泊まる場所がないみたいだったから、仕事を手伝ってもらう代わりに家に泊めてたの。仲良くなって楽しかったんだけど、突然いなくなって...」
「シャルテ、お願い!彼女のことが心配なの!一緒に探すのを手伝ってくれない?シャルテのお仕事も手伝うから!」
「ハルには僕の仕事を昔から手伝ってもらって助けられたから、喜んで協力するよ。
いなくなった彼女の特徴を教えてくれる?」
「彼女の名前はファナというの。銀髪の長いロングヘアが特徴的で、指に緑色のサファイアの指輪をしていたわ。指輪を大事そうに持っていたのを覚えているわ。」
僕は心の中で
「銀髪のロングヘアが特徴的?僕の探すフィーネと特徴が合うな。それに、サファイアか、珍しいな、昔はよく王国で採掘されていたみたいだけど、枯渇して、取れなくなっていたな。流通もなかなかしていないし、手掛かりになるかも。」
と思いながら、ハルに
「他に彼女の周りで何か悩み事だったり、誰かに絡まれたりしていなかった?」
と問いかけた。
ハルは僕に
「そういえば、前に人相が悪そうな二人組の男の人が店に来て店の手伝いをしていた彼女に何か話をしていたわ、会話は聞き取れなかったけど、彼女、会話が終わると少し思い詰めた顔をしていたわ。」
「二人組の男か、何かその二人に特徴はなかった?」
ハルはうーん、と悩みつつも思い出したように、
「そういえば!一人の男の左目の横に刃物の切り傷があったわ!」
と答えた。
「この辺りで争いごとや喧嘩もなかなか起こらないし、その目元の傷は大きな手掛かりになるかもしれない、もしかしたら、盗賊の話とも何か関係するかも。」
と僕は心の中で思いながら、
「わかった、ハルありがとう、実は僕もその話を聞いて心あたりがあるかもしれないんだ。一緒に協力して探そう!」
と答えた。
「ありがとう!私ひとりじゃなかなか探すのが大変だったし、誰かに頼む事もできなくて...シャルテが来てくれて心強いよ!」
ハルには笑顔が戻り、僕に返事した。
ハルにはお店を閉めてもらい、僕とハルは早速、ファナを探しに街へと繰り出した。
僕とハルは活気のある街を歩きながら会話をする。
「そういえば、ハル、最近盗賊団が出るって噂だけど、何か知ってる?」
「私も詳しくはわからないけど、夜になると人通りの少ないところを狙って物取りをしたり、家を襲って金品を奪っているみたいよ。根城は転々としていて、街にいる自警団も足取りがわからないみたい。そういえば、最近盗賊団の男が捕まって自警団の詰め所にいるみたいだけど、なぜか口を閉ざして話そうとしないみたいなの。」
とハルは答えた。
「その男は僕もカナタに寄った時に聞いた盗賊団の男の話を聞いて気になっていたんだ。」
「ファナと話していた二人組の男も自警団なら何か知っているかもしれない。まずは自警団の詰め所にいる盗賊団の男に会ってみようと思う。」
そう話しながら、街を歩き、僕たちは自警団の詰め所に着いた。
ナナザールには正式な軍や警察がなく、唯一事件や取り締まりをしているのがこの自警団である。
普段からナナザールは犯罪が少なく、大陸を含め、治安はトップクラスにいい。
街に置かれた自警団も観光客の案内が主な仕事で、穏やかさがナナザールの売りでもある。
そんなナナザールにおいて力を伸ばし、犯罪を犯しているのが盗賊団であるようだ。
僕とハルは自警団の受付の男に挨拶をする。
受付の男は僕たちに向かって、
「こんにちは、本日はどのようなご用件ですか?」
と問いかけた。
僕は以前仕事をしていた時からの顔馴染みの自警団員の名前を出す。
「オークスに用事があるんだけれど、いるかな?」
「オークスさんは今街の見回りに出てますよ。あっ、ちょうど今戻ってきました。」
と僕の背後に目線を移しながら、受付の男は話した。
「シャルテじゃないか!久しぶりだな、元気してたか?」
こう問いかけてきたのは、僕より長身で黒髪ショート、メガネかけ、穏やかな性格の持ち主、オークスだ。
よくオークスにはナナザールで勤務していた頃には仕事や夜の酒場にいたるまで、仲が良がいい友人だ。
「元気にしていたよ、オークスこそ、久しぶり」
と僕は返事をする。
「そちらのお嬢さんは?」
僕はハッとした。
「そういえば、ハルとオークスの面識はなかったか、二人と一緒に何かをしたことはなかったか」
と心の中で呟きつつ、
「そういえば、二人は初対面だったね、こちらはハル、僕の友人さ。」
ハルも明るい表情で、
「初めまして、オークスさん、ハルです。よろしくお願いします!」
と元気よく挨拶した。
オークスは穏やかに
「初めまして、オークスです。こちらこそよろしく」
と答え、僕に
「そういえばシャルテ、何か俺に用事か?」
と問いかけた。
「そうそう、詰め所に盗賊団の一人が捕まっているって聞いたんだけど、本当?」
「ああ、本当さ、この間、夜の巡回をしている時に一人で家を物色しててさ、怪しいと思って声をかけたら逃げようとしたから捕まえたんだ。捕まえた時に所持していた鍵のかかったアタッシュケースについて聞いても、鍵を持っていないし、中身がわからなかったから、念の為調べたら盗賊団のようなんだ。」
「しかも、その盗賊、単独行動をしていたところにも気にかかっているんだ。」
「それはどうして?」
と僕が問いかける。
「ああ、ここの盗賊団は基本的に見張りと実行役に役割分担して複数人で犯行をするんだ。だから不思議なんだよ。」
とオークスは答えた。
「実はその盗賊団の男と話がしたいんだけど会わせてもらえない?」
「それは構わないけど、口を聞かないよ?」
「それでも構わない、頼むよ。」
と僕とオークスはやり取りをした。
オークスは詰め所の中に僕たちを案内した。




