魔王様に会いまして
閑散とした魔王城の中、ノース達一行はそれぞれの足音を響かせながら歩いていた。
先頭を歩くのはアラクネ。蜘蛛の足をカサカサさせながら歩いている。上半身はピンとして分厚い本を持っていた。
次にカツカツ歩くのはボロボロになったノースとニコニコ笑顔のアキナさん。
殿はふてくされた顔のミノタウロスがドスドスと歩いてた。
「どうしてこいつらが魔王様の友達ってわかるんだ?」
「筋肉バカのあなたにはわからないでしょうけど、彼の魔力は間違いなくあの方だと示しているわ。もちろん、姿形や名前までもみずぼらしくなってるけど」
アラクネのトゲトゲしい言葉にノースはさらに落ち込む。
「それにしても……」
ゆっくりと歩いているノースが声を上げた。
「昔ここに来た時は溢れんばかりの魔物が飼われていたのに、今は全然いないんだな」
「うちのね、魔王様があなたと会って以来、穏やかになったの。魔王様は人間を攻めることも、力比べをすることもしなくなった。
私たちはそれでも全然いいんだけど、やっぱり暴れたい人たちもいてね。そんな人たちはどんどんと出て行っちゃって、それと一緒にどんどん魔物も出て行っちゃって、今ではもうこの有り様よ」
アラクネの言葉にノースはなんとなく頷く。一番後ろにいるミノタウロスさんも暴れたい派なのだ。
城を出て行かなかったのはそれだけ高い忠誠心からなのだろう。
そう話しているうちに、一行は魔王がいる部屋の前までやってきた。
重厚な扉を開けると、長い絨毯の先に上座が設置それており、そこには大きな椅子にふんぞり返っている絶世の金髪美男子がいた。
「魔王様、サウザントマスターと思われる男を連れて参りました」
アラクネが大きな声で伝える。魔王は目を見開き、ノースの顔を観察した。
「久ぶりだな」
ノースも飄々とした様子で挨拶をする。
魔王は観察を終えると、観音様のように慈悲深い笑みを浮かべた。
「前とは比べ物にならないぐらいみずぼらしい格好をしているが、間違いない。お前に会えてうれしいよ。今日はどうしたんだ」
出会い頭に旧友から『みすぼらしい』と言われて悲しくなってしまうが、ノースは耐えながら返事をした。
「実はお願いしたい事が二つあってきたんだ。一つはここにいるアキナと試合をしてほしいって事と、二つ目はお前の持っている次元鏡を貸して欲しいんだ」
その言葉を聞いた途端、魔王の慈悲深い笑みは獰猛な笑みへと変わった。
「そうか、お前もいよいよ決意したか。あの亜神と事を構えるか!」
「いや、そんなつもりは一切ないから。うちのアキナが元の世界に帰る為に必要なんだ。いいだろう?」
「まあ、別にいいけど、ただと言うわけにはいかないなあ」
「でも、俺は金なんて持ってないんだが……」
「いや、大丈夫。代わりに身体で払ってもらうから」
そう魔王は不敵に笑った。




