魔王を求めて②
ノースはギルド長の部屋を出てため息をついた。
まさか、アキナが勇者召喚というカテゴリーで考えられていたとは思いも寄らなかった。
確かに、彼女はことあるごとに「チートだ!」と叫んで、そのありえない力を振るってきたのだが、まさかそれがここいら一帯の魔物の絶滅の危機に晒すことになるとは思いもしなかった。
受付の方に回ると、アキナはカミラとなにやら楽しそうにお話をしている。
とても興味のある話で、アキナは真剣に何度も頷いていた。
「アキナ、帰るよ」
ノースが声をかけると、アキナは大きく手を振った。
「ノースさん、私今度、東の方へ行って狩りをしてみるわ」
ふーんとノースは納得しかけたが、慌てて首を振った。
今先ほど、アキナのせいでここ周辺の魔物が絶滅しかかっているとギルド長に言われたばかりだ。
ここでアキナを東の森へ連れていって魔物を狩り尽くしてしまったら、言い訳などできない。
「アキナ、お前は東の森へいかないで、魔王やドラゴンの相手をしていなさい」
下手に狩り尽くしてギルドに敵視されるよりも、魔王やドラゴンと相対してストレスを発散させてくれたほうが幾分かました。
それに、魔王ならば自分の友達だ。
事情を話せば軽く手を抜いて相手をしてくれるだろうと思った。
そう考えての発言だったのだが。
「ふぇ?」
ノースの言葉にアキナはとたんに涙目になった。
アキナの可愛い顔もくしゃくしゃになっていく。
「それ、ほんと?」
震える声でアキナが訊ねた。
「あ、うん……」
ノースがためらいがちに頷いた。
途端、アキナが大声で泣き出した。
それだけで周囲には嵐が吹き荒れ、最終的にギルド長が出張るはめとなった。
「ごめん、なさい」
ひとしきり泣いた後、アキナは申し訳なく呟いた。
アキナはノースの言葉に何を思ったのか、自分は娼館にでも売られると思ったらしい。
なんでも、カミラと先の話でこの世界には魔王もドラゴンもいないということを言われたらしく、それにもかかわらず、ノースが魔王やドラゴンの相手をしろと言ってきたので、そういうところに行く隠語か何かと勘違いしたらしい。
カミラは「ははは」と乾いた笑いをしながら仕事へと戻った。
ノースはまだくしゃくしゃした顔のアキナをおうちに連れて帰り、たっぷりとおいしいクリームシチューを作って、寝床でよしよしとアキナガ眠るまで頭を撫でてあげた。
そして結局こんな可愛いアキナが居てもイマイチ手を出せない自分をノースは腹立たしく思いながら自分のベッドで眠るのだった。
そして次の日。
ノースとアキナ自宅の地下室にいた。
魔王の居城に行くためだ。
本来なら西の果てのそのまた向こうまでいかないと魔王の住んでいる以上にはいけない。
だが、ノースは魔方陣を使うことで一気に西の果てへと行くことにした。
ノースは緑のペイントを薬指に付けると、丹念に魔方陣を書いていく。
20分ほどして魔方陣が出来上がると、その魔法陣にほんの少しだけ魔力を注ぐ。
「さあ、行こうか。アキナも魔法陣の上に乗って」
「でも、これ、爆発したりしない?」
召喚当初はノースの魔法を全面的に信頼していたアキナだったが、最近では爆発するクリスタルバッファローを見たりしたことで、少しだけ不安になっていた。
「多分、魔力が多くて爆発することはないよ。だってこれ、普通の魔術師100人が力を込めても作動しないから」
だが、アキナが魔法陣に乗ると魔法陣は緑の光を出し始め、一瞬ふわっと浮遊感を感じた後には二人は大きな城の目の前にいた。
「これって、移動魔法?」
「そう、俺しか出来ないけどね」
ノースたちがしゃべっているうちに門番がやってきた。
さすがに魔王の城の門番といったところか、筋肉隆々のミノタウロスであった。
「なんだ、お前たちは?」
「俺はノース・ピース・ウエストだ。こっちはアキナ。魔王に会いに来た」
「要件はなんだ?」
「友達が遊びにきただけなんだが」
「そうか、ちょっと待ってろ」
ミノタウロスは城の中に入っていく。それから待つこと15分後。
「魔王様に会ってきたがお前なぞ知らんと言ってたぞ」
「な、あいつ、何言ってるんだ!」
「まあ、確かにお前たちのような奴が魔王様の友達なわけないだろう」
「ノースさん!バレてしまったみたいね。私たちが魔王を倒しにきた勇者だって!!」
「お前も何言ってるんだ!てか、なんでそんなに興奮しているんだよ」
「だって、異世界から召喚されて魔王を倒すなんて王道、出来るんだよ。興奮するに決まってるよ!」
「昨日は子どもみたいにビービー泣いてたくせに!」
「なんだ、お前たちは魔王様を倒しに来たのか?では、簡単にここを通す訳にはいかないな」
ミノタウロスが巨体を振るわけニヤリと笑った。




