ギルド長との話
その頃、ギルド長の部屋ではノースがギルド長の腰をもんでいた。
「どうですか、ここ」
「そう、そこがいいんじゃ!腰の奥のその筋肉をほぐしてくれる奴はそうおらん!!」
ノースはE級冒険者でありながらだいたい二週間に一度のペースでこの指名依頼をこなしていた。
普通、E級冒険者は魔物を狩ることが出来ない初心者の級であり、街中の雑用を始めとする仕事をしている。その級もゴブリンを三匹ほど狩れば上がる級であり、1ヶ月もE級である冒険者は失格とされる。
ただし、ノースはこのギルド長のマッサージという仕事だけで冒険者という地位を保てていた。
一通りのマッサージを終えて、ノースは椅子に腰掛けた。
「これで今回の分は終わります。また、調子が悪くなったら教えてください」
「ちょっと待て」
挨拶をして外にでようとしたノースをギルド長が呼び止めた。
「あの、アキナという子は『勇者』なのか?」
「はい?」
「わしの方にも情報は入っておる。うちのカミラと婚約した酒場の店員はあの子がクリスタルバッファローを一撃で倒したと言っていた。
ギルドに入って討伐部位を一つも持ってきていないが、あの子の一撃で魔物が爆発するのを他の冒険者が何度も見ている。
そして、先程知った情報だが、ここから半径15キロの範囲で魔物が絶滅しかかっておる。すべて、アキナが原因ではないのか?」
「まさか、そんな……。ってか、ここら辺の魔物が絶滅?」
ノースはふと思い返してみる。
確かにアキナは証明部位が欲しくてホーンラビットを一日で百匹狩っていた。
他の種類の魔物を狩るときも最低百匹は狩っていたと思う。だが実際は狩った狩った数が多すぎて数なんか数えていない。
本当に魔物が絶滅しかかっている気がしてきた。
「あの子はお前が彼女にするために召喚したと聞くが、それはただの召喚獣の魔法だったのか?間違えて勇者召喚をしてしまったのではないのか?」
「いや、確かにあれは召喚獣の魔法だった。オークかゴブリンのメスを召喚して擬人化しようと思っていたけれど、……もしかしたら魔力が多すぎて次元の壁を壊してしまったかもしれない」
そう考えると、やってしまったと思い始めた。
「まあ、例えアキナが勇者でも、さしたる問題はないでしょう」
「大問題だ」
ギルド長は怒りに声を荒げる。
「勇者の宿命として魔王と対決し、討ち取る事が定められておる。魔王は魔族の王にして人類の敵だ。人類は魔王によりその種の存続が危ぶまれる時に勇者を召喚し魔王を倒してきた。
だが、今回の魔王は人類にとって非常に友好的だと聞いている。実際に魔王の脅威はこの国に届いてないからな。だからこそ、ギルドは魔王の存在をうやむやにし隠す事もできている。
だが、勇者が召喚されたことを魔王に知られてみろ。それだけで魔王の動向が180°変わるかもしれん」
「大丈夫ですよ。間違えて勇者召喚しちゃったって言えば」
「間違えて勇者召喚出来るE級冒険者がいると信じるバカがそういないと思うが」
「大丈夫ですって」
ノースはギルド長の目を見て微笑んだ。
「だってあいつ、俺の友達ですもん」
ノースの言葉にギルド長は深いため息をついた。
バカも遂にここまできたかと。




