5話 回復
眠れない夜を過ごした華穂は早朝、掃除を済ませて
朝食も喉を通らず 7時過ぎに病院へ向かった。
今、悠斗がどんな状態なのか心配でたまらなかった。
8時前、病院に着くとエレベーターで5階の病室に向かった。
泌尿器科のドクターが尿道にカテーテルを入れ終わった
ところだった。
悠斗が「何か長い棒のような物を入れられて痛かった」と
話す。が「良かった~意識がはっきりしてる」と華穂が喜ぶ。
点滴や尿道カテーテル、心電図のモニターにつながっているコード、
SPO2をはかるため指にパルスオキシメーターもついている。
悠斗には不快ではあるだろうが 良くなっているのが嬉しい華穂。
悠斗は、まだ48歳、華穂より2つ年上である。
勤めていた会社が倒産して新しい仕事先が見つからず精神的に
かなりまいっていたと思う。
やっと、これからの計画が立てれて希望をもって頑張っていたのに
脳出血なんて、かなりのストレスだったのだと改めて考えると
悠斗が可哀そうでたまらない華穂だった。
ドクターから「山を越えました。出血が止まってから
再出血もないし、脳のむくみもないようです。
出血部分は自然に吸収されるので 安静にして出来るだけ後遺症が
軽くすむように リハビリを入れます。
落ち着いたらリハビリ病院に転院になります。」と、説明があった。
悠斗は尿道のカテーテルが不快でたまらないようで 尿器で取る事に
してほしいと何度も訴える。
ドクターはあと数日はカテーテルでと思っていたらしかったが
しぶしぶ許可がおりた。
華穂は勤務先の病院には休職届を出していて 毎日朝から夕方まで
付き添って世話をした。
配膳 下膳 清拭 口腔ケア 尿の廃棄と尿器の洗浄
家にいても気になってしまうので 病院で悠斗のそばにいた方がいい。
看護師の華穂は悠斗には最高の看護になるので悠斗は安心して華穂に
頼りきりである。
順調に回復してきて ドクターからリハビリ病院に転院しなくても
自宅に帰れそうと言われ 嬉しそうな悠斗と華穂。
心配するからと華穂の母には 悠斗の脳出血の事は内緒にしていた。
でも、土日には手伝いに来ていた母にいつまでも内緒には出来ない。
回復しているので母に伝えても大丈夫だろうと、電話で伝えた。
びっくりした母がすぐ病院に飛んできた。
でも 元気そうな悠斗を見て安心していた華穂の母。
「思ったより元気そうでほっとしたよ。」とお見舞いを用意していた。
返そうとしたけれど、「美味しいもの食べさせてやりなさい」と
受け取らない。
華穂の母は68歳。父は数年前に肺がんで亡くなっていた。
悠斗の両親は 悠斗がまだ30代の時に交通事故でこの世を去っている。
悠斗、華穂夫妻に子供はいない。お互いに一人っ子で兄弟もいない。
華穂は天職と思っている看護師をずっと続けたいし、もっと勉強したいと
思っていたので 子どもがかわいそうと考えたのだ。
悠斗も華穂の考えを尊重してくれている。
なので、悠斗と華穂には家族は華穂の母・詩乃だけであった。
母・詩乃はほどほどに距離を取って接してくれるので関係は良好だった。
華穂と母・詩乃は一緒に帰って、今夜は母と過ごすことになった。
「ちゃんと食べてる?」と母が心配する。
夕食を作ってくれると言ってスーパーで買い物してから帰った。
華穂は病院のレストランでお昼を食べていたが朝食と夕食は
ほぼ食べていない。
久しぶりの母の手料理でお腹いっぱいになって安心したように
熟睡できた。




