18話 悠斗の旅立ち
悠斗が入浴できたのは奇跡のようだった。
最後の入浴になってしまった。
もう食事もとれなくなった。もちろん胃ろうはしなかった。
無理に食べさせたり飲ませたりはしなかった。が、
華穂は悠斗が大好きな桃をつぶして綿棒の大きいのにしみ込ませて凍らせた。
それを口に入れると少し吸っているようだ。
痛みに苦しみながら「華穂すまない、ごめん」と謝る悠斗。
呂律がが回っていないけれど 華穂には聞き取れた。
「謝らなくていいよ。幸せだったよ。ありがとうね」と華穂。
華穂の目から涙がこぼれる。
あまりにも痛みがひどくなり 鎮痛、鎮静剤を入れて眠らせるため
PCAが入れられた。悠斗は静かに目を閉じウトウトし始める。
華穂は母や城島、奥田に連絡した。
びっくりするくらいすぐに城島がかけつけてきた。
奥田もかけつけた。バス停で華穂の母を見かけて車に乗せてくれたそうで
母も一緒だった。母は華穂の手を握って悠斗の頭を撫でながら声をかけた。
「悠ちゃん、疲れたね。華穂の事は大丈夫だからゆっくり眠りなさいね」
城島、奥田も声かけた。
「悠斗、ありがとうな。頑張ったな。お前の事忘れないぞ。」
悠斗の目から涙が一筋 流れた。
PCA以外、心電図のモニターや点滴など何もついていない。
一度大きく深呼吸して呼吸が止まった。
穏やかな顔をしていた。まるで笑っているような顔だった。
少しだけ痩せたけれど無理な治療は拒否して調子のいい時は
食べていたので身体も顔もまだふっくらしていた。
起きだしてくるのかと思うほどだった。
看護師が医師を呼び 瞳孔を見た後、聴診して確認の後「ご臨終です」
医師の声が病室にひびいた。
「悠斗~」普段 毅然としている城島が泣き叫ぶ。
奥田もボロボロ涙流しながら突っ立っている。肩が震えている。
悠斗の希望が お通夜も告別式もしない。火葬だけでいいとの事だった。
お坊さんも呼ばないし戒名もいらないとの希望どうりすすめた。
葬儀社に連絡して 自宅まで搬送してもらった。
さくら や 瑞希もかけつけた。
翌々日の火葬になり 親しい者だけで悠斗にお別れをした。
奥田や城島に「悠斗がいなくてもいつでも又 サンルームに集まろうね。
悠斗はいつでも ここにいるよ。」と サンルームに置いている写真を
指さした。
数日、母が泊まってくれることになった。




