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オーダー・メイト(Order-Mate)~兼食の猟犬と偏食だらけのインフォーマ~  作者: 湖陽 照
第1章 彩流市編 ~二人の愛食者~

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#4 お代わりは二回まで

本日19時10分に第6話「首輪を外された猟犬」を投稿します!

「私はハンターとしての職務を全うしただけです! 三人目の彼だっていい人でしたよ。真面目で丁寧で仕事ができる。ちょっとスタミナ不足が玉に瑕ですが……」


 優雅な空気がもうすでに懐かしい。

 宥めるように控えめなコメントを心掛けてはみたが、ご満足いただけなかったらしく――


「ああ、お前の仕事は完璧だよ! 

ピザ窯でバディを焼き殺しかけ、市民や同僚達をランドリーにぶち込み、今度は延々と続く廃品回収プレイでとどめを刺した!!」





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【ケース3:ジャックポット・資源回収エンドレス大作戦 ~路地裏より愛を込めて~】


 美しい彩流市ではあるが、広大であるからこそバックストリートも決して少なくはない。街の治安維持と向上にはこう言った場所の整備、パトロールが必要不可欠である。


 というのも、こういった狭い路地裏には日陰や物影が多く、黒雨が溜まりやすいからだ。故にスポイラーの温床地帯になることもある。

 軽度のステインや黒雨は通常の雨や日光で消えるが、一番確実なのは水で直接洗い流すこと。最近は街中に洗浄設備が普及してきたが、まだまだ行き届いていないのが現状だ。


 とは言え、暗くて彩度が低い場所は大型のスポイラーはあまり好まないらしく、小型の弱いスポイラーがほとんど。だからこそ新人ハンターが最初に覚える仕事でもある。


 今回の任務は、その新人ハンターをエスコートしながらの駆除。生物種バイオのスポイラーが大量に湧き出し、一部のハンターから猛烈なラブコールが入ったらしく緊急出動となった。


 小型とは言えスポイラーであることに変わりはなく、そこそこのサイズなのは当然。まだ輪郭が不鮮明な段階ならともかく、あまりの数に対処が遅れシルエットが鮮明になった個体も増えた。

  

 ネズミに猫、コウモリ、イタチ、虫、虫、虫、虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫虫――――――――蟲。




 思わず絶句――――

 さながらB級のモンスターパニックだった、あれは私も怖い。めちゃくちゃヘルプするし、何なら友達も呼びつける。


 新人の悲鳴をBGMに無心で狩り続けた。


 正直私も悲鳴を上げたかったが、自分より取り乱す人間を見ていると一周回って冷静になった。




 ――――狩り続けると支援部から近辺にひときわ強い反応があると報告が入った。そこを起点に小型のスポイラーが引き寄せられているらしく、私はすぐさまその地点へと向かった。


 走りながら虫を次々と倒し、目的地に着いて目にしたのは、淡い光を放つ『誘蛾灯』。

 胴体はまだ無色透明で向こうの景色が歪んで見えていたが、幻惑的な大きな光だけははっきりと青く染まっていた。ゆらゆらと揺らめく光によって生まれた影の中に、蟲のそれを見た気がする。


 すかさず力を込めた黒弾を撃ち込むと、よろめかせた身体に黒く細い線が走る。弾を媒介にしてホログラムの煌めきが全体を覆うと、ランプに手足が生えたような姿を現した。機械種(マキナ)のスポイラーだった。


 最終的にそのスポイラーは倒し、残りの害虫も全て駆除され回収も無事に済んだ。100点満点!

 

 


 ……だったのだけれど。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「3日3晩、不眠不休で大暴走。現場を盛大に散らかして、廃棄物の回収を他の奴らに押し付けた。置き去りにされた相棒は一睡も許されず、スポイラーどもの体液にまみれながら死体の山を片付けさせられ続けた結果がこれだ!」


 ついさっき提出されたからか、目当ての物は散らかったデスクの上にポンッと置いてあったらしい。パッと手に取った辞表をピラピラと振って見せる。


「『サキさんは街を壊すスポイラーよりタチが悪い。あの人のスタミナは人間じゃない、通った道は死体だらけで片付けても片付けても終わらない。あの人が一番の災害だ!』だとさ。

なにがスタミナ不足だ、お前がメンタルを粉々にしただけだろ!」


「ボスは現場を見ていないからそんな悠長なことが言えるんです! 1分1秒でも早く叩き潰さなきゃ街が死んでましたよっ! この世の虫という虫が街を覆いつくして、そのうえ黒雨まで降り出したらいったいどうなっていたか!


虫嫌いの同僚達からは『神様、サキ様、英雄万歳!』って泣いて喜ばれたんです。それにスポイラーの遺体が大量に落ちて、提供先にも喜んで貰えたんでしょう? 私が狩ったんだから汚染率も低いし」


 あの時の盛り上がり様はすごかった。

 この街の行く末が掛かっていたため、支部で仕事をしていた同僚達がモニター越しに一部始終を固唾を飲んで見守っていた。あれ以上残業はしたくなかったので、手伝えなかったお礼にと報告書を代わりに書いてくれたのは非常にありがたかったです。


 おかげで余裕をもってパフェにありつくことができました。


「新人の彼には悪いことをしたと思っています。けど彼も運が無かった。仕事の内容なんて選べないとはいえ、よりによって大量の生物種(バイオ)の駆除にあたるなんて……」


 数あるスポイラーの中でも生物種(バイオ)は、多少の差異はあれど身近な生物と姿形がほぼ変わらない。なので、傷つければ血や肉片が飛び散ることもあれば、時に悲し気な声で鳴くこともある。

 心根が優し過ぎるハンターはここで挫折し、別の部署へ転属願いを出すことも無きにしも非ず。


「ですが、あれくらいで泣き言をこぼしてちゃこの先やっていけませんよ。他に職種はいくらでもあるんです。辞めるなら早いに越したことはありません」


「バカ言え、ウチはクリーンな職場が売りなんだ。災害に巻き込まれたら補償ぐらい出る。

ここに入った以上、どれだけ壊れようが丁寧に直したあと、やりがいっていうやつを与えてとことん使い潰してやる。

 お前の、言う通り、ハンターじゃなくても仕事はたんまりあるからなっ」


 馬鹿馬鹿しいと言わんばかりの口調で吐き捨てながら、乱雑に積みあがった紙の山を強引に押し退け、空になったカップを置く。

 紙を両手で裂いて、重ね、裂いて、重ね――、グシャグシャに押し丸めてから、言い終わりと同時にゴミ箱に叩きつけた。


「その補償、当然私にもくれますよね? なら次はもう少し、タフでガッツのあるバディを寄越してください」

 

「次? ハッ、次などない! お前はもうここに来なくていい、クビだッ!」

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