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オーダー・メイト(Order-Mate)~兼食の猟犬と偏食だらけのインフォーマ~  作者: 湖陽 照
第1章 彩流市編 ~二人の愛食者~

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#42 黒より深い闇の中へ ~囚われた人質と妨害者の在処~

 彩流市の中心街では、遊撃隊が死力を尽くした総力戦を繰り広げていた。

 あちこちの路地や大通りで他のハンターたちが緑、赤、オレンジ、紫、青といった鮮烈なColorが激しく闇夜を染めあげる。黒い世界のあちこちにColor能力の痕跡である色が飛び散っている光景は、一見すれば形勢有利にも見えた。


 ――だが、現実は残酷だった。


 街を埋め尽くすスポイラーはハンターたちに次々と倒されていくものの、同時にその戦いの痕跡である色を貪欲に吸い上げてしまい、レベル3の濁色(ダルトン)級や4の極色(ソリッド)級の強力な個体が次々と出てくるようになった。

 色彩を喰らって明確化したスポイラーどもは向こうも固有の能力を使いだし、次第にハンターたちに負傷者が出始める。


 さらに最悪なことに、沈色を防ぐはずのコートも激しい戦闘でボロボロになっていった。

 隙間から黒雨を浴びたことで体が次第に黒ずんでいき、痺れや四肢が動かなくなるハンターも続出する。


「動けないやつは私の後ろへ下がりなさい!!

――『減色中和(フェードアウト)』!!」


 ホログラムの光の波長を応用して、仲間の細胞を侵食する黒い汚染を中和するが、怪我人と汚染の広がる速度が早すぎて全く追いつかない。

 じわじわと前線が押し潰されていくなか、私は通信機へ向かって怒鳴り散らした。


「ちょっとッ、まだ場所の特定は終わらないの!? 

このままだと私たち全員石炭になるわよッ!?」




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


――――PALLET彩流支部 管制室



 スポイラーどもの自爆特攻を力技でねじ伏せている喧騒のなか、管制室では検索を終え、ようやく該当データをヒットさせていた。


「キタコレッ、サキ氏!! 条件に完全合致する場所を割り出したでござる!! 彩流市中央区の地下に眠る地下鉄の廃車両基地!! 奴らはそこにいるッ!!」


『地下鉄の、廃車両基地……!?』


「ああ。地下ゆえに雨から完全に逃れられる上、地上に線路が繋がっていてそのまま街の外に出られる構造になっている。

奴らはそこに人質を控えさせ、用が済んだら使われていない車両で線路を使って街の外へ逃げる気だ!」


『場所は分かったわ!! だったら、この最悪なジャミングの発生源はどこ!?

電波塔の場所が全然見つからないんだけど!?』


 そう叫んだ私の問いに対し、通信の向こうのSEの声はひどく困惑したものだった。


「それが……実は発生源の場所は、未だに全く見つかってないのでござる。

しかし妙なことに、レーダーが感知するジャミングの強さが、なぜか激しくブレていて……。

少しずつ弱くなったかと思えば、今度は急激に強くなってきたし……」


「不可解極まるな。ジャミングの強度がこれほど不安定に上下するなど、通常の固定電波塔ではあり得ん。

……おいお前たち、何か壊したりイジったりしてないのか?」


 監督の声が街を駆けるサキやセンジ、他の遊撃隊のハンターたちにの耳に一斉に届く。


『してないわよ! こっちは目の前のことだけで手一杯だもの!』


『私もです。ルーキーの護衛をしながら広場を死守していますが、機械の類には触れていません』


『俺たちもだ! 強いて言うなら、スポイラーどもなら狩りまくってるがな!』


 誰かが吐き捨てたその皮肉交じりの通信を聞いた瞬間――、部屋の片隅で支援部の一人がガタタッと椅子を蹴立てて大声を上げた。


「――サキ、お前、またやったのかァァァッッッ!!!!?????」


『……その情けない声、まさか……ウキョウ!?』


 その男は、三人目の元バディだった。

 サキが路地裏に大量に湧いた凶悪な虫型のスポイラーを、三日三晩にわたって不眠不休で執念深く狩り続け、その横で生々しい大量の虫の死骸の片付けに追われ続けた結果、精神的に限界を迎えて辞職届を出したものの、いつの間にかタッカーに破り捨てられ、泣く泣く支援部へと転属になったという。


 つまり――――サキの凄まじい戦闘狂ぶりの最大の被害者の一人だ。


「あの時の悪夢を思い出したんだよ!! あの時、路地裏に虫型のスポイラーが大量に湧いたのは、機械種(マキナ)の誘蛾灯みたいな個体が中心にいたせいだったろ!! 

だったら今回だって同じだ!!

街の中にジャミングを発生させる能力を持った、機械種(マキナ)のスポイラーが無数に隠れているんだよ!!」


『え……!? スポイラー自体がジャミングの機械……!?』


「そうさ!! だから知らず知らずのうちにそいつらを倒した時は電波が少し弱まって、逆に飛び散ったColor能力の残滓を吸収してレベルが上がった個体が出てきた時は、ジャミングの出力が一気に跳ね上がっているんだ!!」


「なるほど、合点がいった! 発生源が見つからん訳だ、電波塔ではなく動く汚染体そのものがジャミングのソースだったとはな……。

つまり、街中のスポイラーを倒しまくれば、ジャミングは完全に消滅する!」


 全てのカラクリの仕組みが判明し、作戦タイムラインが最速で直結した。


「センジ、ルーキー、聞いたなッ!? 中央公園のライトの修復を大急ぎで終らせろ!!

街中のスポイラーどもをあの光に全部集めて、まとめてスクラップにするんだッ!!」


『了解です、ボス。ルーキー、巻いていきますよ!』


 無線を切ると、私は周囲で固まっていたまだ動けるメンバーに声を掛ける。


「よし、行くわよ!! パッチを張られた人たちの担当以外、遊撃隊の残りと人質救出班は私と一緒に地下鉄の廃車両基地へ!! 最速で人質を引っこ抜きに行くわよ!!」


『応ッッッ!!!』


 防護レインコートを激しく叩く黒い雨の中、周囲のハンターたちは人質奪還及び強襲チームとして新たに組み直し、さらに暗い暗黒の地下へと続く廃駅の階段へ向かって、一斉に大激走を開始する。

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