第42話
「さーて、それじゃあ行きますわよ?」
「こっちも準備OKです。メイカ合図よろしく」
「了解。頑張ってー」
マウンテスの訓練場、私とレティシアさんは向かい合いメイカの合図を待った。マウンスの訓練場は最初の町の訓練場と違って何人かプレイヤーの人たちが居たけど……声をかけたら場所を開けてくれた。この町、対人戦が好きな人多いのかな?
ちなみにルールはスキルあり魔法ありの一本先取。流石に《刺激的な初恋》は使わないけどね……他は使わせてもらおう。
「それじゃあ試合開始。巻き込まれたら死ぬからスタコラサッサ」
最後気が抜ける感じで合図がされ、私とレティシアさんはほぼ同時に動き出した。まずは牽制の魔法を撃ち込む。
「【ウォーターバレット】!」
3発の水の弾丸がレティシアさんへと飛んでいく。それに対してレティシアさんは右足を前に強く踏み込み、腰を捻って……
「どっせいですわぁぁ!!!」
大剣を横にブォォォン!と薙ぎ払った。水の弾丸は剣に触れる前に弾け飛ぶように霧散していく……なんて力技。
「呆けている場合ではありませんことよ?《飛刃》!」
私が力任せの防御にびっくりしているとレティシアさんは大剣を縦に振り下ろして斬撃を飛ばしてきた。大きな斬撃波は地面に深い斬り込みを入れながら伸びていき……観客の近くまで伸びていった。
「おい!危ねぇなレティシア!俺たちを殺す気か!?」
「そんなんだから脳筋お嬢様様って言われんだよ!」
「煩いですわね。文句があるなら観戦してないで逃げてなさい!あと私のことを脳筋呼ばわりしたそこの貴方、後で斬ってやりますから覚悟なさい!」
巻き込まれかけた観客とレティシアさんが言い合いしている中、私はさっきの《飛刃》の距離にビビっていた。《飛刃》は斬撃武器を使うプレイヤーなら持っていて当たり前のスキル。効果についてはMMS対人会の人たちに教えてもらっているんだけど……あれ隠し要素でSTRが高いと飛距離が伸びるらしいんだよね。
(MMS対人会の人たちでもレティシアさんの半分くらいしか飛ばせてなかった。レティシアさんのSTRいくつなの?)
これカス当たりでも大怪我しそう。回避には細心の注意しなきゃだね。と、向こうも言い争いは終わったみたいだね。
「お恥ずかしいところを見せましたわね。それでは仕切り直しといきますわよ!」
レティシアさんはそう言い距離を詰めようとしてくる……が、その動きはちょっと遅い。もしかしてAGI私より低い?
(それなら距離を離しながら魔法で攻めていけば……)
私は《飛刃》に気をつけながら魔法をこまめに撃ち込んでいく。レティシアさんは斬り払ったり、大剣の腹の部分を盾にしたりして防いでいく。
「遠距離攻撃。中々良い戦法ですわ……でも私も遠距離攻撃はありますのよ。【ダークネスバレット】!」
大剣の影からひょこっと顔を出したレティシアさんはこっちに黒い弾を飛ばしてくる。《闇魔法》……いや、多分《闇魔法》の強化した魔法っぽいね。
私は魔法の追加を入れつつ回避しようと引きつけてから横にステップ……しかし黒い弾はカーブして私の方へと向かってきた。
「っ!?【スノーシールド】!」
私は慌てて氷の盾で防御した。何今の……凄いカーブしてきたんだけど。
「闇系統の魔法は初めてのようですわね。闇系統の魔法の特徴は追尾性、ただ避けただけでは何処まで追いかけますわ。特に私の《怨恨魔法》は何かに当たるまで消えませんの」
成程、つまり闇系統の魔法が来たら【スノーシールド】で防げということか。わざわざ特性教えてくれて助かる。まぁ、厄介な魔法には変わりないけど。
「オラオラー!どんどん撃ちますわよー」
「凄い撃ってきた!?」
レティシアさんはさっきのお返しと言わんばかりに【ダークネスバレット】を撃ちまくってきた。しかも簡単には処理できないように広げて。避けるのも【スノーシールド】で防ぐのも悪手、私も【ウォーターバレット】を細かくして撃ち落とすけど、その間に距離を詰められてしまった。下手に動けば弾が動いて当たらなくなるから私は動けないのに……
「捉えましたわ!《剛・一閃》ですの!」
「ひぇ!?」
前へと強く踏み込んだレティシアさんが大剣を横薙ぎに振り切った。私は某フィギュアスケート選手の得意技だったイナバウアーのように身体を逸らして回避した。か、顔の上を剣が通り過ぎていった。とりあえずすぐにバックステップで距離を取って追撃から逃げとこ。
「ぬぅ……手強いですわね。やはり身軽な方はやりにくいですわ」
「し、死ぬかと思った……」
上半身と下半身が永遠のお別れするところだった。接近戦は心臓に悪い!て、そんなことを思ってたらレティシアさんは再び魔法を撃ちながら向かってくる。それ強いからやめてー!
「ふん!せい!《飛刃》!」
「し、死ぬ!死んじゃう!」
最早こっちから攻撃する隙も無い。私は撃ち込まれる魔法を凌ぎ、振られる大剣を避け続けた。《飛刃》は観客の方まで飛んでいって向こうも阿鼻叫喚、
「んー……しかしここまで戦える人とは思いませんでしたわ。貴方、掲示板で有名な誘惑士でしょう?誘惑士でここまでやるとは……驚きですわ」
「え?掲示板で有名ってなんですか?」
「あら?ご存知なかったですの?このMMSでピンク髪、悪魔の角に翼に尻尾の誘惑士って巷では有名ですのよ?」
そうなの!?全然知らなかった……話題ということはモテてるのでは!?
「ちなみに有名になった要因はなんかエロい子が居るでしたわね……あとはそこの生産お馬鹿のパートナーってことですわ」
「おう、誰が生産馬鹿だ。事実ではあるけど言うんじゃない」
なんかエロい子……え、私そういう風に思われてたの?チラッと観客の方を見ると観客たちは一斉に目を逸らした。おい、こっち向け。鼻の穴から強酸流し込まれたい?
「私もβテストのプレイヤー、誘惑士については色々調べておりましたわ。それでもここまで戦えるなら……これを使うべきですわね。《高貴たる力》」
そういうとレティシアさんは剣を構え直して全身に力を込め始める。そしてスキルの名前を言うと全身に黄金色のオーラを纏い始めた。きょ、強化系のスキルかな?
「ちょ!?お嬢!!?それ使うのやめろ!!」
「それ俺たちへも被害が出るじゃねぇか!!逃げろー!!」
ヤバいスキルみたいで観客たちがザワザワし始め、逃げ出す人も居た。そんな観客はつゆ知らずレティシアさんは大剣を高く振りかざす。
「渾身の……《オーラブレイク》ですわ!!」
そうして私との距離が離れているのに大剣が地面へと振り下ろされる。大剣の切先が地面に触れ……そこから黄金色の爆発が私の方へと広がっていく。その爆発に巻き込まれ私は宙を舞った……後ろの観客と一緒に。
「にゃぁぁぁ!?」
「「「ぎゃぁぁぁ!?」」」
こうして模擬戦はレティシアさんの勝ちとなった……なお、最後のレティシアさんの大技で訓練場の地面がめちゃくちゃになってしまい。管理人の人に怒られた……レティシアさんだけ。
「なんで怒られるの私だけですのー!?」
「それ二度とここで使うなと言ったのを破ったからだろうがー!!」
「ご、ごめんなさいですわー!!」
レティシアさんの哀れな悲鳴が訓練場に木霊していった。自業自得とはいえ……可哀想。
《高貴たる力》職業スキル
自分のHPを消費してSTRとINTを強化する
HPの消費量に比例して強化値が変化する
初対面のNPCに距離を取られやすくなる
《オーラブレイク》
近接武器専用スキル
自分に発動している強化を威力に上乗せして放てる
強化の強さ、数に応じて威力が変化する




