第43話
「ひ、酷い目に遭いましたわ……」
「あんな大技ぶっ放すからだよ……βの時も高威力の技使って怒られてたじゃん」
「大技はロマンですの!ロマンを捨ててしまえば私に残るのは美少女エセお嬢様キャラしかありませんわ!」
「自分で美少女って言わない方が良いよ? 安く見られるから」
模擬戦が終わって私とメイカとレティシアさんは訓練場から近くのカフェに移動していた。ここのカフェは温泉の熱を利用したコーヒーやカフェオレが美味しいんだって。確かに美味い……
「そういえば貴方たちはこの後どこの都市に行く予定ですの? この町はメイカが扱うような素材は無いから覚醒玉集めでしょう?」
「そうだね。都市に関してはまだ考えてるね……βの時には情報無かったし」
「次行くところ都市なんだね……」
町より規模が大きそう。色々楽しみだね……食べ物とか。
「でしたら私の持ってる情報を教えましょうか? 模擬戦のお礼に」
「お、良いの?じゃあよろしく」
「なんで戦ってない貴方が返事致しますの……」
「あはは……気にしないでください。私はメイカの行きたいところに行くだけなので」
レティシアさんは私に「苦労してますのね」みたいな視線を一瞬向けた後、都市について教えてくれた。
次の行き先である都市は全部で3つ。魔学都市マギアス、迷宮都市ラビレス、闘技都市ファトス。これが都市の名前。
「あれ? 4つじゃないの? 掲示板だと東西南北にそれぞれあるって話だったけど?」
「あー、それはデマというか勘違いですわね。調べたところによると東の方角にも過去には都市があったようですわ。しかし何かしらの要因で今では完全に放棄……モンスターが巣食うフィールドになってるようですの」
そしてその都市は許可が無いと入れない結界が張られている。レティシアさんの予想だと今後のイベントで使われるフィールドじゃないかとのことらしい。許可の取得方法も現在不明らしいからね。
「そもそもメイカ、貴方βテストでのイベント忘れましたの? あの私たちが地獄を見たイベント」
「あの強酸クソやろうのイベント? あれがどうした…………って、そういえばあいつら来たの東だったね」
「多分、あれも放棄された都市関係だと思いますわ。βテストはこっちでは本サービスの過去の出来事って感じらしいですし、東については今のところ気にしなくて良いですわ」
そしてレティシアさんは本題の3つの都市の話に戻る。レティシアさんは今のところそれぞれの特色程度までは調べてあるんだとか、NPCに変に警戒されるせいであんまり集められなかったんだって……職業スキルのデメリット。
「最初に西の魔学都市マギアス。ここは都市全体が1つの学園のようになっているらしいですわ。プレイヤーも希望すれば生徒になることができて、色々魔法関係の技術を覚えられる……あとは魔道具っていうアイテム作成も盛んって話ですわ」
「次に南の迷宮都市ラビレス。こっちは巨大な地下遺跡の上に作られた都市ですわね。地下遺跡には大昔のお宝が眠っていて、それを回収するトレジャーハントが広く行われているんだとか」
「最後に北の闘技都市ファトスですわね。これは多分察している部分もあるでしょうが対人戦闘が盛んな都市ですわ。大きなコロッセオもあって……私は一先ずここに行く予定ですわ」
以上がレティシアさんによる都市の話。私としてはマギアスが気になる。魔法よく使うから。他2つも気になるんだけどね……
「メイカはどこが気になる?」
「私はマギアスだね。魔道具が生産に役立つか気になる……あと魔法の学園なら薬も調べられるでしょ」
「魔女のイメージありますものね。メイカは魔女って柄じゃありませんけど」
「メイカ、科学者のイメージ強いからね。白衣でも着れば?」
「動きにくいから嫌だ」
とりあえず行き先はマギアスになりそう。そうなるとキララさんのところにいって花の町に向かう感じか……あ、明日にはキララさんのところに行かなきゃだから今日中にフィールドのボス倒してこなきゃ。でもすぐに行けるかな? レティシアさんに聞いてみよ。
「レティシアさん。ここのフィールドボスってすぐに倒せそうなボスですか? 今日中に倒せれば倒したいんですけど」
「ん? ここのボスですの? 他のところのボスを倒せているのでしたら簡単だと思いますわ……何か用事でも?」
私はレティシアさんに明日に南の町の方へ向かうことを伝えた。するとレティシアさんはボスまでの最短経路とボス戦のコツを教えてくれた。かなり価値のある情報で、タダでそんなことを聞いて良かったのかと聞いてみると……
「友達からはお金は取りませんわ。困っていればお互い様ですの」
と、眩しい笑顔で言われた。い、良い人過ぎる。これがお嬢様、悪役要素0。
「お、じゃあ私もタダで情報を……」
「貴方は骨までしゃぶられそうですから別ですわ。ちゃんと対価は頂きますわ」
「この悪役令嬢めー!」
とまぁ、ちょいちょいコントが始まるとけど、こんな感じで楽しいお茶会は続いていった。飲んでるのコーヒーとかカフェオレだから珈琲会?が正しいのかな? ま、楽しければなんでも良いよね。
▷▷▷
月明かりに照らされた谷、その壁面の足場の上に私は居た。風時折吹きつけてきてちょっと怖い……谷の底はゴツゴツした岩場だから落ちたら死ぬね。
「出てくるモンスターは皆、飛行できるから。落下死するのはプレイヤーだけって言うのが嫌らしいよね」
ロックバードとスピードスワロー、ソニックファルコンだったかな? レティシアさんは追尾の魔法があったから楽だったらしいけど……そうじゃないと本当に厄介なんだとか。
そんなモンスターたちだけど全然姿を見せない。シーン……としてて鳴き声も羽ばたく音もしないからね。
「レティシアさんの言ってた通りだね」
ここのモンスターたち、夜の間は巣で眠っているんだって。夜中は特定の行動をしなければボスまでの戦闘せずに行けてしまう。
特定の攻撃も戦闘や採掘、技と大きな音を立てるなど。ここの素材は元々興味無いし、わざと音を立てる気も無い。てわけで私はコソコソと進んでいき一気にボスの居る場所まで来た。
「クルルル……」
「お、寝てる」
ボスエリアは鳥らしい巣。素材が木の枝とかじゃなくて馬車の残骸とかで荒々しさはあるけどね。流石はボスモンスター……
寝ているのは大きなハゲワシ。名前はタイラントヴァルチャー、怪物ハゲワシって意味なのかな?
(こいつは状態異常の耐性が高いらしいね……なら火力でゴリ押すに限る)
私は動作で【ポイズンバレット】を発動させる。狙うは翼……これもレティシアさんからの教えだね。飛ばれると厄介だから先に翼を潰す。
ドス!ドスドス!
「クェェェ!?」
寝ていたところに翼へ氷を突き刺され、ハゲワシは悲鳴をあげた。そして慌てて飛び立とうとしたが上手く飛び立てずに墜落して動けなくなる。そしてその衝撃で目を回している。
「はーい、追加入りまーす」
そんなハゲワシに容赦無く魔法のおかわりを放っていく。もう片方の翼もこれで潰せるかな?
「飛べない鳥なんて動く案山子も同然」
毒も入れて《恋の一撃》のダメージ加速も順調。飛行モンスターは防御力が低いのもあって反撃を受けることもなく無事に討伐できた。羽が沢山手に入ったけど、ハゲワシって腐肉とか死肉を食べる鳥だよね? メイカ嫌がるかな?
「とりあえずこれでボス討伐は終了。明日は溜め込んだ覚醒玉を使う日だね」
いよいよ溜め込んだ覚醒玉が火を吹く時、何を強化しようかな?とワクワクしながら私は町へ静かに戻っていった。




