第38話
「素材集めお疲れ様!これで作曲できるよ!」
「お疲れー……眠……」
ブラッククラウドシープ周回の翌日、私はキララさんに集めた素材を渡しに来ていた。その横ではメイカが欠伸して眠そうにしている。これ徹夜で作業してたね。
(あとでログアウトさせて寝させよう…… )
今までは徹夜させないようにしてたんだけど、昨日一緒に居なかったから徹夜したんだろうね。こういう時は作品の質が悪くなるよ?って圧かけると寝てくれる。メイカにとって作品の出来が悪くなるは効果抜群だからね。
「そしたら作る曲どんなのにしようか?効果とか歌詞によって決められちゃうからさ……ちなみにアカペラしやすい形だとこの辺りになるんだけど?」
「そうですね……確か《歌魔法》って最初は2曲までなんでしたっけ?覚えられるの」
「そうだね!《歌魔法》はちょっと特殊な魔法って扱いっぽくて、《歌魔法》単体だと2曲しか覚えられないんだよ。一応、曲は入れ替え自体はできるんだけど……時間かかるから戦闘中は無理だね!」
あと単純に《歌魔法》は歌詞を覚えていなきゃいけないから、曲数が多いと覚え切れない。キララさんは自分が作った曲は全部覚えているから《楽曲記憶》、《歌い手》なんかで《歌魔法》の枠を増やしている。
そもそもキララさんは《歌魔法》は強化して《歌唱魔法》にしてるから覚える数がかなり多いんだとか。流石、音楽ガチ勢……音楽関係ならプレイヤーでも独走していそう。
「そうしたら効果はこれとこれで……ちなみにどんな曲になります?」
「若干暗めにはなるね!とりあえずモモカちゃんが歌いやすい曲にはするよ……ちなみにNGワードってある?割となんでも歌詞に入れちゃうからさ!ちょっと世に出せない歌詞の曲もいくつかあるし……」
「それは作った意味が無いのでは?」
発表できない曲とか逆に気になる。でも多分そっち系なんだろうなぁ……うん、忘れよう。
「とりあえず1個は失恋系にしようかな?それが得意曲っぽかったしね!もう1つはどうする?」
「じゃあ……こういう風にできます?」
「おー、良いね!じゃあそういう方向性で作るよ!」
曲の方向性は決まった。ここから2日かけて曲の基礎を作成、音程とかの軽い調整とかを考えると4日は時間が欲しいとのこと。まぁ、そんな簡単に曲が作れる訳ないよね。作っている間は自由にしてて欲しいってことだけど、待ち時間は他の町に行ってボス退治かな?
(その間にボイトレとかして鍛えておこう)
連絡できるようにキララさんとフレンド登録をし、作業の邪魔にならないように建物を出た。
「そしたら次はどこの町に行く?近さ的には東の町?」
「そうだね。とりあえず東、北で最後に中央よりつつの南かな?」
なお、あの馬車を使うため攻略時間を踏まえても割と余裕で行けるんだとか……そりゃあの馬車を使えばね。あれ使う人が全然居ないのか、馬車乗り場に行けばすぐに乗れちゃうからね。待ち時間0で。
(今度こそ馬車酔いに勝つ!)
なお、結果としてまた酔いました。遠くの景色をひたすら見るを試したけど……あの振動で遠くを見続けるなんて無理だね。隣で爆睡こいてたメイカが改めて凄いと思った。
「道も後半凄い悪かったし……後半で凄いダメージ食らった」
「そりゃ荒野の町だからね。ちなみにここから北への道の方が悪いよ」
「私を殺しにきてる?」
北行きたくなくなるんだけど。まぁ、覚悟だけは決めておこう……そうしたらダンジョンに行こうかな?えーと、ここのダンジョンは確か獣系が出てくるんだったかな……
「ねぇ、ここのダンジョンってさ。南にあった方が良かったんじゃ?」
「まぁ、種族統一するならそうだね。でもここのダンジョンと南のフィールドじゃ求められる素材が違うんだよね」
なんでもこっちのダンジョンで出てくるのは角や爪、骨を素材として落とすモンスターが多い。南は皮や毛、肉を素材として落とすモンスターばかり。確かに素材という点では求められているのが違うね。
ちなみに素材の方は特に必要無いとのこと。この辺の素材は使う予定無いらしい。
「ちなみにこの町、西部劇っぽい町のせいで酒メインでご飯美味しくないんだよね」
「よし、さっさと攻略して次の町に行こう」
「ご飯そんなに大事?」
そりゃ楽しみの1つですから。美味しいものないなら興味無いです。このゲーム、未成年はお酒飲めないから尚更ね。
「それじゃあ私はダンジョン行ってくるから……ログアウトして寝てね?」
「いや、さっき馬車で寝てたから大丈……」
「ちゃんと寝てね?」
「……はい」
私は念押ししメイカがログアウトするのを確認してからダンジョンへと向かった。
▷▷▷
獣の迷宮。ここは生垣の迷路だった花の迷宮、アリの巣穴だった虫の迷宮とは様相がかなり違った。
「通路の無いダンジョンとは聞いてたけど……本当に開けてるね」
目に入るのはサラサラの砂地。上は岩の天井だけど、まさに砂漠のような場所……これが獣の迷宮。壁を取り払った広大なフィールドがスポンジケーキのように5つ積み重なったダンジョン。
(先に進みやすくはあるけど……足元が砂だとちょっと歩きにくい)
いつもの感覚で動こうとすると踏み込みが上手くいかない。魔法と蹴りの二刀流だから良いけど……近接メインの人はだいぶ苦労しそう。
「ヂュウ!」
「あ、これ遠距離面倒だね……小さい相手はちょっと辛い」
獣のダンジョン最初の相手は砂色のネズミのモンスター。大きさは中型犬くらい……大きいと言えば大きいんだけど、基本的に現実の動物モデルのモンスターって元よりサイズ大きくなってること多い。それらと比べると小さいなぁ……
「ヂュウ!」
ネズミは軽やかな動きで砂の上を駆け回って近づいてくる。指を向けて狙いを付けるけどちょこまか動いて狙いにくい。
「なら動きを制限しよう。【アイススパイク】」
「ヂュウ!?」
私は氷の棘でネズミの進行方向を制限。驚き動きが遅くなったところを動作で発動させた【ウォーターバレット】で撃ち抜いた。
「ヂュウ……」
「小さくて速いなら耐久は無いと思ってたけど正解だったね」
ただやっぱり速い相手はちょっと苦手。うーん、ここのダンジョンで少し慣れとくかな?この先、素早い相手と戦う機会なんていくらでもありそうだし。
「ガンマンの早撃ちみたいに撃てたらカッコいいだろうからね……よし、頑張ってやってみよう」
回復薬も充分あるし、苦手克服頑張るぞー。




