第35話
8/19 一部変更しました。ストーリーに大きく関わる部分では無いので読み直さなくても大丈夫です
「キャイン!?」
「はい、これでお終い」
私の蹴りを横っ面に食らったオオカミが地面に倒れて消えていく。丘陵地帯ボス討伐完了……えっ?ボスとの激闘の様子?そんなの無いよ。
(むしろ1番弱かった……)
ボスより道中のオオカミの群れの方が面倒だったね。ここのボスもオオカミだったんだけど……何故か1匹だけ。
しかも特殊な能力も無く、咆哮がうるさかったぐらい。毒で弱らせ動きが鈍くなったところを蹴っていったら勝ったからね。
「とりあえずこれで目的達成」
今回集めた覚醒玉3つの使い道はまだ決めてない。魔法の強化に使っても良いけど、多分消費MPが増えて逆にマイナスになりそうだから違うやつに使おうかな。今のところ《回避》《舞踏》《蹴術》辺りに使いたい。
「集める予定の9個の覚醒玉は基礎を固めるのに使うとしよう」
メイカが最初の頃にスキルは12個くらいにするのが良いっていうのも、最初の町周辺で集められる覚醒玉が全部で12個ってことが関係してそう。
「さーて、それじゃあメイカのところに行きますか……そして移動か」
移動。またあの馬車かな……あれ乗りたくないんだよね。しかも3回は乗るの確定してるし。
「酔い対策に色々調べてきた……それが効くと良いんだけど」
なおゲームの中なので効かない可能性があるものとする。車酔い関係ってツボとかもあるからさ……ゲームの肉体にそれ効くのか分からない。プラシーボ効果に期待かな?
私は迫り来る馬車への憂鬱を押し殺しメイカの居る生産室に向かった。流石に移動前だから片付いてるよね?
「ボス倒して来たよ……って何読んでるの?」
「おかえりー。あー、これ?これは情報系の集まりから買ったスキルの資料だよ。ちょっと調べ事頼んでたから」
情報系の集まり。MMS対人会みたいなプレイヤーの集まりかな?MMSの情報を集めてる集団的な。
「スキルって何のスキル?生産系?」
「いや、これはモモカに勧めようかなってスキルだね。読んでみる?」
メイカは手に持った紙を渡してくる。受け取って読んでみるとスキルの名前は《歌魔法》というスキル。説明文はこんな感じ。
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《歌魔法》
魔力を乗せた歌によって効果を発揮させる魔法
歌う歌により効果が変化し、歌が長いほど効果をより発揮する
声に出してしっかりと歌わなければ効果は発揮しない
ーーーーーー
ふむ、なんか変わった魔法だね。癖が強いというか……何でこれを私に?ドレミさんとのレッスンでも歌を歌ったけどさ。
「アイドルになるつもりは無いよ?」
「それは分かってる。単に勧めたいのはこれがメイカと相性良さげだったから」
そうなの?なんか説明だとよく分からない感じなんだけど?
「この前のスキルガチャでさ《美声》ってスキル手に入れたじゃん。他のスキルは大体勝手に発動しているけど……あれだけ効果発揮させにくいでしょ?」
「確かに」
あれは声を聞かせた相手の気を引きやすくできる。でも戦闘中にそんなことをするの難しいからね。魔法も短い発声しかしないし。その点、《歌魔法》は長く声を聞かせられる……確かに相性良いな。
「声関係だと《大声》ってスキルで声の範囲を拡大できるし。ちなみに《歌魔法》は歌が聞こえてれば効果発揮するし」
あ、思ってたよりも強かった。ただし欠点としては効果が歌によって変わること。そして歌を作るには《音楽》というスキルが必要だということ。そのせいでβの時には産廃スキルと呼ばれてたとか……そんなのよく勧めようとしたね。
「私、歌とか作れないんだけど?メイカが作るの?」
「いや、流石に私も歌は専門外。興味自体はあるけど」
じゃあどうするの?って話だけど、これに関しては専門家が居るらしい。ドレミさんの知り合いで《音楽》スキルを持っている人が居て、丁度その人がこれから向かう町に居るんだとか……
「仕事が落ち着いて今はログインしているらしいからね。ドレミさんから話は通して貰ってあるし……とりあえず会ってみるかな」
「了解」
ということで私とメイカは早速新たな町……南にある草原の町グラシスへ。
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草原の町グラシス。モンゴルのゲル?だったかな。白い円形の建物が立ち並んだ町。若干村っぽいと思ったのは内緒。
「放牧的な雰囲気で気分が落ち着く……ウッ!」
「まだ慣れないんだ。モモカそんなに乗り物弱かったっけ?」
あの馬車を乗り物扱いしないで欲しい。私は残留する酔いを堪えながらそう思った。調べた方法効かなかった……また新しい酔い対策を考えなきゃ。
「さてここでの目的だけど変わらず覚醒玉集めをよろしく……で、余裕があったらダンジョンで集めて欲しい素材あるんだよね」
「素材?具体的には」
「羊毛だね。ここのフィールドには羊のモンスターが居るんだよ……正直ウールは使い道が少ないけど、裁縫で使えるものは欲しいからね」
了解。気分良くなったらちょっと行ってくるよ。だいぶ治りつつあるし、やっぱりこの町はのびのびした感じで落ち着……
ジャン!ジャン!ジャン!ジャァァァン!!
……なんか雰囲気ぶち壊しな音が聞こえてきた。この音、多分だけどギターだよね?
「ねぇ?もしかしてこの音って……」
「探している人だね。予想はしてたけど相変わらずか……」
メイカはやれやれと言わんばかりに肩を竦め、音のする方へと歩いていった。私もその後に続いてアンマッチなギターの音の源へと向かっていった。
雰囲気をぶち壊しているギターの音に近づくにつれて歓声の声も大きくなってくる。滅茶苦茶盛り上がってる……そうしてライブ会場のように盛り上がっている広場に着いた。
「私の歌を聞きやがれー!そんで声を上げろー!」
「「「「フゥゥゥゥゥ!!!」」」」
ギターをかき鳴らすは黒髪の女性。黒い長い髪には星型のアクセサリーが沢山付けられていて、手には古めかしいアコースティックギター……待って、何でそのギターでエレキみたいな音が出てるの?
「おー、聞いてた通りの見た目だね」
「ということはあの人が?」
「そう。キララさん……音楽を愛し、音楽に人生を平気で捧げる人だよ」
私は目の前で盛り上がっているライブを見ながらメイカの紹介を聞く。とりあえずライブが終わるまで待ちだね……お、屋台出てるから何か買ってこよう。ここのご当地グルメは何かな?




