第3話
草原に来て1時間くらい。私とメイカは次々とモンスターを倒していった。スライム以外には角が生えたウサギのホーンラビット、カブに小さな手足が生えたマンドラモドキが出てきたけど。特殊能力無しのため割愛。今話せる状況じゃないし……
「は、吐きそう……」
「安心しろどれだけ苦しくても吐くことは無い。だから飲め」
その1時間の間に飲んだMP回復薬の本数は14本……気持ち悪いのに飲ませようとしてくるメイカにキレそう。
「は、吐かないならなんで気持ち悪く……」
「このゲーム、プレイヤーの強化方法が装備、魔法、薬で1番楽なのが薬。飲む量を制限しないと悪用し放題だからね」
成程ね……それなら納得。ただMP回復だけでこうなるのは早々無いんだとか。私がこうなっている理由は……
「思っていた以上にモンスターが寄ってきた。《誘惑》効き過ぎ」
戦闘が全然終わらない。経験値は稼げるけど魔法を撃ちまくってすぐにガス欠、それを回復させるために飲んでを繰り返してこの状態。胃袋の容量が減る前に飲んでいったからね。
「この草原のモンスターたちはCAMが低いからって可能性が高そうかな?にしても多かったけど……lv今どんくらい?」
「5……戦った割には上がってないよね?」
「そりゃ、草原の敵なんて雑魚ばっかりだからね……むしろ1時間で6まで上がってるのが凄いわ」
普通だとlv4になったら狩場を変えるらしい。そっちの方が効率良く経験値を稼げるし、高く売れる素材も稼げる。ここのモンスターの素材は生産でもあんまり使われないみたい。
「とりあえず1回町に帰ろうか。薬買い足したいし……動けば胃の容量も減るよ」
「分かった……」
私も気持ち悪さに耐えながら町に向かって歩き始めた。メイカの言う通り歩いているとジワジワと気持ち悪さが減っていき、町に辿り着いた時には大分楽になっていた。それでも気持ち悪いことには変わりないけど……
「これどうにかならない?」
「楽な方法は《大食い》かな。胃の容量が増えるから割と有用。満腹度の上限もちょっと増えるし」
「あ、このゲーム食事の概念あるのね」
ゲームだから無いと思ってた。この辺はステータスで表示もされないから空腹感で把握するしかない。戦闘中に空腹感あるのだいぶ辛くない?
(これ《大食い》って中々必須のスキルでは?)
確かスキルはお店で買えるから値段見て買えそうなら買おう。私もメイカもお金無いけど……
「そういえば素材はどこで売るの?」
「売るのは総合ギルドって場所だね。本当なら戦闘行く前に寄るのが正規ルートなんだけど……サービス開始後は混むから後回しにしてた。今ならだいぶ空いてる筈」
総合ギルド……冒険者ギルドとかじゃないんだね?私がそう思ったのを悟ったのか、総合ギルドまで行く道中メイカが総合ギルドについて教えてくれる。総合ギルドは戦闘と商業の2つの機能を持ったギルド。あながち冒険者ギルドも間違ってはないらしい。
「モモカが利用するならそっちがメインだろうしね。依頼を受けてのお金稼ぎとランク上げ。ランクはスキルの購入にも影響あるから上げとくと良いよ」
「へー、《大食い》は今は買えないってこと?」
「いや、《大食い》は制限無かった筈……え、本当に買うの?」
メイカに呆れられつつも説明は続く。私が利用できる機能としてはあとは素材の売却とかアイテムの購入だけど、これは全部メイカに渡すから利用しないかな?薬とかも用意するって言われてるし。
メイカの方は商業の方を利用。生産用の部屋のレンタルや作ったものの販売。基本的には生産部屋に篭るって言ってたね。
「と、ここだね。スキルのお店は左にあるよ」
説明が丁度終わったところで総合ギルドに到着。中に入ると人はあんまり居なかった。
「ギルドに登録したら後は狩りに行くだけだからね……限界まで狩るまで戻ってこないプレイヤーが多い」
「成程ね」
その後、私たちは総合ギルドに登録した。ランクは1つ星……ランクを上げていくと星の数が増えていく仕様。最高は7つ星。
「さてと、それじゃあこれからの方針を伝えるね。モモカには素材集めをしてもらう。その間に私は生産でも依頼があるからこれで本サービスの生産の仕様を確認しとく」
「了解。ちなみにどこで何を集めてくれば良いの?」
私はノータイムで返事をして指示を待つ。メイカにお願いされた素材は3つ。1つ目はマンドラモドキの搾り汁で既にいくつか手持ちにある。2つ目はキュア草でこれは南西にある森に生えてる。青い花が咲いてるらしいから見つけやすい筈。最後に3つ目にポイズンビーの毒針、これも南西の森に居る……
「え、毒持ったハチと戦うの?数でボコボコにされない?」
「巣の近くじゃなきゃ平気。巣の近くは羽音が煩いから分かるはず」
ちなみにいつかは巣に突撃させると告げられた。い、行きたくないなー……メイカのことだから突撃させても大丈夫って判断してからになるだろうけど。
「とりあえず今集めてきた素材で不要な物を売ってMP回復薬を買い足そう。あと私のHP回復薬渡しとく」
それとMPが無くなった時用にバットも持たされた。このバット、武器系スキルが無くてもそこそこの威力が出せるから割と有能なんだとか。
「バット……私の初バッティングセンターがどうだったか忘れた?」
「20球中2ゴロだったね。1番遅い80キロの速さで」
本当の試合だったら6アウトですよ。そんな私がバットを扱えるか……私は森に行く前に不安が募っていった。
▷▷▷
「あー、怖いなぁ……1人で毒蜂相手にしなきゃいけないの……本当に怖いなぁ」
バットを握り私は森へと入っていった。町から森までは歩いて20分弱……真っ直ぐ来たから無事に来れたね。何匹かスライムを叩き潰してきたけど……
「STR同じくらいの筈なのに私は3発必要だったね」
なお、叩き心地は意外と悪くなかった……ストレス溜まったらまた叩きに行こうかな。ちなみにマンドラモドキに関してはこの森にもいるらしいから草原で探し回らなくて済みそう。
ちなみにギルドの方で依頼も受けてきてる。指定されたモンスターを討伐するだけの依頼で、倒せば倒すだけ稼げるやつ。ランクはこういうので上げてかないと……
「ドラァ!」
「と、早速出てきたね。丁寧に鳴き声出して」
森を歩いているとマンドラモドキが出てきた。見晴らしが悪くて不意打ち怖かったけど、鳴き声で来ること教えてくれて助かった。私はバットを握りしめて構える。魔法は使わない……魔法はできるだけポイズンビーに使いたい。
「ドラァ!」
「せい!」
小さい足でテケテケと駆け寄ってくるマンドラモドキに私はバットを叩きつける。ドコ!と音と硬い感触がしてマンドラモドキの身体が欠ける。
「ドラァ!……ドラァ!?」
殴られて地面を転がったマンドラモドキは起き上がろうとするが、短い手足かつ欠けてバランスが悪くなってうまく起き上がれなくなっている。私はゆっくりと近づいて再びバットを振り下ろす。最初の一撃でヒビが入ってたのか綺麗にパカっと割れていった。
「スライムに比べると割りやすかったね……衝撃に弱いとかなのかな?」
とりあえずこれで搾り汁ゲット。これ集めてって言われてたけど……何に使うんだろうね?カブだかダイコンだか分からない生物の汁なんて。
「頼まれたからには集めるけどね……それが役目だし」
あ、キュア草も探さなきゃ。これはモンスターじゃないからね……とりあえず足元探してみるか。
「あ、これかな」
地面を見て回っていると桔梗みたいな青い花を見つけた。根っこから引き抜けば良いって話だったね。
「お、簡単に抜けた」
キュア草はそこまで力を入れなくてもスポッと抜くことができた。引き抜いたら光になって消えていったけど、ストレージにちゃんと入ってた。自動で送られるの便利だね。
「あ、こっちにもある。結構生えてるみたいだね」
意外とキュア草は生えているのか探すと沢山見つかった。メイカから数については言われてないし……《誘惑》でモンスターが寄って来るのを待って、それ以外はキュア草引っこ抜こう。
(こうしてればポイズンビーも忘れられるしね……)
まぁ、遭遇するまでの現実逃避に他ならないけども……私はスポッスポッとキュア草を引き抜くながら小さく溜め息を吐いた。




