第2話
「なんか……凄い視線を感じる」
時計塔に向かっている私はチラチラと感じる視線にそんなことを考えた。道を歩いているとプレイヤーらしき人とすれ違うんだけど……なんか服が違うんだよね。
旅人っぽい服なのは変わらないんだけど、あっちは長袖長ズボンの革靴。私はというと半袖ヘソ見えの服に太ももの半分ぐらいのズボン、靴は革紐のサンダルと肌の露出面積が多い。もしかして私の服装変?
(芽衣会ったら聞いてみるか……)
そう思っているうちに時計塔に到着。確か南側の方で一目で分かるように待ってるって言ってたけど……
「ん?もしかしてあれ?」
私がキョロキョロと探しているとデカい立て看板を持った緑色の髪の人を見つけた。立て看板にはこう書かれていた。
『待ち合わせ中。残念ピンク早よ来い』
(い、行きたくないなぁ……)
目立つにしてもやり方あったでしょ。悪目立ちしてるよ……ちなみに残念ピンクっていうのは私の渾名。芽衣しか使ってないけど……由来は私の恥だから言わない。
「行くしかないか……」
私は覚悟を決めて緑ヘアーに近づいた。ある程度近づいたら向こうも私に気づいたようで……
「遅かったね。残念ピンク」
「黙れ。鬼畜グリーン」
私たちは互いに嫌な渾名で呼び合った。私の方が看板でよりダメージ喰らってるせいで対等なダメージじゃないけど……絶対に分かっててこの看板用意したな。
「というかどこでその看板を手に入れたの?」
「あー、これ?これはメニューから取り出せる待ち合わせ用の看板。フレンド登録してない相手とはメールが使えないからね……メール使えない相手と待ち合わせしたり、臨時でパーティー組むようであるんだよね」
「へー……で?その看板に私の嫌な渾名を載せたのは?」
「分かりやすさと嫌がらせ」
よし、1発ビンタさせろ!私は頬を膨らませながら芽衣を追いかけた。芽衣は看板を抱えたまま広場を逃げ回る……その後私は1発もビンタすることもできず、2人して周囲の目線に耐えれなくなって広場の端っこに移動した。とりあえずフレンド登録しとく、これでいつでも連絡できる。
「名前……モモカってそのまんま過ぎない?」
「そっちこそ。メイカって一文字足しただけじゃん……」
私らネーミングセンス無いからね。その結果があの渾名だし……ある意味似た者同士。
「ところでさ?ずっと聞きたかったんだけど……職業誘惑士選んだ?」
「うん、そうだよ。それ聞くってことはやっぱり私の服装が他の人と変なのって……」
「誘惑士のせい。初期装備の見た目が変化する職業で露出が増えるのはそれしかない」
あ、他にも服装が変わる職業あるんだね。私がそう思っているとメイカの顔が何やら悩ましそうにしているのに気がついた……もしや。
「誘惑士って……弱い?」
「弱い。というか欠陥職過ぎて誰も使ってない」
「そんなに?」
めちゃくちゃボロカスに言われた。理由を聞いてみると、誘惑士は魔法系職業の癖に敵に狙われやすいのが良くないらしい。あと職業スキルが弱過ぎるとか。
「《恋の一撃》とか強そうだけど?」
「これCAM50につき1ダメとかだから。蚊に刺されたようなもんだよ?」
あとそもそもこのゲームにおいてCAMが弱い。攻撃にも防御にも活かされないから戦闘職に1番必要無いステータス……そりゃボロカスに言われますわ。
「というかなんでこれ選んだの?モモカのことだから普通に魔法使いとかだと思ってたんだけど……」
「AIに目立てる職業って聞いたらこれが出てきたから。戦闘職だったし」
「多分それ『モンスターに目立てる』って解釈されてるね……」
モンスターに目立てる……私、人に目立ちたかったんだけど。伝え方がフワッとし過ぎてたかな?
「その様子だとステータス見てないでしょ……一緒に確認してあげるから開いてみて」
私はメイカに促されてステータスを開いた。ちなみにステータスは自分かフレンド登録した人しか見れない。
◇◆◇◆◇◆◇◆
モモカ
誘惑士lv1
・基礎ステータス
HP:30/30
MP:70/70
STR:10
VIT:10
INT:30
MID:10
AGI:10
CAM:30+3
・職業スキル
《誘惑の香り》《恋の一撃》
・自由スキル
《水魔法》
水属性の魔法が使用可能になる
《回避》
相手の攻撃を避ける際
タイミングが良ければ一瞬無敵になる
《カリスマ》
自分の基礎CAMを10%上昇させる
・使用可能魔法
【ウォーターショット】消費MP:10
水の弾丸で攻撃する
◇◆◇◆◇◆◇◆
「わぁ、ビックリするぐらい弱い」
「真顔かつ感情の無い声で言わないでよ。怖い」
ちなみに弱い点は防御面。10って最低値なんだってさ……あとCAMが《カリスマ》のプラス分を入れても50超えてないから《恋の一撃》が1ダメしか入らない。
「これが火力の出る《火魔法》とかならまだしも……《水魔法》か」
「これも弱いの?」
「いや?魔法は長所短所があるくらいで弱いとかはないかな。《水魔法》は汎用性高い方だから……それなりに賢いモモカなら大丈夫でしょ」
「それなりは余計」
なお《回避》に関しては何も言われなかった。これに関してはリズム感があれば誰でも扱えるから……褒められる点があって良かった。
「とりあえず戦闘しに行こうか……立ち話してても時間の無駄だし」
「あれ?メイカって生産職でしょ?戦う必要あるの?」
生産職はアイテムの生産でも経験値入るって言ってたはず。私を誘ったのも生産の素材を集めてもらうためだったし。
「あー、確かに生産職は戦う必要無いけど。戦闘した方がlv上げの効率良いんだよね。ステータス高い方が良いもの作れるし」
ちなみにメイカの職業はメイカー……ダジャレ?って言ったら無言で脇腹に拳を食らった。普通に痛い……
真面目な話をするとメイカーは色んな生産ができる万能職。下手に手を出し過ぎると器用貧乏になるらしいけど……メイカならそういう心配は無さそう。この物作りジャンキーには。
「さっさと買い物して外行くよ」
「OK。道案内よろしく」
私は歩き始めたメイカの後をついて行った。
▷▷▷
町の外。そこは広い草原。出てくるモンスターも弱い相手ばかりで戦闘に慣れるには丁度良い場所……以上メイカの説明でした。
「とりあえずモモカは買い込んだMP回復薬使い切って良いから魔法撃っていって。私はこれで戦うから」
「了解。でも……それで戦えるの?その木製バットで」
「問題無し。どんな生物も殴れば殺せる」
バットを冷静な目で見つめるメイカがこわかった。てか発想が世紀末……私がそう思っているとガサガサと草が揺れる音がして私たちの眼の前何かが飛び出してきた。
「「「ピュキ!」」」
現れたのは楕円形の水饅頭……これはスライムってやつかな?それが3匹か……多くない?
「これモモカの誘惑の効果かな……とりあえず援護よろしく」
メイカはそう言ってバットを持って駆け出していった……戦闘職じゃないんだよね?とりあえず私も戦おう。
魔法の使い方はシンプルで使いたい魔法を思い浮かべ、魔法の名前を言えばOK。イメージがあやふやだと狙いがズレたり、そもそも発動しなかったりするから注意。これもメイカからの教えだね。
「【ウォーターショット】」
私はスライムに手を向けて魔法を発動する。掌に青い魔法陣が出現し、水の弾丸がスライムへと放たれた。
「ピュキ!」
スライムは怯んだような鳴き声を上げた。一撃じゃ倒せないか……あと狙いが少しズレた。イメージが上手くできてないってことだね。
「ならこうやって」
私は右手を握り親指と人差し指だけを伸ばした。そして人差し指をスライムに向けて魔法を発動させる。
水の弾丸は本物の銃弾のように真っ直ぐ狙った場所へと着弾した。うん、こっちの方が狙いをつけやすい。2発目を受けたスライムはクタッと潰れていって光に変わった。無事に倒せたね。倒すと素材が手に入って、それは自動でストレージってところに送られる。容量無限だから溢れる心配は無い。
「というか2発でやっと倒せる感じか……薬結構飲まなきゃかな?」
私とメイカの準備金である2500G。2人分で5000GでHPとMPの回復薬を買った。どちらも1本250GでHPは4本、MPは16本……胃が死ぬ。回復量50だから回数嵩みそうだし。
「てか向こうはどうなって……」
「はい、ホームラーン」
「ピュキィィ……!」
私がメイカの方を見るとスライムが放物線を描いて飛んでいった。地面に落ちる前に光になってたね……生産職?
「「ピュキ!」」
「わっ、追加来た」
私がメイカの攻撃に呆けかけていると追加のスライムが出てきた。スパンもう少し取って欲しいな……そう思いながら私は指をスライムへと向けた。




