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追放令嬢の【ドラッグストア工房】〜ヘタレ法務監査官が悪知恵と法律で敵を論破し、実は最強の氷魔法で私を過保護に溺愛してきます〜  作者: 月神世一


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理不尽な要求と偽造書類。震える私を抱き寄せた監査官は、かつてなく冷酷な笑顔を浮かべました

理不尽な要求と偽造書類。震える私を抱き寄せた監査官は、かつてなく冷酷な笑顔を浮かべました

「おい、ここが噂の『セリア薬局』か! さっさと責任者を出しな!」

下品で傲慢な声とともに、セリア薬局の木製の扉が乱暴に蹴り開けられた。

ドカドカと土足で踏み込んで来たのは、高価だが悪趣味な装飾品をこれでもかと身につけた恰幅の良い中年男と、武装した十数人の私兵たちだった。

「ひゃっ!?」

店内で品出しをしていたセリアは、突然の乱入者に身をすくませた。

彼らの胸元や腕の腕章には、ルナミス帝国でも悪名高い『ゼルバ商会』の紋章が刻まれている。

「お前がセリア・フォン・アルバーンだな? 追放された罪人の分際で、こんな辺境で生意気に小銭を稼いでいると聞いたぜ」

ゼルバ商会の会長、ゲルトは、まるで虫ケラを見るような目でセリアを鼻で笑った。

「あなたたちは……。営業中ですので、乱暴な真似はおやめください」

セリアは震える膝に力を入れ、気丈に言い返した。患者のために作った大切な店を、土足で汚されるわけにはいかない。

「ハッ、営業中だと? 笑わせるな。お前のままごとみたいな商売は、今日、この瞬間をもって終了だ」

ゲルトは懐から、仰々しい王家の紋章が押された羊皮紙を取り出し、セリアの目の前に突きつけた。

「よく見な。アルベルト王太子殿下からの直々の『接収命令書』だ。このポポロ村の薬局、ならびに全ての特効薬のレシピを、国営事業として直ちに我がゼルバ商会に引き渡せとのお達しだ」

「そんな……! いくら殿下の命令でも、他国との緩衝地帯であるこの村で、個人の財産を不当に奪うなんて……!」

「不当だと? 勘違いするなよ、元令嬢」

ゲルトはニヤリと下劣な笑みを浮かべ、今度は別の一枚の書類を取り出した。

「お前の実家、アルバーン伯爵家はな、王太子殿下を毒殺しようとしたお前の不祥事のせいで、あちこちから賠償を請求されて首が回らなくなっててな。俺たちゼルバ商会が、温情で金を貸してやってたんだよ。ほれ、これがその『借用書』だ。金額は……金貨五万枚。到底返せる額じゃねぇな?」

突きつけられた借用書を見て、セリアは息を呑んだ。

(金貨五万枚!? いくらなんでもそんな大金、伯爵家が借りるはずがないわ。それに、このサイン……お父様のものじゃない。偽造だわ!)

「偽物です! こんなの、でっち上げの借金じゃないですか!」

「口の減らない女だ。いいか、書類が本物かどうかを決めるのは、権力を持ってる俺たちなんだよ!」

ゲルトが怒鳴ると、周囲の私兵たちがニヤニヤと笑いながら武器に手をかけ、セリアをじりじりと包囲し始めた。

「借金のカタとして、この店とレシピは俺が頂く。おまけに、お前自身も我が商会の『無給の専属薬師どれい』として、死ぬまで薬を調合させてやる。殿下の温情に感謝するんだな!」

ゲルトが太い腕を伸ばし、セリアの腕を掴もうとした——その瞬間。

「……触るな」

凍りつくような、絶対零度の声が店内に響き渡った。

「あぁん?」

ゲルトが不快げに振り返るよりも早く。

スッ、とセリアの視界を遮るように、長身の背中が割り込んだ。

「クロード様……!」

いつものパリッとした法務監察官の制服に身を包んだクロードが、セリアの肩を庇うように優しく抱き寄せた。

その手はひどく温かく、力強い。セリアの震えは、彼に触れられた瞬間にピタリと止まっていた。

「なんだテメェは。すっこんでろ、ひ弱な役人風情が。俺たちは王太子殿下の名代として来てるんだぜ!」

ゲルトが凄むが、クロードは眉一つ動かさない。ただ、その青い瞳には、吹雪のように冷たく、昏い怒りが渦巻いていた。

「……セリア嬢。少し、耳を塞いでいてください。聞くに堪えない俗物の声で、あなたの耳が穢れます」

クロードはセリアに優しく囁くと、ゆっくりとゲルトの方へ向き直った。

「ルナミス帝国法務省所属、地方監察官のクロード・ランカスターです。……なるほど、王太子殿下の命令書と、莫大な借用書ですか。見せていただきましょう」

クロードはゲルトの手から二枚の書類をひったくると、冷ややかな目でサッと目を通した。

「……ほう」

クロードの唇が、三日月のように吊り上がる。

それは、かつてないほど冷酷で、獲物を前にした悪魔のような微笑みだった。

「王太子の私印が押された命令書。確かに本物のようですが……法務省の承認印がない。つまり、国家機関を通さない『ただの私的なお願い』の紙切れですね。法的拘束力はゼロです。鼻をかむ紙にもなりません」

「な、なんだと!?」

「そしてこちらの借用書ですが」

クロードは偽造された借用書を指先で弾いた。

「インクの定着具合から見て、書かれてから数日しか経っていませんね。アルバーン伯爵のサインの筆跡も、意図的に真似た痕跡が残る三流の偽造品です。……それに、法外な利息が設定されている。これは利息制限法を完全に無視した違法契約です」

クロードの流れるような論理的指摘に、ゲルトの顔がピクッと引き攣った。

「うるせぇ! つべこべ理屈をこねやがって! 俺たちはゼルバ商会だぞ! 王都で俺たちに逆らって無事で済んだ奴はいねぇんだよ! おい野郎ども、この生意気な役人を黙らせろ!」

ゲルトの号令で、私兵たちが一斉に武器を抜いてクロードに襲いかかろうとした。

「クロード様、危ないっ!」

セリアが悲鳴を上げる。

だが、クロードは動じない。彼は懐から分厚い『六法全書』を取り出すと、わざとらしく大きなため息をついた。

「……はぁ。本当に、野蛮な真似は嫌いなんですがね。胃がキリキリと痛みますよ」

クロードが呟いた直後。

「おいおいおい、うちの看板娘に手ぇ出そうとは、ええ度胸しとるやないか!」

店の奥から、ニャングルが愛用の魔導黒檀算盤を担いで悠然と現れた。

その背後には、マンミアをはじめとするポポロ村の重武装した自警団が、ずらりと武器を構えて控えている。

「な、なんだお前らは!」

私兵たちが怯んで足を止める。

「ワイはゴルド商会のニャングルや。……ゼルバのおっさん、相変わらず汚い手ぇ使いよるな。せやけど、今回は相手が悪かったな」

ニャングルはニヤリと笑い、クロードにウインクを送った。

クロードは六法全書を開き、冷酷な宣告を開始する。

「ゼルバ商会会長、ゲルト。ならびにその私兵たち。

帝国法第214条『有印私文書偽造行使罪』。

同第118条『恐喝未遂』。

同第42条『不当要求行為』。

そして……正規の法務監察官に対する暴力行為および公務執行妨害」

クロードの声が、刃のようにゲルトたちを切り刻んでいく。

「あなた方がたった今おこなった行為は、すべて帝国法における重大な犯罪行為です。……なるほど、全面戦争をご希望ということですね。法務省を、そしてこの私を敵に回したこと、たっぷりと後悔させてあげましょう」

クロードの静かで恐ろしい宣告に、ゲルトはついに顔色を青ざめさせた。

力には力ではなく、圧倒的な『法』と『知恵』による完全包囲。

お人好しな薬剤師を守るため、ヘタレなはずの監査官が、今、容赦のない【リーガルざまぁ】の牙を剥いた。

第8話をお読みいただき、ありがとうございます!

ゼルバ商会が強引に乗り込んできましたが、我らがクロードの冷静沈着な対応が光ります!

セリアを優しく抱き寄せつつ、敵には「法務省を敵に回したことを後悔させてやる」と冷酷に言い放つギャップ……。普段はエプロンを着て料理を作ってくれる彼ですが、いざという時の頼もしさは本物です!

ニャングルと自警団も駆けつけ、形勢は完全に逆転。

次回、いよいよクロードとニャングルの最強タッグによる、敵が可哀想になるレベルの【痛快リーガルざまぁ(前編)】が炸裂します!

「クロードかっこいい!」「偽造書類なんて一瞬で見破られるに決まってる!」「リーガルざまぁが楽しみ!」

と思っていただけましたら……!

ぜひ、画面下(または上)にある、

【ブックマークに追加】と、

【☆☆☆☆☆】(評価ポイント)を【★★★★★】にして応援をお願いいたします!

皆様からの評価ポチッが、クロードの六法全書による物理攻撃力(?)を高めます!

引き続き、スカッと痛快な第9話をお楽しみに!

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