表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放令嬢の【ドラッグストア工房】〜ヘタレ法務監査官が悪知恵と法律で敵を論破し、実は最強の氷魔法で私を過保護に溺愛してきます〜  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/19

監査官の過保護な労働基準法。胃弱なエリートは、手料理とお風呂で私を甘やかしてきます

監査官の過保護な労働基準法。胃弱なエリートは、手料理とお風呂で私を甘やかしてきます

トントン、シャリシャリ、ゴリゴリ……。

すっかり日の落ちたポポロ村。静まり返った『セリア薬局』の奥にある調剤室では、心地よい作業音が響いていた。

「よしっ、陽薬草の抽出液と、月見大根のすりおろしエキスを……【ドラッグストア工房】で出した栄養タブレットと錬金して、と!」

セリアは白衣の袖をまくり上げ、額に滲んだ汗を拭いながら、目の前の乳鉢と格闘していた。

ニャングルが立ち上げた『三か国向け弁当宅配サービス』の特大ヒットにより、セリアの薬局には連日、山のような注文が舞い込んでいる。

前世のブラック薬局での過酷な労働とは違い、今は「自分が作った薬で、確実に誰かが健康になっている」という実感があるため、セリアは疲れを忘れて没頭していた。

「あともう少しだけ……明日のルナミス軍への納品分、徹夜で作っちゃおうかな。うふふ、なんだか楽しくなってきたわ!」

前世の社畜根性が変な方向に火を吹き、セリアが徹夜作業へのブーストを掛けようとした、その時だった。

「——却下です。今すぐその乳棒を置きなさい」

調剤室の入り口から、絶対零度のような冷ややかな声が降ってきた。

ビクッと肩を揺らして振り返ると、そこには腕を組んでこちらを睨み下ろすクロードの姿があった。

いつものように整ったプラチナブロンドの髪。だが、パリッとしたシャツとスラックス姿の彼のお腹には、なぜか可愛らしい『フリルのついたエプロン』が結ばれていた。

「えっ……ク、クロード様? そのエプロン、どうしたんですか?」

「タローマートで買ってきました。そんなことより、セリア嬢。現在の時刻をご存知ですか? 夜の23時です」

クロードはツカツカと歩み寄ると、セリアの手から乳棒と薬草を容赦なく没収した。

「ああっ! ダメですよクロード様、あと少しで明日の納品分が……!」

「納期調整はコンサルタントの仕事だと言ったはずです。ちなみに、あの強欲な猫耳商人は『労働基準法違反でこの村から永久追放する』と脅したら、大人しく算盤を抱えて帰りましたよ」

「ええっ、ニャングルさんを脅したんですか!?」

クロードは「はぁ」と深く、とても深いため息をついた。

「帝国労働基準法、第32条。労働時間は1日8時間を超えてはならない。あなたは今朝の8時から、休憩もまともに取らずに15時間もここで作業を続けている。これは明らかな法令違反であり、極めて悪質なブラック労働です。法務省の監察官として、これ以上の違法操業は決して見過ごせません」

淡々と法律を読み上げるクロードだが、その声には微かな怒りと、隠しきれない心配の色が滲んでいた。

「でも、お薬を待っている患者様や兵士さんたちが……」

「患者を救う前に、あなたが倒れてどうするんですか!」

ピシャリと放たれた強い言葉に、セリアは目を丸くした。

クロードは気まずそうに視線を逸らすと、片手でそっと胃の辺りを押さえた。

「……あなたが過労で倒れたりしたら、本国へ提出する始末書や報告書の作成で、私の胃に穴が開くのです。それに……その、なんだ。目の前で無茶をされると、非常に、気分が悪い」

後半の言葉はゴニョゴニョと小さく濁されたが、彼の耳の先がほんのりと赤く染まっているのを、セリアは見逃さなかった。

(クロード様……私のこと、すごく心配してくれてるんだ)

前世では、どれだけ残業しても「もっと働け」としか言われなかった。強制的に仕事を止められ、休むように叱られることなんて、一度もなかったのだ。

「……ごめんなさい、クロード様。私、少し夢中になりすぎていたみたいです」

セリアが素直に謝ると、クロードは少しだけ表情を和らげた。

「分かればいいんです。さぁ、手を洗って二階の居住スペースへ来なさい。夕食の準備ができています」

「えっ? 夕食って……クロード様が作ってくださったんですか!?」

「他に誰がいるんですか。さっさと来なさい」

促されるまま二階のダイニングへ向かうと、テーブルの上には湯気を立てる美味しそうな料理が並べられていた。

村の特産品である『ハニーかぼちゃ』と『肉椎茸』をふんだんに使った、濃厚で甘みのあるシチュー。そして、ふっくらと焼き上げられたパン。

「すごい……! クロード様、お料理できるんですね!」

「これくらい、一人暮らしの文官なら誰でもできます。あなたの栄養状態を改善し、明日の労働生産性を高めるための合理的な処置に過ぎません。さぁ、冷めないうちにどうぞ」

椅子を引かれ、セリアは一口シチューを口に運んだ。

「……っ! 美味しい……!」

ハニーかぼちゃの優しい甘さと、肉椎茸の深い旨味が、疲れた体に染み渡っていく。あまりの美味しさと温かさに、セリアの瞳からポロリと一粒の涙がこぼれ落ちた。

「なっ!? なぜ泣くんですか!? しまった、塩加減を間違えましたか!? ああ、胃がキリキリしてきた……!」

「ふふっ、違いますよ。あまりにも美味しくて、嬉しかっただけです。誰かが私のために温かいご飯を作って待っていてくれるなんて、本当に久しぶりだったので」

セリアが涙を拭いながら微笑むと、クロードは動きを止め、少し乱暴に頭を掻いた。

「……大げさな人だ。そんなに美味いなら、明日からも私が作りますよ。あなたに料理までさせたら、それこそ過労死しかねませんからね」

「いいんですか? 嬉しいです!」

食事が終わると、クロードはさらに信じられない言葉を口にした。

「浴室にお湯を張ってあります。温度は疲労回復に最適な40度に設定しました。昨日あなたが錬金した『極楽・入浴剤』も入れてありますから、ゆっくり浸かって筋肉の張りをほぐしてきなさい」

「お風呂の準備まで……!? クロード様、なんだか私のお母さんみたいですね!」

「誰が母親ですか! 雇用者の健康管理は法務の……もういいですから、早く入ってきなさい!」

顔を真っ赤にして怒るクロードに背中を押され、セリアは浴室へと向かった。

温かいお湯と、メントールとハーブの香りが漂う浴室は、まさに天国だった。

(クロード様ったら、いつも『法務のため』とか『胃が痛いから』って理屈をつけて、結局私のことを一番に甘やかしてくれているわ……)

湯船の中で、セリアは自分の頬が熱を帯びていくのを感じた。それは決して、お湯の温度のせいだけではない。

お風呂から上がり、パジャマ姿でリビングに戻ると、暖炉の前で本を読んでいたクロードが顔を上げた。彼はすぐに立ち上がり、温かいカモミールティーをセリアに手渡す。

「さぁ、飲んだらベッドに入りなさい。明日の営業開始は10時です。1分でも早く起きて仕事をしようとしたら、公務執行妨害で逮捕しますからね」

「ふふっ、はい。分かりました。……おやすみなさい、クロード様。今日は本当に、ありがとうございました」

セリアが満面の笑みを向けると、クロードは小さく咳払いをして、本で顔の半分を隠した。

「……おやすみなさい、セリア嬢。良い夢を」

ぽかぽかとした体と心でベッドに潜り込んだセリアは、泥のように、けれどこの上なく幸せな眠りについた。

追放された辺境の村で待っていたのは、過酷な生活などではなく。

少し不器用で、ひどく胃弱で、けれど誰よりも過保護なエリート監査官による、甘すぎる『労働基準法』に守られた至福の日常だった。

第6話をお読みいただき、ありがとうございます!

今回はバチバチのバトルやざまぁはお休みして、クロードの「超過保護なオカン属性(エプロン姿)」が炸裂する日常回をお届けしました!

「帝国労働基準法」と「始末書による胃痛」を盾にして、ひたすらセリアに温かいご飯を食べさせ、お風呂に入れさせ、無理やり休ませるヒーロー。

前世でブラック企業に搾取されていたセリアにとって、これ以上の溺愛チートはありませんね(笑)。

少しずつ二人の距離が近づき、甘い雰囲気が漂ってきましたが……

次回、いよいよ王都側がポポロ村の異常な繁栄に気付き、不穏な動きを見せ始めます!

「クロードのエプロン姿、最高!」「こんな過保護なヒーローに甘やかされたい!」「王太子側の自滅が待ちきれない!」

と思っていただけましたら……!

ぜひ、画面下(または上)にある、

【ブックマークに追加】と、

【☆☆☆☆☆】(評価ポイント)を【★★★★★】にして応援していただけると、最高に嬉しいです!

皆様からの温かい応援ポチッが、作者の胃腸を整え、次話を書き上げるための最高のエネルギーになります!

引き続き、波乱の第7話もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ