雷神の月兎と、絶対零度のサポート。私の大親友と最強の騎士が、理不尽な暴力を完全粉砕します!
雷神の月兎と、絶対零度のサポート。私の大親友と最強の騎士が、理不尽な暴力を完全粉砕します!
「撃てぇぇぇっ! その生意気な役人もろとも、村ごと灰塵に帰してしまえ!!」
近衛騎士団長ガルドの狂気に満ちた号令とともに、違法な広域魔導殲滅兵器の砲口から、灼熱の業火が放たれた。
轟音。そして、周囲の空気を一瞬にして焼き尽くすほどの熱波が、セリアたちとポポロ村に向かって津波のように押し寄せる。
「キャハハハッ! 消え失せろォ!」
ガルドが勝利を確信して下劣な笑い声を上げた、その瞬間。
「……帝国法第130条、建造物損壊。並びに広域破壊兵器の使用によるテロリズム。……もはや、情状酌量の余地はありませんね」
クロードが、静かに、だが絶対的な冷酷さを持ってミスリルの剣を天へと掲げた。
「——『絶対零度・領域指定』」
カキィィィィィンッ!!
クロードの剣先から放たれた極低温の魔力が、瞬く間にドーム状の結界を展開した。
押し寄せていた灼熱の業火が、結界に触れた瞬間にピキピキと音を立てて凍りつき、真っ白な氷の華となって空中で静止する。
炎だけではない。魔導兵器の砲身から、後方に控えていた重武装の近衛騎士たちの足元に至るまで、全ての大地が一瞬にして分厚い氷河に覆い尽くされた。
「な、なんだとォォッ!?」
ガルドが驚愕に目を見開く。炎を凍らせるなど、常軌を逸した魔法だ。
さらに、騎士たちは足元を完全に氷塊で拘束され、一歩も動くことができなくなっていた。
「武器の無力化、および対象の拘束を完了しました。……キャルル村長、対象の『完全排除』を許可します。存分にやりなさい」
クロードが剣を振り下ろすと同時に、彼の背後から、凄まじい紫電の雷光が弾け飛んだ。
「私の大切な親友に、よくもあんな危ないものを向けてくれたね……! 絶対に、絶対に許さないんだからァァァァッ!!」
バリバリバリッ!! と、大気を切り裂くような雷鳴。
キャルルは、タローマン製の特注安全靴に仕込まれた『雷竜石』の制限を完全に解除し、全身に紫電の雷光と、怒りに満ちた闘気を限界まで纏っていた。
その姿は、かつて彼女を見た冒険者たちが恐れ慄いた『雷神の月兎』そのものだった。
「ひっ……!? で、殿下、お待ちを……っ!」
殺気をむき出しにしたかつての第三姫君の姿に、ガルドの顔面から一気に血の気が引いた。
「待つわけないでしょ! この、わからずやの馬鹿犬どもォォォッ!!」
ドンッ!!
キャルルがクラウチングスタートの姿勢から、大地を蹴り飛ばした。
その初速、驚異のマッハ1。
音速を突破したことによって生じるソニックブーム(衝撃波)が、ポポロ村の広場に竜巻を巻き起こす。
あまりの速度に、ガルドたち近衛騎士団の動体視力では、キャルルの姿を追うことすらできない。
「どこだ!? どこへ消え……」
「上だ、このアホ!!」
ガルドが上空を見上げると、20メートル以上もの高さを跳躍したキャルルが、空中で体を一回転させ、凄まじい遠心力と落下のエネルギーを脚に集中させていた。
雷光が、彼女の安全靴のつま先に収束していく。
「食らいなさい! これが私の、親友を守るための怒りの一撃だよ!!」
キャルルが、隕石のような速度で急降下する。
「——『超電光流星脚(スーパー・ライトニング・メテオ・ストライク)』ッ!!!!」
ズガァァァァァァァァァァァァンッ!!!!
キャルルの飛び蹴りが、ガルドの構えた大剣と、分厚い胸当てに直撃した。
1億ボルトの雷撃と、約277トンに相当する規格外の運動エネルギー。
ガルドの持つミスリル製の大剣は飴細工のようにへし折れ、自慢の重鎧は一瞬にして粉々の金属片となって吹き飛んだ。
「ごぶァァァァァァァッ!?」
ガルドの巨体が、まるで砲弾のように吹き飛ばされ、後方にいた近衛騎士たちをボウリングのピンのように次々と巻き込みながら、村の遥か外の森まで一直線に吹っ飛んでいった。
ドゴォォォンッ!! と、森の木々を薙ぎ倒してようやく止まったガルドたちは、全身の骨を砕かれ(※命に別状はないギリギリのラインで)、白目を剥いて完全に気絶していた。
違法な魔導兵器も、キャルルの蹴りの余波と雷撃によって完全にショートし、ただの鉄屑へと成り果てている。
「ふんっ。セリアさんに手を出そうとするから、こうなるんだよ。ちょっとは反省しなよね!」
キャルルは美しく着地すると、ショートパンツの埃を払いながら、気絶した獣人たちに向かってフンッと鼻を鳴らした。
クロードの『絶対零度の拘束とサポート』。
そして、キャルルの『音速の雷撃キック』。
二人の完璧な連携により、ポポロ村を脅かした傲慢な近衛騎士団は、文字通り一瞬にして完全粉砕されたのである。
「す、すごいです……! クロード様、キャルルさん、かっこいい……!」
薬局の前で見ていたセリアが、キラキラと目を輝かせて両手を握りしめた。
クロードはゆっくりとミスリルの剣を鞘に納めると、周囲に展開していた氷の結界を解除した。
真夏の熱気が戻ってくると同時に、クロードは「はぁ……」と深すぎるため息をつき、ガクンとその場に膝をついた。
「ク、クロード様!?」
「……胃が……。あんな無骨な大男たちを相手にして、広域魔法の精密制御までさせられて……極度のストレスで、胃酸が逆流しそうです……」
クロードは片手で胃を強く押さえ、顔面を蒼白にしながら情けない声で呻いた。
先ほどの、理不尽を許さない氷魔法剣士の圧倒的な姿はどこへやら。
しかし、そんな彼の不器用でヘタレなギャップこそが、セリアの乙女心をさらに激しく撃ち抜いていた。
「クロード様、本当にお疲れ様でした。私や村を守ってくれて……本当に、本当にありがとうございます!」
セリアは慌てて駆け寄り、クロードの背中を優しくさすりながら、特製の胃薬とお白湯を差し出した。
「……あなたのその薬がないと、私は法務省の激務(と、この村の防衛)に耐えられません。これからも、私の健康管理を……よろしくお願いします」
クロードが胃薬を飲み込みながら、耳をほんのりと赤くしてそっぽを向く。
「はいっ! クロード様の胃袋は、私が一生お守りしますね!」
セリアが満面の笑みで答えると、クロードは「……それは、心強い」と小さく呟き、口元を隠した。
二人の間に、戦いの後とは思えないほど甘く、ぽかぽかとした空気が流れる。
だが、その尊い空間を、ドス黒いオーラを放つウサギ耳の村長がジト目で見つめていた。
「……ちょっと、監査官さん。私の親友に、ナチュラルにプロポーズみたいなこと言ってんじゃないわよ。セリアさんの胃薬は、私が一番乗りで舐めるんだからね!」
キャルルがぷくっと頬を膨らませてセリアに抱きつく。
「あはは、キャルルさんもありがとう! あのキック、雷神様みたいで本当に強くてかっこよかったよ!」
「えへへ……セリアさんに褒められちゃった! 私、セリアさんのためならマッハ5でも飛べるよ!」
セリアに頭を撫でられ、一瞬でヤンデレ親友から甘えん坊のウサギに戻るキャルル。
「……まぁ、一件落着やな」
窓際でその様子を見ていたニャングルが、カチャリと算盤を弾いてニヤリと笑った。
「あのアホ騎士団の連中が壊した村の器物破損代と、慰謝料……それに、違法魔導兵器の持ち込みによる罰金。レオンハートの王室に、きっちり莫大な請求書を送りつけたるわ。ワイの算盤は、1銅貨の狂いも許さんで!」
理不尽な暴力を力と法と経済でねじ伏せ、ポポロ村の防衛戦は完全勝利で幕を閉じた。
最強の氷魔法剣士と、雷神の月兎。
この二人がいる限り、もはやポポロ村を脅かすことのできる存在など、この世界にはいないのかもしれない。
第8話をお読みいただき、ありがとうございます!
第二章のクライマックスバトル、いかがでしたでしょうか!
クロードの『絶対零度・領域指定』による完璧な敵の無力化と、キャルルの『超電光流星脚』によるド派手な物理ざまぁの連携プレー!
傲慢な近衛騎士団は、1億ボルトと277トンの衝撃の前に、見事なまでに星となりました(笑)。
そして戦いの後、お約束の胃痛でしゃがみ込むクロードと、彼を献身的に介抱するセリア。
「私の健康管理をお願いします」「一生お守りしますね!」
……もうこれ、実質プロポーズですよね!? クロード本人は無自覚なのがまたニクいところです。
そんな甘い二人にヤキモチを焼くキャルルと、賠償金の計算に余念がないニャングル。
頼もしくて愉快な仲間たちに囲まれ、セリアの辺境スローライフはさらに賑やかになっていきます。
次回、事件の後日談と、第二章の締めくくりです。
平和を取り戻した村で、不器用な二人の距離はさらに縮まるのでしょうか?
「キャルルのキック爽快!」「クロードのサポートが完璧すぎる!」「胃薬プロポーズごちそうさまです!」
と思っていただけましたら……!
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第二章も残りわずか、引き続きお楽しみください!




