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追放令嬢の【ドラッグストア工房】〜ヘタレ法務監査官が悪知恵と法律で敵を論破し、実は最強の氷魔法で私を過保護に溺愛してきます〜  作者: 月神世一


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大姉御への貢物と、忍び寄る獣の影。ドM覚醒した兵士たちと、招かれざる過去の亡霊

大姉御への貢物と、忍び寄る獣の影。ドM覚醒した兵士たちと、招かれざる過去の亡霊

翌朝。

ポポロ村の空に朝日が昇り、小鳥がチュンチュンと長閑(のどか)に囀る中。

『セリア薬局』の店内では、土下座の姿勢で床に額を擦り付けるウサギ耳の少女の、大号泣が響き渡っていた。

「あぁぁぁぁっ! ごめんなさぁぁぁい! 昨日の夜の私、なんてことをぉぉぉっ!!」

満月のハイテンション状態から完全に正気に戻ったキャルルは、激しい自己嫌悪と羞恥心で顔を真っ赤にしながら、セリアの足元で平謝りしていた。

「私、満月になるといつもああなっちゃうの! 体からドーパミンがドバドバ溢れて、どうしても『不健康な奴ら』にヤキを入れたくて仕方がなくなっちゃって……! 村長のくせに、ごめんなさい、ごめんなさぁぁい!」

「ふふっ。大丈夫ですよ、キャルルさん。顔を上げてください」

セリアはキャルルのウサギ耳を優しく撫でながら、微笑みかけた。

「昨夜は村の周囲を、マッハの速度でパトロールしてくださったんですよね? おかげで、村の中には魔物一匹、泥棒一人入ってきませんでした。とっても頼もしい村長さんです!」

(セリアさん……っ! どこまで私を甘やかしてくれるの……っ! 天使! 私の親友、マジ天使!)

キャルルは涙目でセリアの腰にすがりつき、顔をぐりぐりと押し付けた。

「……セリア嬢。あなたのその底なしの善意は、時に現実を歪めますね」

カウンターの奥で、クロードがげっそりとした顔でハーブティーをすすっていた。

彼は昨晩、マッハ1で三か国の軍隊を蹂躙するキャルルの事後処理(という名の法的免責事項の書類作成)で完全に徹夜を余儀なくされていた。

「しかし、まぁ……幸か不幸か、被害に遭った三か国の駐屯地からの『被害届』は、一件も提出されていません。よって、法務省としては昨夜の騒動を『村長による過剰な健康促進活動』として不問に付すことにします。……ああ、胃が痛い」

クロードが諦めの境地で胃薬を噛み砕いた、その時だった。

「——たのもぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

薬局の扉が、ドバンッ! と勢いよく開け放たれた。

「ひっ!?」

キャルルがビクッと肩を跳ねさせ、セリアの後ろに隠れる。

店に入ってきたのは、ルナミス帝国軍、レオンハート獣人王国軍、アバロン魔皇国軍という、三か国の軍隊の部隊長たちだった。

彼らの顔には、昨夜キャルルの『安全靴でのカチコミ』を受けたはずの生々しい打撃痕……は一切なく、むしろ異常なほど血色が良い。ピカピカに輝くような笑顔を浮かべている。

「な、なんの用ですか! 昨日のことは謝りますから……!」

キャルルが震え声で言うと、三か国の部隊長たちは一斉に姿勢を正し、ビシィッ!! と最敬礼のポーズをとった。

「「「大姉御ォォォッ!! 昨晩はご熱い指導、感無量であります!!」」」

「……えっ?」

予想外の言葉に、キャルルは目を丸くした。

「俺たち、前線でのピリピリした空気と激務で、心も体も限界でした! でも、大姉御の『雷撃蹴り』で顎を粉砕され、直後に『月光の加護』で全回復した瞬間……これまでの肩こりも、腰痛も、心のモヤモヤも、全てが宇宙の彼方へ吹っ飛んだのであります!」

ルナミスの部隊長が、感激の涙を流しながら熱弁を振るう。

「『痛い』と『気持ちいい』の究極の波状攻撃……! あれこそが真の健康指導! 我々三か国の兵士一同、大姉御の海より深い愛と拳に、一生ついていく覚悟を決めましたァァッ!!」

レオンハートとアバロンの部隊長も、完全にドMとして覚醒した熱い瞳でキャルルを見つめている。

「ひぃぃぃぃっ! や、やめてぇぇぇ!」

キャルルはセリアの背中にしがみつき、ガタガタと震え出した。

「おっしゃ! 持ってこいお前ら!」

部隊長たちの合図とともに、荷車を引いた兵士たちが次々と薬局の前にやってきた。

荷車に積まれていたのは、帝国産の高級ワイン、獣人王国特産の霜降り肉、アバロンの珍しい宝石、そしてキャルルへの貢物である『特級人参の詰め合わせ』が山のように積まれていた。

「大姉御! こちらは我々からの、ほんの感謝のしるし(貢物)であります! 今後のポポロ村の防衛は、我々三か国の軍隊が命に代えても死守いたします!!」

「「「よろしくお願いしやす、大姉御ォォォッ!!」」」

地鳴りのような兵士たちの咆哮に、ポポロ村の村人たちが何事かと顔を出し、「さすが新しい村長さんだ!」「軍隊まで味方につけちゃった!」と歓声を上げ始めた。

「……ええと、これは、つまり……どういう法解釈になるんでしょうか」

クロードが遠い目をしながら呟くと、横からスッと黒檀の算盤が伸びてきた。

「決まっとるやろ、お役人サマ。……『ポポロ村の莫大な臨時収入(ボーナス)』や!!」

ニャングルが目をドル袋のように輝かせ、カチャカチャカチャッ! と凄まじい速度で算盤を弾き始めた。

「これだけの高級品、闇市に流せば金貨数百枚は下らんぞ! しかも三か国の軍隊がタダで用心棒になってくれるんやから、村の防衛費はゼロや! キャルルのアホ村長、お前最高やないか!! 毎月満月が来い!!」

「いやだよぉぉぉっ! 私、こんなカオスな村長になりたかったわけじゃないのにぃぃ!」

ニャングルの歓喜の声と、兵士たちの熱狂、そしてキャルルの嘆きが交差する。

ポポロ村は今日も、最高にカオスで平和な日常を謳歌しているかに見えた。

——だが、その騒ぎの裏側で。

ポポロ村の入り口に、冷たく、そして傲慢な空気を纏った一団が姿を現していた。

「……ふん。こんな薄汚い辺境の村で、何やら下賤な者たちが騒いでいるようだな」

白銀の重厚な鎧を身に纏い、マントに『獅子』の紋章を掲げた男が、冷ややかな視線で村の中央広場を見下ろしていた。

彼の背後には、同じく重武装した数十人の騎士たちが、整然と並んでいる。

彼らの装備と練度は、国境警備の兵士たちとは次元が違う。レオンハート獣人王国が誇る最強のエリート部隊——『近衛騎士団』である。

「団長。情報によれば、第三姫君のキャルル殿下は、この村で『村長』の真似事をしているとのこと。先ほどの兵士たちの騒ぎも、殿下の月兎族の能力によるものかと」

部下の報告に、団長と呼ばれた男は不快そうに鼻を鳴らした。

「我らがレオンハートの王族であり、近衛の隊長候補でもあったお方が、冒険者などという賎業に身を落とした挙句、このような辺境の村で下民と戯れているとは。王家の恥も甚だしい」

団長は腰に提げた長剣の柄に手を置き、冷酷な目で『セリア薬局』の方を睨みつけた。

「陛下からの勅命だ。あのじゃじゃ馬姫を、力ずくでも国へ連れ戻す。……月兎族の力は、他国との戦争において最高の『回復装置(道具)』になるのだからな。あのような娘の自由意思など、最初から存在しない」

重武装の近衛騎士団が、ズシン、ズシンと足音を響かせながら、村の中央へと進軍を開始した。

◇◇◇

「キャルルさん、大丈夫ですよ。兵士さんたち、もう帰りましたから」

セリアが優しく背中を撫でてやると、キャルルはようやく涙を拭いて顔を上げた。

「うぅ……ごめんなさい、お騒がせして……。でも、セリアさんの人参クッキー食べたら、少し落ち着いたかも」

「ふふっ。いくらでも焼いてあげますからね」

二人が和やかに笑い合っていた、その時。

——ガシャァァァァンッ!!

薬局の外から、屋台が破壊されるような激しい音が響いた。

「なっ、なんや!?」

ニャングルが算盤を置いて窓の外を見ると、そこには先ほどまでの和やかな空気を完全に凍りつかせる、重武装の騎士団が立ち並んでいた。

「そこをどけ、下民ども。我々はレオンハート獣人王国・近衛騎士団である。……我らが第三姫君、キャルル・ムーンハートを迎えにきた」

傲慢な声が、村中に響き渡る。

その声を聞いた瞬間、キャルルのウサギ耳が、恐怖と嫌悪でピタリと硬直した。

「……近衛、騎士団……。お父様(国王)の、犬たち……」

キャルルの顔から血の気が引き、小さな手がガタガタと震え始める。

国を捨て、自由を求めた彼女を縛り付けようとする『過去の因縁(亡霊)』が、ついにポポロ村まで追いついてきたのだ。

「……セリア嬢。どうやら、平和なティータイムは終わりのようですね」

クロードがゆっくりと立ち上がり、乱れた前髪をかき上げた。

彼の青い瞳には、先ほどまでの胃弱でヘタレな色は微塵もなく、ただ静かで冷酷な『法務監察官』としての光が宿っていた。

「ポポロ村は、三か国協定に基づく不可侵の【超経済特区】。……たとえどこの国のエリート部隊であろうと、この村で勝手な武力行使は許さない。……法に則り、徹底的に排除します」

傲慢な獣たちと、理不尽を決して許さない氷魔法剣士。

キャルルという『親友』を守るための、第二章最大の防衛戦が、今、静かに幕を開けようとしていた。

第5話をお読みいただき、ありがとうございます!

前半は、満月の惨劇(?)から一夜明けたポポロ村のドタバタ劇でした!

キャルルのヤキ入れによって完全にドM覚醒した三か国の兵士たち。「大姉御ォ!」と貢物を山積みにするカオスな展開に、ニャングルの算盤も絶好調です。

しかし、後半からは一転してシリアスな影が。

キャルルの祖国であるレオンハート獣人王国から、彼女を「戦争の道具」として連れ戻すために、傲慢な近衛騎士団がやってきました!

過去のトラウマに怯えるキャルル。

そして、彼女を守るために立ち上がるクロードとセリア!

「不可侵の特区で勝手は許さない」。理不尽を憎むA型ヒーロー・クロードの法務ざまぁ(と物理ざまぁ)の準備が整いました!

次回、近衛騎士団の傲慢な要求に対し、クロードの『六法全書』とニャングルの『経済封鎖』が火を噴きます!

「兵士たちのドM覚醒ワロタ」「キャルル逃げて!」「クロードのスイッチ入った! かっこいい!」

と思っていただけましたら……!

ぜひ、画面下(または上)にある、

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皆様の星(評価)が、クロードの法知識と次話のスカッと展開の威力を倍増させます!

白熱の第6話も、絶対にお見逃しなく!

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