表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放令嬢の【ドラッグストア工房】〜ヘタレ法務監査官が悪知恵と法律で敵を論破し、実は最強の氷魔法で私を過保護に溺愛してきます〜  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/19

第二章『雷神の月兎と、鈍感な氷魔法剣士』

行方不明の村長と、新しくやって来た訳ありウサギ耳娘。監査官の無茶振りが炸裂します

悪徳商会を合法的に追い出し、ポポロ村が【超経済特区】として新たなスタートを切ってから数週間。

『セリア薬局』の店内は、今日も三か国の兵士や村人たちからの注文を捌き終え、穏やかなティータイムを迎えていた。

「よし、本日の帳簿も完璧や! 帝国軍からの追加発注も取り付けたし、ポポロ村の利益は右肩上がりやで!」

カウンターの隅で、猫耳商人のニャングルが愛用の魔導黒檀算盤をカチャカチャと弾きながら、ご機嫌な声で売上を報告している。

その横で、白衣姿のセリアは、調剤室から淹れたての陽薬茶を乗せたトレイを運んできた。

「ニャングルさん、お疲れ様です。クロード様も、書類仕事のキリが良いところで休憩にしませんか?」

「……ええ、ありがとうございます、セリア嬢」

指定席のテーブルで、分厚い書類の束と睨み合っていたクロードが、片手で眉間を揉みながら顔を上げた。

パリッとした法務監察官の制服を着崩すこともなく、生真面目にペンを走らせていた彼は、セリアが差し出した陽薬茶を受け取ると、ふぅっと細く息を吐いた。

「美味しいです。あなたの淹れるお茶は、荒れた胃粘膜に優しく浸透して……本当に、生き返る心地がします」

「ふふっ、大げさですよ。でも、クロード様のお口に合って良かったです」

嬉しそうに微笑むセリア。

あの一件以来、セリアのクロードに対する視線には、明らかな『熱』が混じっていた。

普段は理屈っぽくて胃弱なのに、いざという時は絶対に理不尽を許さず、圧倒的な強さで自分を守ってくれる。その気高くも泥臭い信念に、セリアは完全に心を奪われてしまっていたのだ。

(今日も横顔が素敵……。書類を読んでいる時の、少し険しい目つきもかっこいいわ)

セリアが内心でドキドキと胸を高鳴らせていると、不意にクロードが書類から目を上げ、不思議そうな顔をした。

「……そういえば。ここ数日、ポポロ村のロップ村長を全く見かけませんが、どうしたのでしょうか? 村の特別協定に関する重要な承認印をもらいたいのですが、村長宅を訪ねてもずっと留守でして」

クロードの問いに、セリアはコトンと首を傾げた。

「えっと……そういえば。数日前に隣町のゲートボール大会へ行くと言って、すごくオシャレにおめかししていました。出かける前に、村長宅の金庫をゴソゴソと漁っていたような気もしますが……」

「あー、奴ならおらんで」

陽薬茶をすすっていたニャングルが、何でもないことのように口を挟んだ。

「ワイの算盤(情報網)に引っかかったんやが、ゲートボール大会でアバロン魔皇国からお忍びで来とった貴婦人と電撃的な恋に落ちたらしくてな。村の公金を全額トランクに詰め込んで、女と一緒に高飛び(バックレラビリンス)しよったわ」

「……………………は?」

クロードの手から、ポロリと万年筆が滑り落ちた。

「高飛び……? 公金を全額……?」

「おう。今頃は愛の逃避行で、どっかの温泉地にでも浸かっとるんやないか?」

ニャングルのあっけらかんとした報告に、クロードの顔面から一気に血の気が引いていく。

そして、彼はおもむろに両手で胃の辺りを抱え込み、テーブルに突っ伏した。

「い、痛い……っ! なぜですか! なぜそんな重大な横領事件を、今まで黙っていたんですか!!」

「いや、なんで止めなアカンねん」

ニャングルはケロッとした顔で、ニヤリと極悪な笑みを浮かべた。

「あのアホ村長がおらんくなれば、村の運営費も税収も、一時的にワイらゴルド商会が管理(独占)できるチャンスやないか! ワイの算盤が『黙っとけ、ボロ儲けや!』って弾き出したんやから、しゃあないやろ!」

「この守銭奴! 帝国法における公金横領および職務放棄がどれほどの重罪か……! ああ、村のトップが不在となれば、この特区の法的手続きが全てストップしてしまう……! 私の、法務省に提出する報告書が……ッ!」

クロードが青い顔をしてプルプルと震え始めた。

セリアは慌てて【ドラッグストア工房】を開き、いつもの特製胃薬を取り出した。

「ク、クロード様、落ち着いてください! はい、お薬!」

「……っ、ありがとうございます……。しかし、このままでは村の行政機能が麻痺します。至急、新たな村長の代行者を立てなければ……」

クロードが薬を水で流し込み、青息吐息で呟いた、その時だった。

カランコロン!

薬局のドアベルが、元気よく鳴り響いた。

「こんちはーっ! 冒険者ギルドの依頼で来ましたぁ!」

開いた扉から飛び込んできたのは、ひどく場違いなほどに快活な声だった。

現れたのは、一人の若い女性。年齢はセリアと同じくらい、二十歳そこそこだろうか。

栗色の髪の隙間からは、ピンと真っ直ぐに立った大きな『ウサギの耳』が生えている。獣人族の中でも上位種とされる、月兎げっと族だ。

彼女はドレスや鎧ではなく、ゆったりとしたパーカーにショートパンツという、セリアの前世(現代)を思わせるようなラフで動きやすい格好をしていた。足元には、タローマン(ポポロ村にあるガテン系御用達の店)で売られている、つま先に鉄板が入った特注の安全靴を履いている。

「あ、あなたがここの責任者さんですか?」

ウサギ耳の少女は、カウンターにいたセリアに目を輝かせて駆け寄ってきた。

「えっと、私はこの薬局の店主ですが……。あの、お客様ですか?」

「違います違います! 私はキャルル・ムーンハート! 冒険者ギルドで『地域村おこし応援隊』の依頼を受けて、このポポロ村のお手伝いにやって来ました!」

キャルルと名乗った少女は、愛嬌たっぷりの笑顔でピシッと敬礼してみせた。

可愛らしい容姿と、人懐っこい雰囲気。セリアは一目見て、彼女のことが好きになってしまった。

(なんだか、すごく元気で良い子そう! ウサギのお耳もピコピコ動いてて可愛いわ)

「ご苦労様です。私はセリア。こっちは財務コンサルタントのニャングルさんで……そっちで胃を押さえて倒れているのが、法務監察官のクロード様よ」

セリアが紹介すると、クロードはフラフラと立ち上がり、乱れた前髪をかき上げた。

「……ギルドの応援隊、ですか。身分証と、経歴書を拝見しても?」

「はい! これです!」

キャルルが差し出した羊皮紙のギルドカードと経歴書を、クロードは事務的な手つきで受け取った。

鋭い青い瞳が、書類の文字を高速でスキャンしていく。

数秒後。クロードの目の色が変わった。

「……レオンハート獣人王国の、第三姫君。さらに、元・近衛騎士隊長候補?」

「えっ!?」

セリアが驚きの声を上げる。ニャングルも「お姫様やと!?」と算盤の手を止めた。

キャルルは慌てたように両手を振り、ウサギ耳をペタンと伏せた。

「あ、あのっ、それは昔の話です! 私は王宮の籠の中で、政治の道具にされるのが嫌で……自由を求めて国を飛び出したんです! 今はただの、その日暮らしの自由な冒険者ですから!」

必死に弁明するキャルル。

しかし、クロードは書類から顔を上げ、メガネの奥(※実際はかけていないが、幻のインテリ眼鏡が光ったように見えた)の瞳をギラリと光らせた。

そこには、いつもの胃弱なヘタレ監査官の姿はなかった。

ただ純粋に、『村の行政機能の麻痺』という理不尽な状況を、最も合理的かつ合法的に解決する手段を見つけた、冷徹な法務官僚の顔があった。

「……丁度良い」

「へ?」

「元近衛騎士隊長候補で、一国の姫君。教養もあり、有事の際の戦闘能力も申し分ない。実力も血筋も、これ以上ないほど完璧です」

クロードはスタスタとキャルルに歩み寄ると、彼女の肩をガシッと掴んだ。

「キャルル・ムーンハート殿。あなたがギルドで引き受けた『地域村おこし応援隊』の依頼ですが、ただいま私、帝国法務監察官の権限をもって、その依頼内容を上方修正アップデートいたしました」

「あ、アップデート……? な、何を手伝えばいいんですか? 畑仕事? それとも魔物退治?」

キャルルが首を傾げると、クロードは極めて真顔で、恐ろしい宣告を下した。

「ギルドの新たな依頼内容は、『このポポロ村の村長に就任すること』です。報酬は、ポポロ村の全権限。……おめでとうございます。あなたはたった今から、この村のトップです」

「………………………………………………ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッ!?」

キャルルの絶叫が、平和なポポロ村の空に響き渡った。

「ちょ、ちょっと待ってください! 私、ただの村おこしのお手伝いに来ただけで! む、村長なんて、そんな責任重大なこと……!」

「安心してください。前村長が横領した公金の補填と、不足している行政書類の作成は、私とそこの猫耳商人が全力でサポートします。あなたはただ、村の代表として承認印を押し、村を守ってくれればそれでいい」

有無を言わさぬクロードの圧に、キャルルは涙目でセリアに助けを求めた。

しかしセリアは、両手を頬に当て、ポッ……と頬を赤らめてクロードを見つめていた。

(すごい……! クロード様、村のピンチに一瞬で的確な判断を下して、テキパキと問題を解決しちゃうなんて……! やっぱりお仕事している時のクロード様、とっても頼りになってかっこいい……!)

セリアの目には、完全に『恋する乙女フィルター』がかかっていた。

クロードが単に、自分が村長の代行業務(膨大な書類仕事)を押し付けられるのを全力で回避するために、目の前に現れた高スペックな人材を強引にスケープゴートにしただけだという事実に、彼女は全く気付いていないのだった。

「アカン。このお役人サマ、怒らせたらワイよりえげつない無茶振りしよる……」

ニャングルが引き攣った笑いを浮かべる中。

訳ありのウサギ耳姫・キャルルを新たな村長として強引に巻き込み、ポポロ村の第二章は、かつてない波乱とカオスの幕開けを告げたのだった。

第二章、いよいよ開幕です!

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます!

前村長ロップの華麗なるバックレにより、まさかの行政危機に陥ったポポロ村。

そこで現れたのが、新キャラクターの【キャルル・ムーンハート】(20歳・月兎族)です!

自由を求めて冒険者になったはずが、クロードの「法的な無茶振り」により、到着5分で村長に任命されてしまいました(笑)。

そして、クロードの強引すぎる問題解決能力を見て、「頼りになる!」とますます惚れ直してしまうセリア。彼女の恋心フィルターはすでに絶好調です! クロード本人は全く無自覚に胃痛と戦っているだけなのですが……!

新しい仲間(犠牲者)を迎えたポポロ村の明日はどっちだ!?

「新章スタートおめでとう!」「キャルル可愛い!」「クロードの無茶振りがひどい(笑)」「セリアのフィルター分厚すぎ!」

と思っていただけましたら……!

ぜひ、画面下(または上)にある、

【ブックマークに追加】と、

【☆☆☆☆☆】(評価ポイント)を【★★★★★】にして、第二章も応援していただけると最高に嬉しいです!

皆様の星(評価)が、新村長キャルルのメンタルを支える特効薬になります!

波乱万丈の第2話も、どうぞお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ