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追放令嬢の【ドラッグストア工房】〜ヘタレ法務監査官が悪知恵と法律で敵を論破し、実は最強の氷魔法で私を過保護に溺愛してきます〜  作者: 月神世一


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完全包囲と本当のざまぁ。私を追放した元婚約者は、新聞と経済封鎖で完全に破滅するようです

完全包囲と本当のざまぁ。私を追放した元婚約者は、新聞と経済封鎖で完全に破滅するようです

「ひぃっ、ひぃぃぃぃっ!」

ポポロ村の郊外、森へと続く獣道を、泥まみれになりながら這いつくばって逃げる男がいた。

ゼルバ商会会長、ゲルト。

自慢の切り札であった禁忌の魔獣【死蟲機ネクロバグ】を、たった一振りの氷魔法剣であっさりと粉砕され、彼は完全に発狂寸前だった。

「なんでだ……! なんで辺境の村に、あんなバケモノみたいな剣士がいるんだよぉぉっ!」

彼が涙と鼻水を撒き散らしながら森へ逃げ込もうとした、その瞬間。

——ピキィィィィンッ!

「あばっ!?」

ゲルトの足元の地面が急激に凍りつき、彼の両足のブーツを分厚い氷塊がガッチリと拘束した。

「……逃走、および証拠隠滅の恐れあり。よって、身柄を強制的に拘束します」

振り返ると、絶対零度の冷気を纏ったクロードが、静かな足取りで近づいてくるところだった。その横には、魔導黒檀算盤をカチャカチャと鳴らしながら、極悪な笑みを浮かべるニャングルの姿がある。

「ひ、ひぃぃっ! 許してくれ! 俺はただ、命令されただけなんだ!」

「命令された?」

クロードが冷ややかに眉を上げると、ゲルトは己の罪を少しでも軽くしようと、堰を切ったように全てを自白し始めた。

「そうだ! 俺に『セリア薬局を手段を選ばず乗っ取れ』と命じたのは、王都のアルベルト王太子殿下だ! ネクロバグを買った闇市場のルートも、元を辿れば殿下の裏金が流れてるんだ! 俺は逆らえなかっただけなんだよぉっ!」

その言葉を聞いた瞬間、クロードは懐から小さな『魔導録音石』を取り出し、カチャリとスイッチを切った。

「……なるほど。王太子直々の命令による、他国緩衝地帯での略奪行為。ならびに禁忌兵器の購入と使用。素晴らしい自白ですね、ゲルト会長。あなたの証言は、法廷で大いに役立つでしょう」

「なっ……! 録音、してたのか……!?」

「当たり前でしょう。法務省の人間が、証拠もなしに動くはずがありません」

クロードは冷酷に言い放ち、今度は別の通信用魔導石を起動させた。

「あー、こちらランカスター。……ええ、ポポロ村での事件は無事に鎮圧しました。実行犯の身柄を確保し、すべての『自白』も録音済みです。直ちに帝都の**『ルナミス新聞社』**の編集部へ繋いでください」

「ル、ルナミス新聞だと!?」

ゲルトが絶望の声を上げる。

ルナミス新聞社といえば、帝国全土に銅貨1枚でバラ撒かれている、圧倒的な情報網と影響力を持つ巨大メディアだ。

「ええ、特大のスクープです。王家を揺るがす『大スキャンダル』の確たる証拠を提供しましょう。明日の朝刊の一面は、これで決まりですね」

クロードが淡々と新聞社に情報をリークし始めると、横からニャングルがニヤリと身を乗り出した。

「おっと、お役人サマ。ついでにワイの方からも『経済欄』に特大の発表を載せてもらうで」

ニャングルは算盤を弾きながら、通信石に向かって声高らかに宣言した。

「ゴルド商会からの正式発表や! ポポロ村の『セリア薬局』に対し、アルベルト王太子が不当な武力介入を行ったことを受け、我が商会はアルベルト派閥の貴族および関係機関への『特効薬・陽薬草』の輸出を、本日をもって【全面停止】する! これはお嬢さんを守るための、正当な経済制裁やで!」

「ちょっ、お前ら……! そんなことをしたら、殿下は……!」

「ええ。完全に終わりですね」

クロードが冷たく告げる。

武力による『魔獣』の排除は完了した。

そして今、情報と経済による、黒幕への【完全包囲】が完了した瞬間だった。

◇◇◇

翌朝。ルナミス帝国の王都は、前代未聞の大混乱に陥っていた。

「……で、殿下ァァァァッ!! 大変でございます!!」

王宮の執務室。優雅に朝食をとっていた王太子アルベルトの元へ、側近の文官が血相を変えて転がり込んできた。

その手には、インクの匂いも新しい『ルナミス新聞』の朝刊が握りしめられている。

「朝から騒々しいな。ポポロ村の薬局は無事に我が物となったか?」

「そ、それが……!! こ、こちらを!!」

差し出された新聞を受け取ったアルベルトは、一面の巨大な見出しを見て、持っていたティーカップを取り落とした。ガシャンッ、と陶器が砕ける音が響く。

『特大スクープ! アルベルト王太子、悪徳商会と結託し辺境の薬局を不当弾圧!』

『禁忌の魔獣【死蟲機】を投入! 緩衝地帯ポポロ村の平和を脅かす大逆罪!』

『ゴルド商会、王太子派閥への医療物資輸出を全面停止! 帝都の医療崩壊は不可避か!?』

「な……ななな、なんだこれはぁぁぁっ!?」

アルベルトは新聞をビリビリに破り捨てながら、狂乱して叫んだ。

「でっち上げだ! あのゲルトの奴、しくじりおって……っ! すぐに新聞社を弾圧しろ! 記事をもみ消すのだ!」

「も、もはや手遅れです! 新聞はすでに帝都中にバラ撒かれ、民衆が王宮の門前に押し寄せて暴動寸前です! さらに、ゼルバ商会会長の『録音された自白』が、法務省によって皇帝陛下に直接提出されました!」

「父上に……だと!?」

アルベルトの顔面から、スゥッと血の気が引いていく。

そこへ、執務室の重厚な扉がバーンッ!と蹴り開けられた。

入ってきたのは、完全武装した皇帝直属の近衛騎士団だった。

「アルベルト殿下。皇帝陛下の勅命により、貴方の王太子としての全権限を剥奪し、身柄を拘束いたします」

「ま、待て! 私は王太子だぞ! 次期皇帝たる私を……!」

「黙りなさい! 貴方の愚行により、帝国は他国との重大な外交問題を引き起こしかけ、あまつさえゴルド商会からの経済封鎖を受けました! すでに市井の病院ではポーションが枯渇し、貴方への非難の嵐が巻き起こっております。もはや、庇い立てする貴族は一人もおりません!」

騎士団長に冷酷に宣告され、アルベルトは床に崩れ落ちた。

「そ、そんな……。私が、私が追放されるというのか……。リ、リリアナ! リリアナ、助けてくれ!」

アルベルトは傍らで震えていた男爵令嬢に縋り付こうとした。

しかし、リリアナは汚いものを見るような目で彼を突き飛ばした。

「触らないでくださいませ! 権力もお金もない王太子なんて、ただの犯罪者じゃないですか! そもそも、私のお肌が荒れ果てたのも、全部あなたがセリア様を追い出したせいですわ! 慰謝料を請求させていただきます!」

「リリアナァァァァァッ!?」

愛していたはずの女にも見捨てられ、手錠をかけられてズルズルと引きずられていくアルベルト。

嫉妬と傲慢から、有能で心優しい婚約者を不当に追放した男の末路は、あまりにも惨めで、完全なる破滅だった。

◇◇◇

同日。辺境のポポロ村。

王都の修羅場など知る由もない『セリア薬局』では、朝の穏やかな光が差し込んでいた。

「——というわけで。本国からの通信によれば、アルベルト元王太子の身柄は無事に地下牢へと移送され、廃嫡が決定したそうです。彼に加担していた貴族たちも、軒並みニャングルの経済封鎖の煽りを受けて破産状態とのこと」

クロードが手元の報告書をペラリとめくりながら、朝食の席でセリアに告げた。

テーブルには、クロードの手作りである『目玉焼きとベーコンのトースト』、そして温かい陽薬茶が並んでいる。

「……廃嫡。そう、ですか」

セリアはトーストを両手で持ちながら、少しだけ遠い目をした。

かつては愛されるために必死に尽くした相手だった。だが、今のセリアの胸には、憎しみも、憐れみも、不思議なほど何も湧いてこない。

ただ、「これで、もうポポロ村の人たちに迷惑がかかることはないんだわ」という、深い安堵だけがあった。

「ねーちゃん、同情なんかしたらアカンで!」

朝からちゃっかり朝食を相伴しているニャングルが、ベーコンをかじりながら口を挟んだ。

「あいつらは自業自得や。ねーちゃんのチート薬に依存しとったくせに、その価値も分からんとポイ捨てしたんやからな。それに比べて、ワイらはねーちゃんの価値を骨の髄まで……いや、魂の底から理解しとるで!」

「ふふっ。ニャングルさんにかかると、なんだか私がすごく高価な商品みたいですね」

セリアが笑うと、クロードがふっと目を細め、熱を帯びた青い瞳でセリアを見つめた。

「商品の価値、などという安っぽい言葉で表せるはずがありません。……あなたは、この理不尽な世界で、私が持てる全ての法と武力を駆使してでも守り抜きたいと願った、かけがえのない人です」

「ク、クロード様……っ」

朝からサラッと投下された破壊力抜群のストレートな言葉に、セリアは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

「あーあー、朝からごちそうさまやで。ワイの算盤じゃ、お前らの恋愛の糖度は計算不能やわ。……さてと!」

ニャングルはわざとらしく咳払いをして立ち上がった。

「悪徳商会も消えたし、これからはこのポポロ村が名実ともに【三か国の中心】になる。ねーちゃんの薬局は、超特大の『経済特区』として保護されることになるで! これからがワイらのビジネスの本番や!」

ニャングルの言う通り、アルベルトの失脚とゼルバ商会の崩壊により、ポポロ村の価値はかつてないほどに高まっていた。

すべてを奪われ、辺境に追放されたはずのお人好し令嬢は、最高の仲間たちと共に、誰もが羨むような大成功を手に入れたのだ。

「ええ。そして、その経済特区の治安と……セリア嬢の労働時間の管理は、この私が生涯をかけて護り抜きます」

クロードが静かに、しかし絶対の決意を込めて宣言する。

「ありがとうございます、クロード様、ニャングルさん。……私、これからも二人のために、美味しいお薬をたくさん作りますね!」

「いや、ですから労働時間は1日8時間までと……ああ、また胃が……」

クロードが幸せそうに胃の辺りを押さえ、セリアがクスッと笑う。

追放から始まった辺境での物語は、理不尽な敵を完全に排除し、甘く優しい『本当の日常』へと続いていくのだった。

第14話をお読みいただき、ありがとうございます!

ついに! 元婚約者である王太子アルベルトへの【特大ざまぁ】が完了いたしました!

クロードの『新聞社へのリーク(社会抹殺)』と、ニャングルの『特効薬の輸出停止(経済封鎖)』という、剣も魔法も使わない完璧な追い込み漁!

ヒロインの価値を理解せず、暴力で奪おうとした者の末路は、全てを失う地下牢行きでした。スッキリしていただけましたでしょうか!

そして、朝から甘いセリフをサラッと吐くクロード。

「生涯をかけて護り抜きます」と、もはや公私混同全開のプロポーズですね!

次回、第一章の最終話です!

不可侵の超経済特区となったポポロ村で、セリアとクロードの甘すぎるスローライフ(過保護な日常)の本格的な幕開けを描きます。

「ざまぁ、最高にスカッとした!」「元婚約者、見事な自滅!」「クロードの甘い言葉にキュンとした!」

と思っていただけましたら……!

ぜひ、画面下(または上)にある、

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【☆☆☆☆☆】(評価ポイント)を【★★★★★】にして応援していただけると、最高に嬉しいです!

皆様の温かい応援が、最終話をハッピーに書き上げるための最大の特効薬になります!

第一章完結の第15話、どうぞお楽しみに!

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