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追放令嬢の【ドラッグストア工房】〜ヘタレ法務監査官が悪知恵と法律で敵を論破し、実は最強の氷魔法で私を過保護に溺愛してきます〜  作者: 月神世一


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12/19

私が剣を抜く理由。胃弱な監査官の正体は、最強の氷魔法剣士でした

私が剣を抜く理由。理不尽を絶対に許さない監査官は、最強の氷魔法剣士でした

「——正当防衛の要件は、完全に満たしました」

カチャリ、と。

クロードが腰に提げていた細身の鞘から、白銀に輝くミスリルの刃を抜き放った。

その瞬間。真夏のように茹だっていたポポロ村の空気が、急激に反転した。

セリアの肌を、ピリッとした刺すような冷気が撫でる。吐く息が、一瞬にして真っ白に染まっていた。

「ギシィィィィィッ!!」

宙を舞う『死蟷螂機ネクロマンティス』が、獲物を細切れにすべく、巨大な鋼鉄の鎌をセリアたちに向かって無慈悲に振り下ろした。

重力と魔獣の巨体が乗った、一撃必殺の刃。

セリアが恐怖に目を強く閉じた、その時。

——ガキィィィィィンッ!!

鼓膜を劈くような甲高い金属音と、目を開けていられないほどの激しい火花が散った。

「え……?」

セリアが恐る恐る目を開けると、信じられない光景が広がっていた。

鋼鉄をも容易く切り裂く魔獣の巨大な鎌。それを、クロードがたった一本の細身の剣で、いとも容易く受け止めていたのだ。

しかも、表情一つ変えず、片手で。

「な、なんだと!?」

遠くでへたり込んでいたゲルトが、信じられないものを見たように悲鳴を上げた。

「俺のネクロバグの腕力は、並の騎士数十人分だぞ!? なぜ、あんなひ弱そうな役人が受け止められる!」

「ひ弱……とは、随分な言われようですね」

クロードは涼しい顔で、剣を押し込んできた魔獣の鎌を、水が流れるようにスッと横へと受け流した。

突如として抵抗を失った死蟷螂機の巨体が、ズンッ! とバランスを崩して地面にめり込む。

「……セリア嬢。少し下がっていてください。ここからは、血なまぐさい暴力の時間ですから」

「ク、クロード様……? あなた、一体……」

セリアの問いに、クロードは剣の切っ先を地面に垂らしながら、自嘲気味に息を吐いた。

「……私は、暴力が嫌いです。剣を振るえば、血が流れる。圧倒的な武力で敵をねじ伏せても、残るのは相手の屈辱と、底なしの恨みだけですから」

それは、クロードの過去にまつわる痛切な実感だった。

ルナミス帝国剣術大会。

かつて彼は、その類まれなる剣の才能と氷魔法の素質で、大会を圧倒的な強さで制した。だが、公平な試合での敗北にも関わらず、相手の大貴族は理不尽な恨みを抱き、権力を使ってクロードを法務省の閑職へと左遷させたのだ。

「武力というものは、さらなる理不尽と憎悪の連鎖を生むだけです。だからこそ、私は剣を捨て、六法全書を手に取った。……『法律』という、万人に平等で、感情の入り込む隙のないルールで悪を裁くために」

クロードの周囲に、チリチリと氷の結晶が舞い始める。

彼のプラチナブロンドの髪が、魔力を含んだ冷風に揺れていた。

「けれど……」

クロードは振り返り、セリアを真っ直ぐに見つめた。

その青い瞳に宿っていたのは、怯えでも、ヘタレな監査官の妥協でもない。

絶対零度の吹雪よりも冷たく、そして激しく燃え盛る『静かな怒り』だった。

「私は、暴力が嫌いだ。……だが、何の罪もない弱者の人生を。ましてや、自分を殺そうとした悪党の命さえ救おうとする『気高い魂』を、ルール無用の暴力で理不尽に踏みにじる行為は——それ以上に反吐が出る!」

(クロード様……)

セリアの胸の奥で、ドクン、と大きく心臓が跳ねた。

彼は、セリアという『女性』に媚びて剣を抜いたのではない。

たとえ相手が嫌いな人間であっても手を差し伸べてしまう、セリアの「打算なき優しさ」という存在の在り方を、この理不尽な世界から絶対に守り抜くために、自らのトラウマである剣を抜いてくれたのだ。

「ギィィィィヤァァァァッ!!」

体勢を立て直した死蟷螂機が、怒り狂ったように咆哮を上げ、再びクロードへと襲いかかる。

左右から連続で繰り出される、目にも止まらぬ鎌の乱撃。

「クロード様っ!」

だが、セリアの悲鳴は杞憂に終わった。

クロードの動きは、まるで舞い散る雪のように美しく、そして静かだった。

キンッ! カキンッ! ギィィィンッ!

魔獣の猛攻を、クロードは最小限の動きでことごとく弾き、受け流していく。

その剣さばきは、前世の知識しかないセリアの目から見ても、芸術的としか言いようのない洗練されたものだった。

しかも、彼の振るう剣の軌跡には、キラキラと輝くダイヤモンドダストが舞っている。肌を刺すような冷気の中にあって、クロードの背中の後ろだけは、絶対的な安全圏としてセリアを温かく包み込んでいた。

「お、おいおいおい……」

背後で腰を抜かしていたニャングルが、信じられないものを見る目で呟いた。

「あのお役人サマ……ただのヘタレやなかったんか。あの死蟲機ネクロバグの動きを完全に読み切っとる……いや、遊んどるんか!?」

ニャングルの言う通りだった。

クロードは魔獣の攻撃を捌きながら、涼しい顔でため息をついていた。

「……動きが単調ですね。力任せに振り回すだけで、剣の理合いが全く分かっていない。これなら、王都の騎士団の新人の方がよほどマシです」

「ギシィッ!?」

「それに……」

クロードが剣を一閃させた瞬間。

パキィィィンッ!! という甲高い音とともに、死蟷螂機の右腕の鎌が、根元から真っ二つに切断され、宙を舞った。

「ギャァァァァァァッ!?」

魔獣が苦痛の叫びを上げ、緑色の体液を噴き出しながら後退する。

切り裂かれた断面は、一瞬にして白く凍りついていた。

「な、なにィィィィッ!?」

ゲルトが目をひん剥いて絶叫した。

「ば、馬鹿な! 鋼鉄すら弾き返すネクロバグの外殻が、まるでバターみたいに切られただと!? 一体、どんな魔法剣だ!」

「絶対零度の魔力を束ね、物質の分子結合を凍結させて脆くしたところを、ミスリルの刃で断ち切っただけです。……法務省の書類整理に比べれば、造作もない作業ですよ」

クロードは切っ先を下げたまま、静かに息を吐いた。

彼の足元から周囲数メートルにかけて、霜が降り、地面が純白に凍りつき始めている。

「さぁ、そろそろ終わりにしましょうか。私の帰りを待っている、温かいハニーかぼちゃの紅茶が冷めてしまいますので」

クロードが剣を上段に構える。

その瞬間、彼から放たれる圧倒的な魔力が、吹雪となって周囲を包み込んだ。

普段の胃弱で気弱なエリート官吏の姿は、そこにはない。

理不尽を決して許さない、気高き【氷魔法剣士】の姿があった。

(あんなに怖がりで、暴力が嫌いな人なのに……)

セリアは、その強くて美しい背中から、目を逸らすことができなかった。

彼が守ろうとしてくれている自分の「お人好し」な生き方を、セリア自身が誇らしく思えた。

そして、泥臭くも圧倒的な信念を貫くこの青年の生き様に、セリアの心は、もう引き返せないほどに強く惹きつけられていた。

第12話をお読みいただき、ありがとうございます!

「理不尽は絶対に許さない」。

クロードが剣を抜いた真の理由は、単なる恋愛感情ではなく、セリアの『気高きお人好し(信念)』を、理不尽な暴力から守り抜くためでした。

自分が左遷される原因となったトラウマの剣を、彼女の生き方を肯定するために抜く。このA型ヒーロー特有の「覚悟を決めた時の圧倒的な強さとブレなさ」を感じていただけたら嬉しいです!

そして、セリアもただ守られるだけでなく、彼のその「信念」の気高さに心底惚れ直しました。五感に訴える氷魔法の美しさと、背中の頼もしさ……女性読者の皆様にトキメキをお届けできていれば幸いです!

次回! クロードの氷魔法剣が炸裂し、強大な魔獣を文字通り一撃で『粉砕』します!

圧倒的な無双アクションにご期待ください!

「クロードの信念に痺れた!」「氷魔法のエフェクトが美しくてかっこいい!」「二人の絆が尊すぎる!」

と思っていただけましたら……!

ぜひ、画面下(または上)にある、

【ブックマークに追加】と、

【☆☆☆☆☆】(評価ポイント)を【★★★★★】にして応援していただけると、最高に嬉しいです!

皆様の星(評価)が、クロードの絶対零度の威力をさらに限界突破させます!

いよいよ第一章のクライマックス、第13話もお楽しみに!

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