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追放令嬢の【ドラッグストア工房】〜ヘタレ法務監査官が悪知恵と法律で敵を論破し、実は最強の氷魔法で私を過保護に溺愛してきます〜  作者: 月神世一


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痛快!リーガルざまぁ(後編)。「あなたの商会は本日をもって倒産です」

痛快!リーガルざまぁ(後編)。「あなたの商会は本日をもって倒産です」

「と、取引……だと?」

床に這いつくばったまま、ゼルバ商会会長のゲルトが震える声を絞り出した。

先ほどまでの傲慢な態度は見る影もなく、法務省による『緊急捜査権』の発動と資産凍結の事実に、彼の心は完全にへし折られていた。

クロードは冷酷な見下ろす視線を崩さず、懐から一枚の真っ白な書類を取り出した。

「ええ、取引です。現在、あなたの商会の資産はすべて凍結され、明日にでも法務省の監査が入ります。密輸、脱税、有印私文書偽造。これらが立証されれば、あなたは間違いなく国家反逆罪に等しい極刑……つまり、死刑に処されるでしょう」

死刑という言葉に、ゲルトがヒィッと短い悲鳴を上げる。

「ですが、今ここで『すべての罪を自白し、商会の全権と残存資産を帝国に自主返納する』というこの誓約書にサインをするなら……罪状を『悪質な経済犯罪』程度に留め、極刑だけは免れるよう、私が法務省へ口添えをしてあげても構いません」

それは、悪魔の契約だった。

サインをすれば、極刑は免れる。しかし、ゼルバ商会という組織と、彼がこれまで築き上げてきた富と権力のすべてを、自ら手放すことを意味している。

「ふ、ふざけるな! 俺の商会を……俺の全財産を差し出せと言うのか! そんなこと、できるわけが……!」

「ほう。では、死刑台へ向かいますか? 私は一向に構いませんが」

クロードが冷たく言い放つと同時に、横からニャングルがカチャカチャと魔導黒檀算盤を弾きながら割って入った。

「往生際が悪いおっさんやな。ええか、ワイが計算したところ、お前らの脱税額と違法取引の罰金、それに今回セリアのねーちゃんに被せようとした偽造借金の『慰謝料』を全部足したら……ちょうど、お前らの商会の全資産とピッタリ一致するんや」

「なっ……!?」

「つまり、お前はもう【ゼロ】なんや。サインしようがしまいが、お前の手元には1銅貨も残らん。やったら、命だけでも助かる方に賭けるのが商人のそろばん(計算)っちゅうもんやろ?」

ニャングルのトドメの言葉に、ゲルトはガクンと首を垂れた。

逃げ道など、最初からどこにも用意されていなかったのだ。

情報網で完全に裏をかき、圧倒的な法知識で退路を断つ。武力を一切使わずに敵を社会的に抹殺する、クロードとニャングルの完璧な【リーガルざまぁ】の完成だった。

「……わかった……サイン、する……」

絶望に染まった顔で、ゲルトは震える手で羽根ペンを受け取り、誓約書に自らのサインを刻み込んだ。

クロードはその書類をスッと引き抜くと、内容を確認し、冷たい笑みを浮かべた。

「確認しました。これにより、ゼルバ商会の全資産は帝国国庫へ接収されます。……営業停止処分です。あなたの商会は、本日をもって倒産しました」

クロードの宣告が、店内に静かに響き渡る。

武器を構えていた私兵たちも、雇い主が完全に破産したと知り、「金がもらえねぇなら、こんな所に用はねぇ!」とそそくさと逃げ出してしまった。

「さぁ、もうあなたに用はありません。このポポロ村から、今すぐ立ち去りなさい。二度とセリア嬢に近づかないことです」

クロードの冷酷な言葉と、マンミアたち自警団の鋭い視線に追い立てられるようにして、ゲルトはフラフラとした足取りで店から追い出されていった。

◇◇◇

騒動が去り、静けさを取り戻した『セリア薬局』。

「……終わりましたよ、セリア嬢。もう大丈夫です」

クロードが振り返り、いつも通りの、少し気怠げで胃弱そうな青年に戻って息を吐いた。

「クロード様……!」

セリアは堪えきれず、クロードの胸元に飛び込むようにしてその服の袖をギュッと握りしめた。

「ありがとうございました……! 私、本当に怖くて……。でも、クロード様が助けてくれて……あんな風に、言葉と法律だけで悪い人たちを追い払ってくれるなんて……っ」

前世のブラック薬局では、理不尽なクレーマーや上司の命令に対し、誰もセリアを守ってはくれなかった。

一人で耐えるしかなかったのだ。

けれど今、目の前にいるこの人は、己の持てる全ての知恵と権力を使い、セリアを完璧に守り抜いてくれた。

「……っ」

クロードは、胸元で涙ぐむセリアを見下ろし、ビクッと肩を揺らした。

プラチナブロンドの髪の隙間から見える耳が、かつてないほど真っ赤に染まっている。

「か、勘違いしないでください。私は法務省の監察官として、目の前の違法行為を処理しただけです。それに……あんな三流のならず者にあなたを連れ去られたりしたら、私の胃痛を誰が治すというのですか」

クロードはそっぽを向きながら、不器用に言い訳を並べ立てる。

「……ほんま、素直やないお役人サマやで。ねーちゃんが危ないって分かった瞬間、六法全書握りしめてブチギレとったくせになぁ」

背後でニャングルがニヤニヤと笑いながら茶々を入れると、クロードは「黙りなさい、悪徳商人」と鋭く睨みつけた。

「ふふっ……ふふふっ」

二人のやり取りを見て、セリアは涙を拭いながら思わず吹き出した。

「ありがとうございます、クロード様。ニャングルさんも。……私、このポポロ村に来て、お二人と出会えて本当に良かったです」

セリアが心からの笑顔を向けると、クロードは「……はぁ。また胃が痛くなってきました」と呟きながら、口元を手で覆い隠した。

照れ隠しの胃痛だということは、セリアにもすっかりお見通しだった。

「はい、特製の胃薬です。お水、淹れてきますね」

「……どうも」

平和な日常が、再び薬局に戻ってきた。

理不尽な悪徳商会を法務と財務の力で完全に論破し、セリアたちは勝利の喜びに包まれていた。

——しかし。

彼らはまだ気づいていなかった。

すべてを失い、プライドをズタズタにされた人間の『絶望』が、どれほど恐ろしい凶行を引き起こすかということに。

◇◇◇

ポポロ村の郊外、薄暗い森の中。

村から追い出されたゲルトは、泥まみれになりながら木に拳を叩きつけていた。

「クソッ……クソォォォォォォッ!!」

築き上げた地位も、財産も、すべてあの生意気な役人と小娘のせいでパーになった。

王都に戻れば、待っているのは投獄と破滅だけだ。

「許さねぇ……あいつらだけは、絶対に許さねぇ……! 俺をコケにしやがって……!」

ゲルトの目に、どす黒い狂気が宿る。

彼は懐の奥深く——法務省の差し押さえを免れた、隠し持っていたマジックポーチから、厳重に封印された一つのカプセルを取り出した。

それは、闇市場で護身用として法外な値で取引されていた禁忌の兵器。

古代の狂気が生み出したとされる魔獣、『死蟲機ネクロバグ』の封印カプセルだった。

「俺の人生が終わるなら……お前らも道連れだ。あの薬局ごと、この村を地獄に変えてやる……!」

ゲルトが狂ったように笑いながらカプセルの封印を解いた瞬間。

禍々しい魔力とともに、カプセルから巨大でグロテスクな鋼鉄の蟲が這い出してきた。

痛快な【リーガルざまぁ】の裏で、かつてない最悪の危機が、セリアたちに迫ろうとしていた。

第10話をお読みいただき、ありがとうございます!

【痛快!リーガルざまぁ(後編)】いかがでしたでしょうか!

「お前はもう【ゼロ】なんや」というニャングルの計算と、クロードの「本日をもって倒産です」のコンボ。武力を使わず、敵の全財産を没収して社会的に抹殺する、最高にスッキリする展開をお届けしました!

そして、セリアに頼られて耳を真っ赤にするクロード。素直になれないヘタレ監査官の不器用な優しさが、少しでも皆様の胸に響けば嬉しいです。

しかし……ラストで追い詰められた敵が、ついに禁忌の魔獣【死蟲機ネクロバグ】を解放してしまいました!

知略と法律だけではどうにもならない、ルール無用の暴力。

次回、絶体絶命のピンチに、ついにクロードが『六法全書』を置き、腰の剣に手をかけます!

「リーガルざまぁ、最高にスカッとした!」「クロードの照れ隠しが可愛い!」「次回のバトル展開が楽しみ!」

と思っていただけましたら……!

ぜひ、画面下(または上)にある、

【ブックマークに追加】と、

【☆☆☆☆☆】(評価ポイント)を【★★★★★】にして応援していただけると、最高に嬉しいです!

皆様の温かい応援(評価)が、次回のクロードの最強魔法剣をさらに研ぎ澄ませます!

いよいよ第一章のクライマックス、第11話もお楽しみに!

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