夢の通い路
彼はただ、走っていた。
殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺す。殺
「……っ」
どこかで、誰かが。
あえいだ気がした。
高く、澄んだ声。
殺せ。
頭の奥で誰かが叫ぶ。
殺せ。手遅れになる前に。
殺せ。殺せ。
死にたくないんでしょう?
声が、踊る。「白い悪魔」が、すべて染め上げていく。思考も、感情も——
〝何度も死にたくなった。何度も廃人になりかけた。何度も狂いかけた。それでも必死であがいて苦しんで生き続けたのはきっと……、きっと、今日のため〟
——いつの、声だろう。
〝さすが、俺の派手髪仲間〟
知ってる声。それぞれつぐみさんと瀬戸さんの声だ。でも、知らない言葉。
〝できれば、殺生病感染者を殺したくはない〟
また、聞いたことのある声だ。今度は医長さん。でも、そんなこと言われた覚えは。
〝もし、よかったら、なんだけど……その、このあと……い、一緒に勉強会、とか……〟
知らない、声だ。遠慮がちで、それでも信念を感じる声。こんな声、帚木慶は知らない。
〝おれは見届けるだけだ。おれは最古参で、白道優人のルームメイトで、お前の友達だからな〟
この、すべて任せられそうな頼もしい声も。
なのに、どうして。
どうして、こんなにも鮮明に「思い出せる」んだろう。
ボクは——。
〝惨殺、だった〟
——誰の、声だろう。
〝内臓をぐちゃぐちゃにした。腸は細切れだったし、心臓は握りつぶした。本当はそこまでする必要ないのに、ぼくはいつもそうやって殺してきた。――――蛍も、最初のルームメイトも〟
知らない光景だ。
"そんな『白い悪魔』と、きみは仲良くなりたいっていうの?"
〝優しくて正しい人だと思った〟
違う、知ってる言葉だ。
痛い。心臓じゃない。頭、額の奥。痛い。ボクは——
痛みの向こう。
尋常じゃない音。例えば、誰かを蹴り飛ばすような音。
「っ天花! 大丈夫?」
知っている声。でも、記憶よりも明瞭な響き。その声は。
「つぐみ? なんでここに?」
頭痛。内側から無理に押されているような、ひび割れていくような、そんな痛み。
でも、この体は走っていた。
そして。
この手は、刀になっていた。




