時間は待たない
夜の沈黙をかろうじて破るように、風がクロスゲートギルドに吹きつけていた。
一つの人影が威厳を持って歩み寄ってくる。精巧な鎧を身に纏い、桃色がかったピンクの髪が風に揺れていた。
両腕で扉を叩き開けた。
「リオラ!報告を」マエナが命じた。
「はい、指揮官」リオラはギルドの敬礼をしながら答えた。
指揮官は無表情のまま黙って聞いていた。
マエナの目が、まだ血で汚れた床に向いた。
「我々のヴォイドストライダーの状態は?」
「医師が安定させた後、意識を失いました。今は奥の部屋で休んでいます」
マエナは腕を動かし、アルドリックについてくるよう示した。「目覚めたらすぐ知らせて」
「はい、指揮官」リオラは頷き、胸のギルド紋章に拳を当てた。
アルドリックはマエナに続いて三階へ上がった。そこに彼女の執務室があった。
指揮官は執務机へ真っすぐ向かった。アルドリックは扉を閉め、待機した。
机の前に立った瞬間、突然凄まじい力で殴りつけ、机を完全に破壊した。
その音は一階にいるリオラのところまで聞こえた。彼女は顔色一つ変えず、奥の部屋へと歩き続けた。
アルドリックは反応しなかった。机がそんなふうに吹き飛ぶのを、もう何度も見てきた。
マエナは破壊した机を見つめたまま立っていた。それからグローブをはめた手を額に当てた。
「なぜ今なのか」マエナがつぶやいた。
目を閉じ、ゆっくりと息を吸った。
アルドリックのほうへ向き直った。
「シンカ海のライゼンに連絡を取る必要がある」
「今すぐ出発できます」アルドリックが言った。
指揮官は腕を組み、ゲートが見える窓のほうへ向いた。
「アンブラルナイトを一人送ったばかりだ。許可なしでもう一人は送れない。特に今は、カエルスを送ったことでシンワ王国との関係が緊張している」
「それに、ヴォイドストライダーを独断では送れない。私とあの老人が承認したミッションが必要だ」
「ミッションを承認して、ライゼンに正当化させれば」アルドリックが毅然と言った。
「それだけでは足りない。ギルド間のミッションはヴォイドストライダー最大四人という制限がある」マエナは指を動かし、腕を軽く叩き続けた。
「あの情けない王を刺激せずに別の許可を取るのは不可能だ」
マエナは沈黙した。アルドリックは押さなかった。
「違う。Aクラスの特別ミッションと合わせて行う」
「なんだって!?そんなに待てない、マエナ、それまでにカエルスが死ぬ!」アルドリックが一歩前に出て声を上げた。
「状況を理解していないとでも思うか?」彼女は冷たく返した。目は地平線に固定したまま、アルドリックは踏み出した一歩を引き戻した。
マエナは窓へ向かって歩き始め、ガラスの向こうを見つめた。
マエナが足を止めた。「カエルスは八人のヴォイドストライダーを率いて調査に向かった」
「戻ってきたのは一人だけだ」
アルドリックは音を立てずに奥歯を噛み締めた。
「我々の最精鋭ヴォイドストライダー十人と一緒にお前を送り込むつもりだ」
マエナは腕を広げ、窓ガラスに片手の手のひらを当てた。
「そのために、特別ミッションを前倒しにする」
「それはできません」アルドリックが反論した。「Aクラスを鍛える八ヶ月を失うことになります。それは大きすぎる」
「学生十人の命を危険にさらすことになる」
「わかっている」とマエナが言った。
短い沈黙を最初に破ったのはアルドリックだった。
「非常に危険です、マエナ。カエルスを攻撃した怪物が来たら、学生十人を守りきれない」
「五人だ」と彼女はアルドリックのほうへ歩きながら言った。
「明日、五人の候補者の選抜を始めるよう教官たちに命令を出す」
「お前も含めてだ」
マエナはアルドリックの前で立ち止まった。「自ら五人のヴォイドストライダーを選ぶ。五人は通常通りお前に同行する。残りの五人は学生に変装して入る」
「ミッションを前倒しにするだけでなく、変装したヴォイドストライダーも連れていくのか」アルドリックは額に手を当てながら言った。
「リスクが高すぎます。それに、今年は特別な年だ」
アルドリックは手を下ろし、マエナを見て尋ねた。「シンワ王国をどう説得してミッションを前倒しにするつもりですか?」
マエナは背を向け、粉砕した机の残骸のほうへ歩き始めた。
「合同ミッションの協定は両世界の間で重みを持っている」
「ライゼンなら正当化できるはずだ」
アルドリックはAクラスのことを思い出した。
「……リスクが高すぎます、マエナ」声が掠れた。
指揮官は横目で彼を見た。「もう決めた、アルドリック」
乾いて鋭いその声は、言葉以上のことを語っていた。
意味を理解し、アルドリックは視線を落とした。
「リオラに上がるよう伝えてくれ。あの老人への手紙を書き始めて、伝令を手配する必要がある」
「できるだけ早く送り出さなければ」
アルドリックは黙って執務室を出た。
一階へ降りていった。足が折れないようだった。
降り切ると、すでに上がる準備を整えていたリオラがいた。
「マエナが呼んでいる」
「すぐに参ります」と彼女は答えた。
途中で立ち止まった。「私……カエルスのこと、申し訳なく思います」
「私もだ」アルドリックは彼女が上がっていく中でつぶやいた。
クロスゲートの職員たちは、アルドリックがぼんやりと見つめていた床の清掃を終えていた。
磨かれた石が輝いている。血はまるで最初から存在しなかったかのように消えていた。
時間は新しい日を連れてくるのを待たなかった。
誰にとっても、避けられない運命がある。
アルカノーヴァは温かな光の筋で染まっていた。学生たちが装飾された正門をくぐり、最初の授業へと向かっていた。
足音と会話の音が、再び廊下を飾り始めた。
学院での三日目が始まった。
エラーラはディランとともに入り口でカインを待っていた。走ってくる彼は二人を驚かせなかった。カインは遅れてきたことをぼやき、ディランは笑い、エラーラは誰よりも早く来ていることを自慢した。
グループは本館へと歩き、そこで別れた。
エラーラは別れを告げ、次の授業へと走っていった。二人の友人は指定された教室へ向かった。
アルカノーヴァの鐘が二度鳴り、学生の授業が始まった。前日と変わらない学院の雰囲気。
ため息が混じった授業の声、先生たちが伝える講義、ノートを取る生徒たち。最初の二時間を彩るメロディー。
鐘の音が再び一度だけ鳴り、最初の授業の終わりを告げた。
学生たちは各教室で自然に形成されていく小グループの中で固まっていった。
廊下に人の流れができ、グループは次の授業へと向かった。
カインの歩みは一歩ごとに目を覚ましていった。
「もう少し早く寝ることを覚えればいいのに」ディランが揶揄うような口調で言った。
「三日間眠らなくても耐えられる。理論が唯一の弱点だ」
カインは腰のサーベルを二度軽く叩いた。
「今度こそこいつにうまく働いてもらわないと」
「ははは、外してくれるなよ」ディランが鞘を指差しながら言った。
カインは足を速めた。「目標に向かって投げ飛ばせばいいだけだ」
ディランは笑みを浮かべ、歩を早めてカインの背中を軽く押した。
Aクラスの他の生徒たちとともに訓練エリアへと歩いていった。
「この授業が始まるのが待ちきれない」ディランは腕を伸ばしながら言った。
「昨日も同じこと言ってたぞ」カインは友人に微笑みながら言った。
鐘が二度響き、学生たちは部屋に入った。
アルドリックはすでに待っていた。木の的の前に立っている。
その顔にはわずかに目の下の隈があったが、立ち姿に疲れは微塵もなかった。
「今日は二グループに分ける。第一グループは昨日の基礎の練習を続ける。第二グループは俺と訓練する」
ルカンが手を上げた。「なぜ分けるんですか、先生?」
「ああ、そうだな、サーベル少年。一週間後に特別ミッションがある。選ばれた五人の生徒がネテリアの学生たちと合同で狩りをする」
生徒たちの間で小さなざわめきが起きた。
「危なくないですか?」
「二年前、姉がそのミッションに参加しました」
「私は行きたくない」
ディランがカインのほうを向いて凍りついた。カインが右目に手を当てるのを見たからだ。
「プロのヴォイドストライダーとアンブラルナイトが同行します」
ざわめきが続く中、ピンクの髪をした女子生徒が手を上げた。
「失礼ですが、教官。このミッションは四月に行われるはずではないですか?」
アルドリックは頭を掻いた。「通常はそうですが、今年は特別です。指揮官がそう決めました」
生徒たちは互いに顔を見合わせた。
「こんなに突然、事前に知らされてもいない」
「本当だ、姉が行ったのは四月だった」
「もうお姉さんの話はいいよ」
「十人の学生が行くって聞いてたけど」
教官は頭を掻いた。「行きたくない者は行かなくていい」
「今日は評価を行います、自分の潜在性を試す機会だと思ってください」
「今日が終わったら、参加を断ることができます」
ホールの中央へ歩いていった。
「選抜はシンプルだ、俺と一対一で戦ってもらう」アルドリックは規定のサーベルを抜いた。
アルドリックから湧き出た圧を感じて、何人かの生徒が小さく一歩引いた。
ルカンは自信満々にサーベルを抜いて一歩前に出た。
「完璧です。ここでは前のランクは関係ない」
「その通りだ、サーベル少年、来い」
ルカンは一瞬も待たずにアルドリックへ突進し、刃にマナを集中させて下からの斬り上げを放った。
アルドリックは一歩引くだけで、同時にルカンのサーベルを自分の武器で弾いた。
ルカンが一瞬バランスを崩した。「これを避けろ!」サーベルを空中に持ち上げながら叫ぶ。
振り下ろそうとした瞬間、アルドリックが手首を掴み、続けて柄頭で腹を打ち込んだ。
「攻撃に全マナを使ったせいで体に何も残っていない。それでは攻撃しか考えていないということだ」
「ダメージをまともに受けることになる」
ルカンは武器を手放して床に倒れ、腹を押さえた。
「人間が相手でなくても、そんな隙を獣に見せたら致命的になりかねない。第一グループ」
ルカンは強く奥歯を噛んだ。サーベルを拾い、一言も言わずに木の的のほうへ歩いていった。
「次は誰だ?」アルドリックが聞いた。
全員が沈黙した。
「では一人ずつ呼ぶ。強制ではない」紙切れを取り出しながら言った。「名前を呼ぶ。行きたくない者はそのまま的のほうへ歩いていい」
「ヤレル」
「はい、教官」
生徒がアルドリックのほうへ歩いた。少しの後、ヤレルが最初の動きを見せた。
短いやり取りの後、床に倒れた。
「マナのコントロールがまだ非効率だ、動きはいいが攻撃に重みがない。第一グループ」
アルドリックは次々と名前を呼び続けた。呼ばれると歩み寄り、試験が始まった。
一人の生徒が一言も言わず直接木の的のほうへ歩いた。
その足音の静けさが一部の生徒に迷いをもたらした。名前を呼ばれると同じことをする者が出てきた。
「ディラン」
力強く声を上げた。「はい!」教官のほうへ迷わず歩んでいく。
アルドリックはその足取りにわずかな緊張を感じ取った。
「ただの試験だ」
ディランはサーベルを抜き、目を見ながら言った。「俺にとってはそうじゃない」
待たずに、ディランはアルドリックへ素早く歩み、二回の正確な突きを放った。
アルドリックは大きく一歩引いてかわした。ディランは小さなジャンプを交えながら、教官の周りを回ろうとした。
素早い突きを繰り返しながら、素早い足で教官の周りを旋回した。
アルドリックはいくつかを弾き、残りをかわした。
「その距離は片手サーベルには合わない」アルドリックが言った。
「俺は槍のほうが好きだ」ディランはペースを落とさずに答えた。
アルドリックが笑った。「俺もだ」
最後の攻撃を力強く弾きながら同時に踏み込み、剣の刃をディランの首に当てた。
「戦い方が非常に守備的だ。試合の空間をコントロールしようとしている」
ディランだけに聞こえるよう声を落とした。「まるで誰か他の者が最後の一撃を放つのを待っているかのようだ」
「第二グループ」
教官の言葉にディランは安堵を感じ、カインのほうを振り返った。
カインが手を振って、微笑みかけた。




