夜に届いた返事
日が暮れかけていた。カインはカゲヤとシラミネが名前をつけた丘、世界の眺めでの訓練を終えるところだった。
長い二日間だった。ミズキリから戻った翌日は大吾の狩りに同行し、素材の準備と魔物除けの装置の設置を手伝った。
この日、シラミネが狩りに出て新しい盾のおかげで組み手に勝った。ユキシロが当然不公平だと抗議したが、大吾はそれを認めた——解放されたダンジョンを探す間、装備が充実している方が都合がいいからだ。
狩人たちはすでに戻り、それぞれの特権を選び終えていた。
丘の人気のない一角で、カインが体に纏わせていた風がゆっくりと霧散した。
(制御が上がってきた。この体の核も、前ほど文句を言わなくなった。体にマナを溜めて制御を磨くという考えは正しかった……少し痛いが。カゲヤが二十歳というのが余計に難しくさせている)
呼吸を整えてから立ち上がり、村へ向かった。
(続けたいが……明日は再生だ。あれはやらないといけない。大吾との約束だ。本当に行かせてもらえるといいんだが——逃げる羽目にはなりたくない)
村に戻りながら、ノゾミが家の前で赤いサクラソウの世話をしているのを横目で見た。
家族との夕食は温かかった。今夜のマナへの祈りはカインが唱えた。コハルはいつも通り、ホタルに今日カツラギのところで何があったかを話させた——大吾が娘の一日を把握できるように。
夜になり、全員が部屋に引き上げた。
その頃、イワカミが村の外周を見回りしていると、一つの人影が近づいてくるのに気づいた。
最初に目に入ったのは、その人物と同じくらいの高さがある槍だった。防御の構えを取った。
「誰だ」
人影が近づいた。村の松明の光が、膝まで届く太い一本の三つ編みに結われた、深く鮮やかな金色の髪を照らした。
「すみません、ここが朝霧の村ですか」
イワカミの前に止まったのは若い女性だった。表情は穏やか。瞳はオレンジ色——火のオパールのように情熱的な色をしていた。
濃い色の鎧、脛当て、腕当てを着込んでいた。胸当てには見覚えのある紋章が刻まれていた。一目で分かった。
「はい、朝霧の村へようこそ。こんなに早く返事が来るとは思っていませんでした」
「面白そうだったので。入ってもいいですか」
「もちろん。案内しましょうか」
「お気遣いなく。見回り中のようですし。一人で行きます」
返事を待たずに村へ入っていった。
イワカミは自分の持ち場に戻るべきかついていくべきか少し迷った。自分の問題ではないと判断した。
彼女は村の中心まで歩いた。笑みを浮かべながら地面に槍を突き立てた。
大きく口から息を吸い込んだ。
「アサヒ様ァァァァ!!!」
その叫びは、早めに眠ろうとしていた村人たちを全員叩き起こした。
「風守愛歌、返事を持って参りましたァ!!」
ベッドに横になったまま、カインは木の天井を見上げていた。瞳が全開になっていた。
(冗談だろう。悪趣味にもほどがある)
廊下に重い足音が響き、ドアの前で止まった。
「ん。着替えろ、カゲヤ」
(帰れと言ってくれ……)
「すぐ行きます」
外でまた愛歌の声がした。
「準備できてますよォ!!」
廊下で大吾が唸った。
(長い夜になりそうだ)
着替えてから大吾と一緒に外へ出て、愛歌のところまで歩いた。
「アサヒ様、返事を持って参りました」
「ん、聞こえた」
愛歌がカゲヤを頭のてっぺんから足の先まで二度評価した。
「……ずいぶん鍛えてきたんですね」
(カゲヤのことなんか分かっていない)
「随分変わりましたか」
「全然分かりません」
……
(子どもの頃に引き合わせたんじゃなかったのか)
愛歌が槍を地面から引き抜いた。
「では、どこで戦いますか」
「愛歌、今夜戦うには遅すぎる」
「暗い中での訓練もしています」
「ん、そういう意味じゃない」
「俺も気にしない」
愛歌が歯を見せて笑った。
「そんな条件を出した人間に会えて、ちょうど期待通りです」
「夜に帰るのは危険だ」
「武装していますが。何が問題ですか」
……
(この子には直接的に言わないといけない)
「明日戦う方がいいと思わないか」
「話しに来たわけじゃない」
「俺が勝った後、夜にお前を家まで帰したくないということだ」
愛歌の笑みが広がった。
「そうですね。まだ返事を言っていませんでした」
大吾の方へ向き直った。
「風守家はムスビガリの条件を受け入れます。こちらの条件は一つ。私が勝てば、カゲヤを我が家族に迎えます」
「ん、そうだろうと思った」
(そう思っていたなら、なぜ使者を送ったんだ)
「では話をまとめられますか、アサヒ様」
「ムスビガリを始めるのはこちらだ、愛歌。その条件は出せない」
「これが返事です」
「『我々の』返事か? それとも『お前の』返事か」
「……私の返事です」
(嘘を維持できない子だ……)
「ここで待て」
大吾が村の倉庫に向かい、数分後、木の槍と木の剣を持って戻ってきた。
「外へ出よう」
愛歌が笑みを浮かべてついていった。カインは今すぐ寝たかった。
(こんなことになると分かっていたら、今日はあんなに訓練しなかったのに。でも、あいつに勝つくらいの余力はある)
村外れの小さな空き地に着いた。丘の近くだった。愛歌はすでに木の槍で準備を始めていた。
「ルールは、アサヒ様」
「ん。致命傷はなし。降参か、立ち上がれなくなった方の負け」
(立ち上がれなくなった方、か。透けて見えすぎるぞ……)
カインは愛歌を見た。槍の重さとバランスに慣れるために素振りをしていた。
カインは剣を動かしながら、両手剣でないことを恨んだ。
「構えて」
愛歌が構えた。体を横に向け、腕を固定して、槍の穂先をカインへまっすぐ向けた。
愛歌の制御のレベルを見た瞬間、カインはアルドリクを思い出した。
(あの構えは接近戦用だ)
カインには他に知っている構えがない。両手剣用のものしか学んでいない。だから不格好で変な形に即興した。
「それは何ですか」
「俺の構えだ」
「農民でも威嚇しているみたいですね」
「早く終わらせよう」
大吾が唸って、試合開始を告げた。
カインは斜め方向に走って愛歌を回り込もうとした。彼女は小さく制御された足さばきで追った。
(近づけば串刺しだ)
小さく踏み込んで、彼女の間合いぎりぎり外に立った。愛歌はその挑発に反応せず、カインが引くのを待った。
カインは彼女の目の集中を見て、出たり引いたりを繰り返した。
愛歌の目には、彼が野兎のように自分をからかっているとしか見えなかった。
もっと踏み込んで最初の打ち合いに持ち込もうとした。ならずにまた引いた。
愛歌が低く唸った。
「この程度でムスビガリに戦いの条件を出したのか」
カインがまた踏み込んで、今度は槍の穂先をわずかに叩いてから引いた。
「くらえ!」
愛歌の唇が開いた。その小さな一撃と、カゲヤがまた跳んで離れたのを見て。
回り込みを続けた。彼女がその技術と訓練で自動的に体を向けた。
ただカインには、彼女の目が輝いて、眉間に皺が寄るのが見えた。
「ははっ! ついてこれないな。降参するか」
大吾は真剣な顔で息子がわざと道化を演じるのを眺めていた。
もう一度踏み込んだ。今度は愛歌が大きく一歩踏み出して先読みの突きを放った。カインは体を傾けて、大げさに後ろへ跳んだ。
(あと少し)
「いい動きだ。それでもまだ遅い」
愛歌は「とても遅い」という部分を聞いた。
動きを止めた。構えはまだ完璧だった。風が太い三つ編みを揺らした。
カインはカゲヤの体が文句を言い始めているのを感じた。
(疲れてきた。これで通じてくれないと困る)
もう一度回り込んだ。彼女は向かなかった。
今度は本気で踏み込むと決めて、制御しながら加速した。
愛歌が瞬時に向き直り、精度と力を込めた突きを放った。
槍の穂先がカゲヤの顔のすぐ横を通った時、愛歌は彼が笑っているのに気づいた。
微小なマナ爆発で加速させた剣の柄頭が、槍の柄を叩いた。愛歌はかろうじて手から離さなかった。
カインが全力で斬りつけた。肋骨を狙って直線に。
彼女はギリギリで体を横に逃がして、指で槍を回して防ごうとした。
木の剣が鎧に当たり、愛歌を宙に浮かせて地面に叩きつけた。
衝撃で肺の空気が抜けた。それでもほぼ即座に立ち上がった。
(ああ……そうか。降参か立ち上がれなくなった方の負けだった)
愛歌が呼吸を取り戻した。
「なるほど……戦い方を知っているんですね。ずっとからかっていた」
唇が折れ曲がって、カインには居心地の悪い笑みになった。
「ありがとう、ルールに感謝します。最初の一撃で終わりなら負けていた」
瞳が開いた。三つの濃い輪が目に浮かんだ。虹彩が深い緑色に変わり、夜を照らそうとするように輝いた。
体が彼女に従う風で包まれた。辺りに与える圧力は息が詰まるようだった。
その顔は力を誇示しているのではなかった。怒っていた。
カインが大吾を見た。
「殺されそうだ」
「自分に勝てる相手を望んだのは、お前だ」
「殺さない……ただ……本気でやる」
槍が一瞬、致命的に見えた。
「ん。愛歌、やりすぎるな。カゲヤは霊眼を持っていない」
「持っていないんですか。ちょうどよかった、どうせ接近戦でやりたかったので」
愛歌が構えた。
「また野兎みたいに跳んだら、明日ベッドから出られるとは約束できない」
(選択肢は二つ。技を使わず彼女に負けて、結婚して、ぼこぼこにされる。あるいは……)
カインが構えた。体を横に向けて、武器を頭の高さまで上げ、剣先を地面に向けた。
(本気でやる。ここから先にもっと大事なことがある。カゲヤがどう見られるかより、俺は俺でしかない。言い訳は後で考える)
大吾が構えを見て何も言わなかった。愛歌の笑みはまだ怒っていた。
「やっと本気にしてくれますか」
「毎日お前の声で起こされるのは嫌だと思っただけだ」
「甘やかされた坊ちゃんに毎日跳ばれるのも嫌です」
カインは一瞬だけ目を閉じ、全身の力を抜いて、開いた瞬間に足元にマナ爆発を起こして愛歌へまっすぐ踏み込んだ。
大吾が完全に集中した。
愛歌は驚いた。追えないからではない——そんな加速を予想していなかったからだ。
カインが間合いに入った瞬間、足元にもう一度爆発を起こして土埃を愛歌へ向けた。
愛歌が後ろへ跳んだ。風を使って土煙を払うことはしなかった。
カインはその煙の中を一直線に抜けた。愛歌がまだ完全に構えていないのを利用した。
愛歌の槍先がまっすぐカインを捉えた。だが、愛歌は突きを放たなかった。
カインが方向を変えて空中から斬りつけた瞬間、両方の木の武器が強くぶつかった。
霊眼の状態はマナの変化を感知させてくれる。
しかし、かろうじてしか反応できなかった。
カインは爆発を使って体を加速させながら斬り続けた。愛歌はなんとか防いでいた。
爆発を剣に乗せることはしなかった——木では持たないと分かっていたから。
愛歌は槍で攻撃を受け止め続けていたが、カインの圧力に押され、後退を余儀なくされていた。
一撃で槍を弾かれると、愛歌は柄の末端を掴み、脚を開いて体ごと激しく回転させた。
カインが地面に落ちた。片手をついてバランスを保った。
愛歌は自分に課していた制限を完全に忘れた。
槍が体の動きに合わせて動き出し、エメラルドグリーンの風を纏った。
マナの斬撃をいくつも放った。だが、それらは地面を裂かなかった。切るためのものではない。カゲヤを意識を失うまで打ち据えるためのものだった。
爆発を使い続けたことで、カインは腕と脚にじんじんした感覚が出始めていた。制御を磨いても、それだけ使えば限界は来る。
斬撃の一つを弾くために剣にマナを纏わせなければならなかった。
元の自分の身体との違いのせいで、この身体ではエーテル合金と爆発を同時に使えば、マナに無理がかかる。
武器への纏わせをやめて、二回の爆発で瞬時に愛歌を回り込んだ。
霊眼でまばたきせずについてくる。
愛歌が突きを放った。空気が凝縮されて飛んでいった。
かろうじて躱した。だから愛歌がもう距離を詰めていたことに気づくのが遅れた。
本能だけで体を回して、その突きを数センチで躱しながら信じられない速度で斬りつけた——何も当たらなかった。
愛歌は剣が半分に折れているのに気づかなかった。カインが木にマナ爆発を使っていた。
風を纏った槍がカインの腹にゆっくりと向けられた。愛歌が次に何をするか、完全に分かった。
視界に入ったのは愛歌、地面、空——それが何度か繰り返されてから地面に叩きつけられた。
カインはすぐ立ち上がろうとした。体が言うことを聞かなかった。
大吾が止める必要はなかった。愛歌はすでに完全に落ち着いていた。霊眼が消えた。目が元の色に戻った。
彼女はカインが空を見上げている場所まで歩いてきて、視界に入り込んで笑った。
「私の勝ちだと思います」
答えようとしたが、咳が先に出た。
「……ああ。お前の勝ちだ」
(さて……どうする。大吾からも愛歌からも逃げないといけない。風の枷を二つ同時にはめてしまった)
愛歌が手を差し出して座らせようとした。カインは素直に受け取った。
「最後のあれは何ですか」
「ああ……」
(そうだった……剣にマナ爆発を使ったんだ)
半分に折れた剣が、座っているすぐ横に落ちているのを見た。
「熱くなった」
彼女が折れた武器を見て笑った。
「私もです」
大吾が近づいた。表情は読めなかったが、満足と不満の間で揺れているように見えた。
「カゲヤの条件を満たした、愛歌」
「はい、アサヒ様。勝ちました」
「ならば後は名契り高だけだ」
愛歌がため息をついた。
「必要ありません。私が……降参します」




