すれ違う義務と選択
太陽がようやく地平線から顔を出した頃、大吾とカインはすでに荷車の前にいた。
隆世がすでに食料や品物、そしていくつかの贅沢品を積み込んでいた。
「あぁ……大吾ちゃん、いつも通り早いね……いつも通り疲れた顔で」
「ん。早く村に帰りたい」
(そう言いながら、最初に鍛冶屋に寄ったくせに)
カインが大吾の片手に持っているものを横目で見た。かなり長く、赤い布に包まれていた。
「それも知っている」
大吾は時間を無駄にせずに荷車に乗り込んだ。
「行くぞ、カゲヤ」
乗り込む前に、隆世がカインを引き止めた。
「賭けを忘れないで、レトウ——ちゃん」
「忘れるつもりはない。欲しいものをいくつか見つけた」
「面白い……結果は分かりきっているとしても、わくわくしない」
(お前の三つ編みを全部切ってやる)
睨みつけたが、隆世にはまるで効かなかった。荷車に乗り込んだ。
「マナがお前たちを守るように」
「マナがお前を守るように、隆世」
荷車が動き始め、ミズキリから離れていった。
道中は沈黙が続いた。軍の検問所でだけ会話が生まれた。
旅は同じくらい遅かったが、違う重さがあった。兵士たちの挨拶。質問。大吾が荷車を操る丁寧さ。
カインが兵士を数えた。昨日より二人少なかった。
……
(もう部隊の再配置が始まっている。あの秘書は怖い)
荷車の中を振り返った。行きに使っていた場所が今は荷物で埋まっていた。
(この二日間は永遠に感じそうだ……)
昼頃にミズガイを通り過ぎたが止まらなかった。行きと帰りで大吾の目的が違うのだろうとカインは推測した。
考えた末に、カインは決めた。
「亀裂についてどう考えているか」
「ん。村の安全を優先する」
(そういう意味で聞いたんじゃない)
「大吾がどうしたいかを聞いた」
……
「複雑だ」
「シウンにヴォイド・ストライダーがいると言っていた」
「ん。言いたいことを言え」
「冗談で言っていたわけじゃない。俺なら接触できる可能性がある」
「ミズキリがすでに試みた」
「俺の方が可能性が高いと思わないか」
「言いたいことは分かる、カゲヤ。聖花道へまた行かせるつもりはない」
(分かっていた。お前が望むのは孫だ)
「前回と同じことにはならない」
大吾は進みを止めずに、横目でカゲヤの腹部を見た。
「風守との話がまとまりかけている。リスクは取れない」
「彼女だけに頼りすぎない方がいい」
「ん。もう決めた」
(なら強引に変えさせるしかない)
日が暮れかけた頃、カインが行きに遠くから見ただけの村に立ち寄った。一晩を小屋で過ごした。大吾への扱いは変わらなかった。
翌朝、朝食をふるまってもらってから荷車は帰路を続けた。道中、カインはシウンへ行く方法を考え続けた。
考えすぎて、計画を立てることをやめた。ただ退屈した。あれほどの切迫感があっても、荷車のあまりにもゆっくりとしたリズムが意識を揺り籠に乗せていた。
大吾がカゲヤに道を見ていろと言う必要はなかった。注意を向けていたからではない。
カインは学んでいた——石を数えるより、遠くのものを数える方がまだましだ。
(今日で三台目の荷車だ)
ちょうど二つの検問所の間にいた。
興味もなくゆっくりまばたきしていると、何か変なものに気づいた。近づいてくる荷車が、前の車よりも多く埃を立てていた。
大吾が速度を落とさずに端へ寄せた。
荷車が近づいて速度を落とし、横に並んで止まった。
「南に向かっているなら引き返すことをお勧めします」
(道は二方向しかないが……)
「ん。なぜだ」
「道に白い熊が出ました。一緒に検問所まで引き返して助けを求めた方がいい」
「行って知らせてくれ。道で会わなければ、あいつが村に向かうかもしれない」
「続けるつもりですか。お勧めできません。まだ道にいない保証はありません」
「だから続ける。もう一つの検問所に知らせてくれ」
「ここに残って説得するつもりはない。あの獣と会わないよう、マナがお二人を守るように」
男は返事を待たず、荷車を走らせて去っていった。
大吾も進みを再開した。
「カゲヤ、熊と遭遇したら、荷物を守ることがお前の役目だ」
(ちょうどよかった)
「荷車には触れさせない」
唸りはしたが、大吾は進みを止めなかった。
カインが目で熊を探した。探すまでもなく、二人同時に見つけた。
「亀裂のせいだろう。あの熊の縄張りはアマイア森の近くにある」
「それは森の奥か」
「ん。俺たちのちょうど西にある。その森の南だ」
(ちょうど名前の違う森が二つ並んでいるとは混乱しそうだ。でもこれで場所が分かった)
「手間は取らせない。誰かが犠牲になる前に動く」
大吾が振り返って斧を取ろうとした瞬間、カインは剣を抜いてマナの爆発で踏み込んだ。
小さな爆発が荷車を揺らした。
(何も隠さない。そんな時間はない)
大吾が斧を手に素早く振り返り、荷車を下りようとした瞬間に止まった。
カゲヤはすでに熊の上にいた。最初の踏み込みも、その後の二回の爆発も見えなかった。
空中でカインは刃にエーテル合金を纏わせた。体を回転させて刃を伸ばし、もう一回の爆発で加速させた。
首に二撃が入った。切り口は綺麗ではなかったが、力は十分だった。
頭部が先に落ち、次にカインが、最後に体が崩れた。
ゆっくりと息を吸って、使ったマナを確認した。
やったことに気を向けることなく、荷車へ戻った。
大吾の唸りは低く嗄れていた。その表情が音に伴っていた。
カインが正面に立った。
「シウンへ行かせてほしい。村近くの亀裂を閉じなければならない」
「命令に従わなかった」
「荷車を降りるなとは一度も言われていない」
「ん」
……
「乗れ。知らせなければならない。この辺りに他にも熊がいるかもしれない」
カインが荷車に戻り、動き始めた。大吾が話すまで時間はかからなかった。
「もう決めたと言った」
「納得していない」
「お前はいつも従わない。ふざけるのをやめろ、カゲヤ」
「ふざけているように見えたか」
カインが大吾の方を向いた。
「本気だ」
「ん……」
……
カインは来ない返事を待っていた。
(何か言え、大吾……お前が断っても、シウンへは行く)
荷車はゆっくり揺れ続けた。
「もう一年行っていた。義務を果たす時だ」
「喋りに行くわけじゃない」
「ムスビガリの条件を送った」
「断っているわけじゃない。ただ楽にはさせない」
「お前の場所は村だ」
(違う……俺の場所はあそこじゃない)
「やることがある」
大吾が操縦棒を強く握った。
「ん、お前の母親が心配する」
「戻る」
「ふざけるな、カゲヤ。前回のことがあってそれが言えるか」
「やれと言っているのか、やるなと言っているのか」
「言ったことに責任を持て」
「それをやっている」
「言い訳に聞こえる」
(ぐるぐる回っている……どうした)
「はっきりしてくれ。一生ここで遊んでいろというのか!?」
「村の中ならそれでいい!」
大吾がこれほど声を張り上げたのは初めてで、カインは思わず後退して完全に固まった。
カゲヤの目が、前を向いたまま視線を動かさない父親を見ていた。途方もない何かが肺を締めつけた。
カインは口を閉じて奥歯を噛んだ。出てきそうになった言葉を止めなければならなかった。
引き下がること。
荷車に手をかけて大吾に背を向けた。
(くそ……)
左手が上がって右目を覆った。
(ここにはいられない……デモ、ただ出て行くわけにもいかない。どうすればいい、カゲヤ)
旅は沈黙の中で続いた。荷車のペースが少し上がっても、フユノへ続く検問所は前より遠く感じた。
大吾が白い熊のことを兵士たちに報告して、道の巡回を頼んだ。
ミズキリに行く前なら奇妙に思えた頼み方だった。
それから日が沈みかけた頃、ようやく朝霧の村に着いた。
イワカミが入口で笑顔で迎えた。
「思ったより少し早かった、アサヒ。お前が急いだとは思わなかったが」
「ん。長い旅だった、イワカミ」
大吾が荷車を村の中心へ進めた。
「交換を始めよう」
「大勢が待っていた」
カインは下りる準備をしていた。
「そこにいろ、カゲヤ。どうやるか覚えろ」
人が集まるのに時間はかからなかった。カインは荷車の端の邪魔にならない場所に背中を預けた。
イワカミが家名を呼んでいった。今回はカインにも聞き覚えのある名前がいくつかあった。
イワカミが「クロサワ」と呼ぶと、若いネサリの女性が受け取りに来た。
(疑っていたが……五番手も結婚していた)
いくつか続いた後、聞きたかった名前が出た。
「シラミネ」
ノゾミが近づいた。応対したのは大吾だった。
「アサヒ頭領」
「ん、ノゾミ」
麻の袋を渡すと、彼女の両手が少し沈んだ。
「あの……これ……間違いではないですか」
「花がよく売れた。頼んでいた紫苑の代金も入っている。また数日以内に注文することになるだろう」
「ありがとうございます、アサヒ頭領」
「ん。列に戻れ」
彼女がうなずいて戻っていった。
(それがシラミネを助ける方法か。大吾、お前は本当に遠回しなことが好きだな)
支払いが終わると、イワカミが荷台を開けて買い物が始まった。
狩りが増え、それに伴って売り上げも伸びていたため、どの家族も必要な品を買えるよう、大吾は購入数に上限を設けた。
香辛料、塩、砂糖、米が先に来た家族で尽きてしまわないよう、全員が順番通りに手に入れられるようにした。
どの家族も籠をいっぱいにして帰っていった。荷台が空になっていき、イワカミとアサヒ家の分だけが残った。
「こんなに売れ続けるなら、もっと大きい荷車が必要だな」
「値が張る。これが続くかどうかも分からない」
「ははっ。少しくらい喜ばせてくれ、アサヒ」
イワカミの妻が籠を持ってやってきた。
「冗談は休み休み。自分たちの分は分けてあるか、あなた」
「必要なかった。アサヒはお前の好みを知っているから」
「手を煩わせないで」
「長い付き合いの特典だ」
妻が笑いながら籠を満たしていった。
「ありがとう、アサヒ頭領」
「ん」
イワカミが大吾の方を向いてにやりとした。
「どうだった、旅は。息子にあるべき姿を教えられたか、それとも唸るだけだったか」
「ん。色々あった」
「ほう、それは聞きたい」
「私も聞きたい」
コハルの声が二人の男を貫いた。ホタルの手を引いていた。
「パパのところへ行きたい」
大吾が屈んでホタルを持ち上げ、肩の上に座らせた。
「カゲヤ、俺たちの荷物を持て」
(今回は場所が分かっている)
イワカミと妻がコハルとホタルに挨拶した。少し話してから別れた。
「明日全部聞かせてくれ、アサヒ」
「ん」
コハルが微笑んだ。
「いつもよりぶっきらぼうね、あなた」
「長い旅だった」
「坊やはちゃんとしていた?」
カインが籠を持って荷車から下りた。
(坊や、と言いながら子どもを持てと言う)
「ん……遊ぶのをやめることを学んでいる」
「そう……」
コハルの声から少し元気が抜けたが、すぐに立て直した。
「持ってきたもので何か作る」
「頼む」
大吾がコハルの耳元で何かを囁いた。
四人で家へ戻り、大吾がカゲヤに外で待つよう言って籠を受け取った。
カインは三人が入っていくのを見守った。ホタルが大吾と同時に頭を下げた。
数分後、肩の上のご機嫌な飾りなしで大吾が出てきた。
息子の前に立ち、黙っていた。
……
(それで?)
……
「ん……再生まで二日ある」
(また試験だ。思い出せ……三週間、十日……今は最後の週、名前が出てこない……旅が五日、休息日の三日後……)
「その日に何をしてほしい」
「妹と母親と一緒にいろ」
(訓練が一日減る)
「分かりました」
「ん」
……
(それだけか)
「その二日で考える」
カインの目が開いた。
「本気で言っているか」
「成長に必要かもしれない」
(必要なものが手に入るなら、余計なことは言わない)
大吾が向き直り、ついてくるようカゲヤに示した。
「食事の準備をしろ」
「分かりました」
ちょうどドアのところで立ち止まった。
「風守が先に返事をしないよう、マナに頼んでおけ」
笑いのような唸りとともに、大吾が入っていった。
(お前、あいつに俺をボコボコにしてほしいんだろ)
(絶対そうだ)




