再生
カインは窓から、村の雪の色をわずかに変えていく朝の光を眺めていた。
カゲヤの体は、どれだけ寝ていたくても、早起きしてしまう。
(あの子……ただ力を見せびらかしに来ただけだ)
指の節で窓ガラスをこつこつ叩いた。
(俺の体だったら……勝てていたか。霊眼……アルカ・ノヴァでそんな力は教わらなかった。マエナやアルドリクは、あのレベルのネサリと戦ったことがあるのか)
両手を空中に上げた。
(考えるのはやめる。まだ体が痛い)
窓から離れて着替えに向かった。今日は訓練できないと思い出してため息をついた。
「アサヒ様ァ! 今日は再生にお招きいただいてありがとうございます!」
(そうだ……ここに泊まったんだった。声量が自分で分かっていない)
着替えを終えて廊下へ出た。階段を下りると、彼女がいた。
太い金色の三つ編み、鎧なし、コハルと話している。
「手伝っていただくのは申し訳ないです、風守さん」
「愛歌でいいです。料理はできます。旅の中で磨きました」
「じゃあ、その野菜を切ってもらえますか」
「切ったも同然です」
愛歌が離れると、ホタルが声を上げた。
「私も手伝いたい、ママ」
大吾の肩の上に座っていた。
「いいのよ、ちびちゃん。パパと一緒にいて」
大吾はそのまま読み聞かせを続けた。愛歌が戻ってきて、自分の槍の刃を磨いて光らせた。
台所に近づくと、コハルが包丁を渡した。
「スペースがないのよ、愛歌」
「そうですね……」
槍を壁に立てかけて、野菜を切った。大きく、ごろっとした形に。
「ありがとう、愛歌。カゲヤと少し外に出てこない?」
「でも野菜を切っただけで」
「大丈夫よ、後は私がやるから。息子、愛歌に村を案内してあげて」
(俺も村をよく知らないんだが……旅行者が別の旅行者を案内する羽目になるとは思わなかった)
「分かりました」
「では鎧を取ってきます」
「いらない」
カインはドアのところまで歩いて開けた。
「行こう、時間はある」
愛歌が続いた。槍は忘れなかった。カインは彼女の薄着に気づいて、少し待つよう言ってコハルのところへ戻り、何か羽織るものがないか聞いた。
コハルが毛皮のコートを持ってきた。カインがそれを愛歌に渡した。
小屋の外で、村を歩いた。愛歌は片手で槍を持ち、もう片方でもらったコートを体に押さえていた。
「かなり寒いですね」
「すぐ慣れる」
(まあ……俺は寒さを感じなかった。カゲヤがもう慣れていたからだろう)
「北に来るのは初めてではありません」
「寒いのは悪いことじゃない」
「ただ思っていたより寒かっただけです」
(勝負にしなくていい)
カインは彼女がコートを掴んでいるのに気づいた。
「旅の経験はかなりあるんだろう」
愛歌が顎をわずかに上げた。
「そうです」
「それでもコートを忘れた。旅の達人」
「……北に来る機会はそんなに多くないので」
(本当に、嘘をつき通せないんだな)
「遠いところから来たのか」
「盾林の砦がどこにあるか知らないのですか」
「地図を覚える方じゃない」
(エラーラも覚えない)
「それは困る。私の家は南にあります。あそこの方がずっと過ごしやすくて、ここより暖かいです」
(気候が違うくらい南なのか。そこから一人でここまで来た)
「旅が大変だっただろう」
愛歌が首を傾けた。
「ナリワダチを使えば、その距離は半日で着きます」
(それが何なのかまだ分からない)
カインは大吾が使者を送ってからの日数を数えた。愛歌の移動時間を除けば三日だ。
(こんなに早いのが普通なのか。そりゃ、みんな若いうちに結婚するわけだ。でも、なぜ彼女が来たのかはまだ分からない)
横目で槍を見た。
「こんなに早く返事が来るとは思っていなかった」
「……家族はずっと前から私のムスビガリを計画していました」
愛歌の声のトーンのわずかな変化を、カインは聞き逃さなかった。
(あの伝統についてもう少し知っているが、誰もが笑顔で受け入れるわけじゃないのかもしれない)
「なるほど……それで哀れなコートは忘れられたわけか」
「……思い出さなかったんです。あなたの条件のことばかり考えていて」
「なら俺の勝ちだ」
愛歌が立ち止まって目を開けた。
「負けたくせに、どうしてそんなことが言えるんですか」
「簡単な話だ」
カインが笑いかけた。
「戦いはすぐ終わった。でも今感じてる寒さは、そうじゃない」
……
「ハ……ハハハハ! あなた、どうかしてます!」
「探してる言葉は『勝者』だと思う」
「違います! 『どうかしてる』です! ハハハ!」
(こっちの方がいい)
笑い声が収まるまで歩き続けた。
「アサヒ様の息子が、そんな考え方をするとは思いませんでした」
(そう言われるのはあなたが初めてじゃない)
「旅してきた甲斐はあったな」
愛歌は微笑み、槍を握る手に力を込めた。
「戦いの方が、もっと来た甲斐がありました」
村を一回りして小屋へ戻った。コハルが素朴な朝食で迎えてくれた。
カインは、その量に誰も驚いていないことに気づいた。大吾が愛歌にマナへの祈りを唱えるよう頼んだ。
食事をしながら、大吾は愛歌の決断について尋ねていた。コハルは彼女のひどく下手なはぐらかしを一つ一つ注意深く聞いていた。
まず決闘の結果を報告しなければならないこと。
霊眼を使ってしまったことを理由にした言い訳。
カゲヤはそれほど強くないのかもしれないから、もっと強くなる時間をあげる、という言い訳。
ホタルは「お兄ちゃんは強い」と兄を庇った。
愛歌は視線を逸らして、最後の一口を食べた。大吾が唸って、それ以上聞くのをやめた。
(気づいているだろう、大吾……ただ直接は言えないんだ。それでいいのか悪いのか、俺には分からない)
コハルが立ち上がりながら微笑んだ。
「今日はこんなに分かりやすい人を見るとは思わなかったわ」
カインは、愛歌がその意味を理解して何も言わないのを見た。
(俺がこの家でこんなに長くいられたのが奇跡だ)
愛歌が勢いよく立ち上がった。
「ご馳走様でした!!」
ホタルがクマを抱きながら笑った。
「ん。礼を言うにはまだ早い」
「……そうでした」
コハルはもう皿を洗っていた。
「この子と遊んでくれない? 午後の準備をしないといけないから」
「喜んで」
「クマが怪物を狩りたい!!」
大吾がホタルを椅子から下ろした。
「行け」
ホタルはまたカゲヤの指を三本つかみ、三人で部屋へ上がった。
(やめてくれ……昨日俺に勝った人の前でこれをやられるとは)
ホタルの部屋に三人で座った。クマは木の人形の怪物たちに囲まれて、カインが狩りを始めるのを待っていた。
まったく普通の顔で、怪物の一体を手に取って唸った。
(なぜ昨日の戦いは命がけじゃなかったのか)
「モンスター、クマには勝てないよ。パパと同じくらい強いんだから」
「グル……そう簡単には倒れないぞ」
愛歌が口から息を漏らした。カインが目を閉じた。
そのとき、ホタルがクマに愛歌がしたのと同じポーズをさせた。
「誰にも負けない!!」
「よく言った、クマ!!」
(……)
遊んでいる間に、大吾は出かけて、コハルが家の片付けを終えた。
遊びが終わると、愛歌は誇らしげに自分の槍を見せた。
日が傾き始めると、コハルが部屋に上がってきた。
「もう準備しないと。来て、愛歌。夕方用のコートを貸してあげる」
「ご迷惑はかけたくありません」
「もっと寒くなるから」
「……ありがとうございます」
ホタルと愛歌がコハルについていった。
「息子も準備して」
「分かりました」
カインはカゲヤの部屋で毛皮のコートを着た。廊下から、愛歌のために上着を選んでいるコハルの声と、ホタルの笑い声が聞こえてきた。
……
「このコート、とても綺麗です! 命がけで守ります!」
(こんなに何でも叫ぶ人を初めて見た)
窓を見てゆっくりと息を吸った。
(大吾は馬鹿じゃない……コハルもかなり観察眼が鋭いことに今さら気づいた。あまり一緒にいなかったのは正解だった)
額をガラスにつけた。
(彼らと一日を過ごすたびに、どんどん難しくなる。何かに気づいている気がする。でも何も言わないのは、俺が息子の体にいるからだ。大吾が、俺をシウンへ行かせるか考えるためにこの条件を出したのは分かってる……)
視線が巣のある枝へ移った。木は橙色に変わり始めた光に照らされていた。
(まあ……そういう理由であってほしい)
黙ったまま、そこを眺めていた。
「もう準備できた、息子?」
廊下からコハルの声が届いた。
「はい」
小さな鳥の家族を最後にもう一度見てから、部屋を出た。
ホタルが母親の隣を嬉しそうに歩いていた。手には弓のようなものを持っていた。
コハルは木でできた何かを持っていた。その形から、カインは楽器だと思った。
長方形の台座。真っ直ぐな胴体に三本の弦。
愛歌がその後ろをついていた。コートを着て、槍をしっかりと握っていた。
四人で小屋を出ると、燃える薪と焼ける肉の香りにすぐ包まれた。
「楽しみですね、カゲヤ」
「俺も、愛歌」
(いい匂いだ)
村の中心へ向かった。選抜が行われる場所、大吾が荷車を停める場所、愛歌が昨日の夜に全員を起こした場所。
村の住民が全員、そこに集まっていた。小さな舞台を囲んでいる。
木の板を数枚組んで、地面から少し高くしただけのものだった。その上には、すでに二人のネサリの女性がいた。
一人は楽器を支えていた。コハルのものに似ていた。ずっと大きく、がっしりした作りで、こちらは胴体が曲線を描いていた。
(俺の世界のチェロに近い)
その隣の地面には、木製のツィターが完全に水平に置かれていた。淡い木色で、手入れされた長い弦が何本も張られていた。
ノゾミはツィターのすぐ後ろに座っていた。コハルが近づくのを見て、彼女が微笑んだ。
村人たちが一斉に挨拶しながら、道を開けた。
大吾は舞台の横に立っていた。
ホタルはコハルに弓を渡し、舞台から数メートル離れたところで止まった。愛歌がその後ろに立った。
大吾が片手でコハルが舞台に上がるのを助けた。
彼女は中央に立ち、村全体が静かになった。
膝をつき、楽器を縦にして膝の間に置いた。
静けさがもう少し続いた。その静寂が舞台を下り、最後の一人まで一人ずつ巡っていくようだった。
コハルが一度、息を吸った。
「世界のマナに、命の循環への感謝を捧げる。去るものは戻り、終わるものは再び始まる」
最後の言葉が舞台を離れた瞬間、ノゾミがその言葉に命を吹き込んだ。
一つの音。次に二つ。
やがて一つ一つの音が互いに寄り添い、風の音に割り込む隙を与えない旋律を作っていった。
弦に触れる指が、少しずつ遅くなっていく。それは聴いてほしいと招いているのではなかった。別れを告げていた。
その旋律が自ら退こうと決めたとき、チェロがもう一度それを呼び戻した。留まるべきか、去るべきか、まだ決められないものへと変えながら。
チェロの弦が旋律の中で響いた。震える声が、先ほどの旋律に戻るよう語りかけていた。
ツィターのリズムが速まり、その温かさに手を引かれるようだった。
二つの楽器がためらいに行き着いた。そのとき、コハルの弓が入った。
腕はゆっくりと、迷いなく動いた。その楽器の音があらゆる迷いを払い、二つの音と絡み合った。
弦から生まれる響きが、全体の調べを導いた。新しい始まりを受け入れながら。
他の二つの楽器は互いに迷うのをやめ、新たな段階へと導かれていった。
コハルはその旅立ちを、頂点へと導いた。
最後は一人で。肯うような音で締めくくった。
三人のネサリが静かに頭を下げた。村人たちが全員、手で三角を作って一度頭を下げた。
カインも同じ動作をした。そのとき初めて、あれは軍の敬礼ではなかったのだと気づいた。
顔を上げると、愛歌がちょうどその動作を終えるところだった。彼女はカインが見ているのに気づいた。
「お母さんの演奏、とても上手でした。すごく好きです」
(そうだ。あの演奏は俺の中を貫いた)
「これで、戦いだけじゃなくなったな」
「ハハハ。そうです。奏音も連れてきて聴かせたいです」
「もう道は分かってるだろ」
(ただ……その時、俺がいるかどうかは分からない)




