教えるのが億劫
一年A組の生徒たちが訓練場に集まっていた。
中央に集まると、遠くで誰かが的を設置しているのが見えた。
生徒たちはサーベルを取り出しながら、前の学校で練習してきた技術について楽しそうに話し合っていた。
「やっとか!この授業が待ち遠しくてたまらなかった」ディランが腕を伸ばしながら言った。
カインは自分のサーベルを見た。「俺は別の理由で死にそうだよ」
「ははっ、そんなに緊張するなって」ディランが背中を叩いた。
カインは友人の顔を見た。熱意のかけらもない表情だった。
「どうした、偉大な一位様はシンプルなサーベルも使えないのか?」
カインはため息をついた。「ルカン」
大げさにゆっくりと振り返った。
「悪いが、お前のたわ言を聞く気はない、五位」
「そうかよ」鬱陶しそうに近づいてきた。「お前がみっともない思いをするのを楽しみにしてるぞ」
二人が口論し始め、ディランが笑い出した。
訓練場の中央で、的の設置を終えた人物がいた。縄を巻かれた木の柱だ。
最後の調整を終えると、生徒たちのほうへ歩いてきた。
「お前みたいに、俺も得意じゃないからな」ルカンを指差しながら言ったのは、ルカンのすぐ後ろに立っていた大人だった。
ディランとカインには、ルカンの目の中で彼自身の魂が自分を絞め殺そうとしているのが見えた。
「他に言いたいことがなければ、仲間のところへ戻れ」
ルカンは命令に従った。ただし魂が生き残ろうと奮闘している音だけを発しながら。
くるくるとした茶色い髪の講師を見ると、生徒たちは学校の礼の姿勢を取った。
「では……自己紹介から始めようか」言葉と言葉の間に息をつく。
姿勢は非常にリラックスしていた。背中は丸く、腕はぶらりと下がっている。
「俺はアルカノーヴァA組の担当教官だ。何年次であろうと変わらない」
「アルカノーヴァでは六ヶ月ごとに評価がある。水準を満たせなければ、他のクラスへ落とされる」
一人の生徒が手を上げた。「落とされる?昨日コルヴィン先生は、クラスは欠点を補うためだけのものだとおっしゃっていましたが」
「ああ……そうだな」講師は一歩引いて、天井を見上げた。「A組は特別だ」
言い終えた瞬間、顔に後悔の色が浮かんだ。
しばらく立ち止まり、何かを思い出しているようだった。数秒間張り詰めてから、額に手を当てた。
生徒たちは困惑した顔で見合わせた。
「すまないマエナ、頑張ったんだが無理だ」自分自身にぼそっとつぶやき、小さくため息をついた。
額から手を離し、いつものリラックスした姿勢に戻った。
「礼の姿勢は必要ない、楽にしろ。正直に言おう、俺のところでは形式も礼儀もいらない」
「そこの緑髪、なぜA組にいるかわかるか?」声はあまりにもリラックスしていた。
ディランは礼の姿勢を解き、肩の力を抜いた。
「このクラスは各学校のランク上位者が集まっていると聞いています。だからじゃないかと」
「ふむ、まあそれも一理ある。一年次のA組は常に優秀な生徒で構成されている」
数人の生徒が微笑みながら顔を見合わせた。中にはハイタッチをしている者まで。
「だよな!」
「努力が実った!」
小さな祝福の輪の中で、講師がひと言付け加えた。
「だが、それだけが理由じゃないはずだ」
ディランはカインを見てから、ルカンを見た。他の生徒たちをじっくり観察すると、いると思っていた顔がいないことに気づいた。
「そうですね。それだけが理由とは思えません」
驚きの色を講師は見逃さなかった。
「気づいたな。前の学校のトップが全員いるわけじゃないんだろう」
生徒たちは祝福をやめ、互いを探し始めた。
「本当だ、うちの学校の一位のカエリスがいない」
「言われてみれば、バレンもこのクラスにいるべきなのに」
ディランが声に出して考えていた。
「生徒は二十人。つまり各学校から五人ずつ選ばれたということかもしれません」
「でも、うちの二位と四位がいない」カインがディランに言った。
ディランはカインのほうを向いた。「ランク以上に重要な基準があるんだ」
講師はそのペアを見て、口元にかすかな笑みが浮かんだ。
「では、その理由はなんだと思う?」
ルカンの魂がこの機会を逃さなかった。声を張り上げ、自分の答えを述べる。
「A組にいるということは、ランクに関係なく俺たちが最高だということです!」
「違う、サーベルくん」こちらを見ることもなく訂正した。ルカンはその隙に人波に紛れた。
カインとディランはしばらく考えた。
「ランク上位者の中にも、評価された何か重要な要素があるはずです」ディランがカインに向けて言った。
カインがディランの観察を続けた。「個人評価に関係してる。潜在性みたいなものかな」
「正解だ」講師は笑った。
「答えは、君たちがアンブラルナイトになる潜在性を持っているから選ばれたということだ」
しばらく沈黙が続いた後、全員の目が同時に輝いた。場の空気が一気に弾んだ。飛び上がる者さえいた。
講師は生徒たちが喜び合うのを黙って見ていたが、突然体が張り詰め、また額に手を当てた。
全員がその繰り返しを見ていた。
数秒間無言でストレスを抱えた後、クラスに向かって口を開いた。
「でも……内緒だぞ」
生徒たちは笑いをこらえられなかった。
講師は手を振ってついてくるよう合図した。
「よし、さっそく訓練を始めよう」
一人の女子生徒が手を上げた。「失礼ですが、教官。まだお名前を伺っていないのですが」
「言わなかったか?」少し考えてから。「そうだな。俺はアルドリックだ」
生徒たちは新たな自信を持って後に続いた。
アルドリックは的の前に立った。的を見た瞬間、退屈そうな表情が浮かんだ。
「司令官に命じられた以上、基礎から始めるしかない」小声でぼやいた。
生徒たちに向き直り、いつもより背中の曲がった姿勢を取った。
「小さなデモを見せよう。まず、体のマナだけを使って」
アルドリックは腰に差したサーベルを抜き、的に向かってタジを放った。縄で固く巻かれた的にそれが当たった。
縄の一部を切り裂き、木に一本の線を刻んだ。縄はすぐに元に戻った。
「次のステップは、マナを集中させることで、さらに大きな効果を得ること」
アルドリックの腕に薄い淡い銅色の光が包まれ、全く同じ動作で再び打ち込んだ。
切り込みは深くなった。
「二連続で理論の授業になるとは思わなかった」カインがディランに囁いた。
「そこの黒髪、俺にとっても退屈なんだ。邪魔するな!」
カインは思わず体をすくめた。(司令官と同じ目だ)
「そこのピンクのツインテール、次のステップは?」
「あ、はい」小さくジャンプしながら、アルカノーヴァの礼の姿勢を取った。「次のステップは、体の中のマナを武器に纏わせることです」
アルドリックは頷いた。「その通りだ。今日からそのステップに取り組む」
生徒から生徒へと目を移した。「サーベルくん」サーベルで指差した。
「前に出て、見せてくれ」
ルカンが三歩前に出る前に、カインを振り返り馬鹿にしたような笑みを浮かべた。「はい、教官」
自信満々に的の前に立った。
目の前の的が思っていたよりずっと厚いことに気づいた。
巻きついた縄も想像以上にしっかりしている。
片手でサーベルを抜き、肩の高さに持ち上げ、刃を完全に水平にした。かすかに見えるマナを纏わせる。
気合の声とともに、勢いよく的に振り下ろした。
衝撃音とともにマナが消えた。刃は数センチ食い込んでいた。
「悪くない。だが制御が甘い。衝撃の瞬間に集中力が切れ、マナが散った」
アルドリックはルカンのサーベルを手に取り、的から引き抜いた。「力を優先した分、精度が落ちた。タジというよりハンマーのような打撃だ」
リラックスした声の中に、対照的な鋭さがあった。
「心配するな、六ヶ月もしないうちに上達する」
「は……ありがとうございます、教官」ルカンは他の生徒の間に戻り、足を強く踏み鳴らした。
カインを見ると、彼が馬鹿にしたような表情をしていた。「よくやったな、五位」
「邪魔してた黒髪、前に出てやってみろ」
カインはサーベルを抜きながら前に出た。「やってしまった」
横向きに足を開き、腕を頭の高さまで上げ、両手でサーベルを握り、切っ先を地面に向けた。
まとわせたマナは藍色の蒸気のようだった。アルドリックは必要量より多く使っていることに気づいた。
少し身をかがめ、刃を完全に揃えた、なめらかなタジを放った。始まりから終わりまで、一直線に切り込んでいった。
動きはかなり荒っぽく、アルドリックが気づいたのは、サーベルが危うくカインの手から飛んでいきそうになったことだった。
二人は揃ってゆっくりと木の的を振り返った。
傷一つついていなかった。
「何があった?」アルドリックが言った。
「えっと……当たらなかったです」カインは真顔で言ったが、その瞬間に感じた怒りと恥ずかしさを必死に隠していた。
「なぜ片手剣でツーハンドマンドブルの技を使った?」
カインはサーベルを見た。
「この棒のせいじゃないですよ……なんか寒そうに見えただけで」
教官が沈黙した。ディランとルカンは笑いを堪えようと必死だった。
「待ってろ」アルドリックは部屋の奥へ歩いていった。
カインはサーベルを鞘に収め、こっそり拳で叩いた。
アルドリックが戻ってきてカインに言った。「これを使ってみろ」マンドブルを渡した。
武器はカインとほぼ同じ高さだった。
カインはマンドブルの柄を右目に当て、手に持てたことに笑みを浮かべた。
先ほどと同じ姿勢を取り、サーベルの倍の長さがある刃全体にマナを纏わせた。
タジを放つと、体が武器の重さを修正し、最初と同じ精度で振り下ろした。
刃の反対側の一点が強い光を放ち、爆発するように武器をさらに力強く振り下ろした。
閃光に、アルドリックの目が見開かれた。
マンドブルは激しく食い込み、的のほとんどを貫いたが、真っ二つにはならなかった。
「え!?割れなかった!?」カインは悔しそうに足元を小さく蹴った。
「それはどこで覚えた?」アルドリックは笑いを浮かべ、興味を隠すこともなく言った。
「マナを使って速度を増す方法のことですか?」
カインはマナの爆発を使ったところに小さな凹みができているサーベルを見た。
「一年半前から練習してました」
「マンドブルは重さのせいで遅い、なんとか素早く方向を変えられる方法を考えていました」
カインはマンドブルを的から引き抜き、アルドリックに返した。「ご覧の通り、まだうまくできていません。刃を傷つけてしまってすみません」
「構わない、そのための練習用だ。仲間のところへ戻れ」
「ちなみに、面白い技だ」
カインは戻りながら、落ち着いた表情を保とうとした。
そうはいかなかった。耳まで届く笑顔がそれを台無しにした。
教官はコルヴィンのランキングについてしばらく考えながら、手に持ったマンドブルを見ていた。
「一年次A組一位か……」小さなため息と笑みが漏れた。
アルドリックはいつものリラックスした姿勢と退屈そうな口調で生徒に向かったが、訓練が始まった頃から、言葉に込める熱は変わっていた。
「二人組を作って、各自的の前に立て」
生徒たちはペアを組み始め、的を分け合った。
カインとディランは一緒に向かった。「よくやったぞ、マンドブルさん」
教官はペアを一組ずつ回った。最初の二周は姿勢のアドバイスと、マナをより効率的に使う方法を伝えた。
「もっと腕を下げろ」
「手首をそんなに張り詰めるな、刃が紙でできてると思え」
次の二周はさらに細かい修正だった。
「マナを解放するとき、穏やかに呼吸しろ」
「まず手に集中させてから、ゆっくりと武器に流し込むイメージで」
まるで目が各生徒の基礎を理解しているようだった。一周するたびに上達が見えた。すべての生徒が自分の技術が向上するのを感じた。
姿勢が自由になり、緊張が解けた。タジは次第に技術を帯びていった。
残り三十分は、二時間の中で最もあっという間に過ぎた。
「明日も同じ時間に来い、今日はゆっくり休め」
「はい、アルドリック教官!」全員が声を揃えた。
生徒たちは休み時間を楽しもうと教室を出た。
カインとディランはにぎやかに話しながら歩いていた。
二人は後ろから駆け寄ってくる少女に気づかなかった。
「ごめん、ちょっと授業が遅くなっちゃって!」
エラーラの声が二人を止めた。両腕が上がった。
「エラーラ!マンドブルさんがサーベルで失敗したところ、見せてあげればよかった」ディランが笑いながら言った。
「失敗してない。悪いのはあの自称短剣だ」
エラーラは隣に並びながら息を整えようとした。「どんな感じだった?」
「ははっ、こんな感じで」ディランがカインの動きを大げさなくらいシンプルに再現した。「それで的には傷一つつかなかった」
エラーラは片手を口に当て、体が微かに震えた。「まさか、マンドブルさんがサーベルでやったの」
カインのほうを向き、もう片方の手も唇に添えた。「武器のせいにした?」
カインは落ち着いて彼女を見た。「サーベルのせいにしてない」
「俺のせいじゃなかっただけだ」
「なんで実戦の武器が使えないんだ」穏やかな表情が崩れ、鞘に何度か拳を叩きつけた。
エラーラはもう我慢できず、ディランと一緒に笑い出した。
「だからだよ」エラーラは自分の口に手を当てながら言おうとした。「先生が、サーベルは悪い癖をつけないためだって説明してくれた」
「俺たちのクラスは地図の読み方を教えないって言ってたよ」
横目で彼女を見て、からかう顔を作った。「基本すぎるからって」
エラーラの頬がほんのりと染まった。「カイン、あなたって……」
「エラーラはどこで食べたい?」ディランが割り込んだ。笑いを堪えているのが表情からにじみ出ていた。
彼女は一歩下がり、髪を整えた。「マナ研究室の近くに庭園があるんだ」
「二年生がよく使う場所?」ディランが聞いた。
「そう」エラーラが微笑んだ。「お昼の授業がちょうど終わったから、食堂より空いてると思う」
「いいな、ゆっくり食べられる」カインはエラーラの笑みを真似しながら庭園に向かって歩き出した。
二人が後に続いた。最初の目的地は学校の食堂だった。
アルカノーヴァの最大の特典の一つは、食堂のクオリティの高い料理だった。誰もが食べたがる料理、特にエラーラが楽しみにしていたものだ。
最寄りの食堂はアルカノーヴァ最大ではなかったが、それでも圧倒的な存在感を持っていた。
中に入ると、料理の香りと食器の音、会話の声が迎えてくれた。
カウンターに近づき、持ち帰り料理が豊富なメニューを受け取った。
その香りに包まれながら、落ち着いて注文した。
エラーラは二人合わせた量より多くを頼んだ。
出る前に、学校から支給されたポイントを使って会計を済ませた。
エラーラが話していた庭園に向かって歩いた。
到着すると、庭園は遠くまで広がっていた。一輪一輪が同じ愛情を込めて手入れされているようだった。
「遠くから見るよりずっと素敵だ」エラーラは声に喜びをにじませて言った。
エラーラは一本の木の下の静かな場所を指差した。庭園にいる数少ない生徒たちから離れている。
向かい合って芝生に座り、食べながら笑い合った。話は自然と流れるように続いた。
エラーラが小さな箱を開けると、ミートボール入りのサンドイッチのようなものが入っていた。時間を惜しまず、しっかりかぶりついた。
「そういえば、C組の目的を教えてもらったよ」食べ終えた最初のひと口で言った。
「戦闘の成績が他より低い生徒が入れられてるって」
食べ続けながら続けた。「B組にいる友達が教えてくれた。B組は戦闘力はあるけど、マナのコントロールに問題があるって言ってたよ」
目を二人に向け、好奇心を隠さずに聞いた。
「A組に入った理由は教えてもらった?」
カインは微笑みながら右目に手を当て、ごまかすようにこすった。
「A組は……」
「いくつかの学校からランク上位者を集めて組み合わせた、ということだけ教えてもらいました」ディランが割り込んだ。
「なるほど、だからルカンもA組なんだね。理論のテストが悪かったし。五位だったし」
「それで全部か。なんとか言え」ディランがカインを向いた。
「カインって言えばマンドブルの先生が秘密だって言ってたの忘れてた」(ディランが助けてくれた。助かった)
「A組にルカンがいる時点でそこまで特別じゃないよ」無理やりからかう表情を作って言った。
「確かにね」エラーラがくすっと笑った。
ディランはエラーラがカインの表情に気づいていないことに気づいた。料理を味わうのに夢中だったからだ。
エラーラが満足そうな声を上げた。
「食べ物がこんなに美味しいなんて信じられない。昨日があったかいがあったかいよ」
カインはそのひと言で、昨日から気になっていたことを思い出した。
「エラーラ、昨日コルヴィン先生がクラスを発表したとき、なんであんな表情をしてたの?」
エラーラはちょうど食べようとしていた食べ物を下ろした。顔から表情が消えた。
「気づいてたの?」両手の中の食べ物を軽く握り締めながら目を落とした。
「ちょっと悲しかっただけ……二人と同じクラスじゃないから」
自然な笑顔を浮かべたが、緊張を完全には隠しきれなかった。「でもその話はやめにしよ、ね?」
ディランが密かに拳を握り締め、話す前に緩めた。
「大丈夫だよ、エラーラ。六ヶ月したらクラスの再編成があるから」ディランは落ち着いた口調を取り戻して言った。
「そうだよね。ありがとう、ディラン」
予告なく沈黙が訪れた。三人とも食べるのを止めた。
エラーラはもう少し自分の食べ物を見てから、しまった。
突然立ち上がった。
「ごめん、次の授業の準備しなきゃ。戦闘実習だから」
振り返り、急かされるように歩き始めた。
ディランはエラーラの背中を見ていると、肺が何かにぎゅっと掴まれるような感覚があった。
エラーラの足音が遠ざかった。カインが沈黙を破った。
「ディラン、気づいたか?」立ち上がりながら言った。
「何が?」
カインの顔が真剣になった。「エラーラは今、悲しかったのは俺たちと同じクラスじゃないからだって言ったんだ」
ディランは彼のほうを向き、穏やかな表情を保った。「わかる気がするよ。同じクラスだと知ったとき、嬉しかったし」
「俺たちより先にクラスを知らされてたんだろ」カインはディランの目をしっかり見た。何か見落としていないか探しながら。「覚えてないのか?」
ディランは背を向け、首の後ろに手を当てた。
「悪い、あの瞬間に引きずられて気づかなかった。自分の名前とクラスを聞いたあと、次はお前がどこになるかだけを考えてたから」
カインはリラックスした。「そうか、ごめんよ、ディラン。気づかなかった」
「じゃあ、やっぱりヴェイルの件なのかな。話してみようと思う」
「するな!」ディランの声は突然上がった。叫びではなく、衝動的なものだった。
カインの困惑した顔を見て、ずっと落ち着いた口調で続けた。
「エラーラは俺たちを心配させないようにしてるんだ。あいつのことだろ」
「本当にそう思うか?」カインが聞いた。
ディランは肩に手を置いた。
「ああ。それに、エラーラに説教すると怒るの知ってるだろ」穏やかに微笑んだ。「心配するな」
二人は並んで歩き始めた。カインは頷いた。「わかった。でもエラーラが何か必要なときは、俺はここにいる」
ディランが答える前に、アルカノーヴァのチャイムが鳴った。ディランは口を閉じ、言おうとしたことをしまい込んだ。
時間に気づいた二人は駆け出し、最初の歴史の授業へと向かった。




