俺は俺のままで
「起きて食べろ、カゲヤ。すぐ出発する」
大吾が部屋を出た瞬間、カインは天井を見上げた。ミズガイの宿屋にいた。
小さな街でも、大吾への扱いはほぼ同じだった。フユノの人々が持つ親しみとは違うが。
敬意、繋がり、情報。
大吾のことを知っている人が多すぎて、代金を受け取らないと言われた時も、結局払わせることになった。
起き上がって服と剣を整えながら、昨日の荷車での出来事を思い出してふと笑みが漏れた。
あの唸り声。条件を聞いた時の大吾の瞳が開いた瞬間。
(ははっ、予想外だっただろう)
伸びをしてから部屋を出た。
(ただあんなに早く受け入れたのが気になる。嫌な予感がする)
階段を下りてテーブルのある場所まで来たが、大吾の姿がなかった。
「ああ、アサヒさん。すぐお持ちします」
「ありがとうございます」
カインが席についた。少しして女将が卵、パン、米、茶を運んできた。
「どうぞ」
「失礼ですが、あの方はどこへ」
「アサヒ頭領はすぐ戻るとおっしゃっていました」
「なるほど。ありがとうございます」
「ごゆっくり」
食べながら、宿屋の入口を見ていた。
(なぜ兵士たちは「狩人」と呼んで、ここでは「頭領」と呼ぶんだろう。理由があるはずだ)
食べ終えて、視線を下ろしたまま黙っていた。
周りの客がこっそりと若いアサヒを観察していた。父親と同じように、皿を見つめながら何かを考えているように見えたから。
(探しに行くべきか、ここで待つべきか)
カインは机を指で叩いた。
(退屈になってきた。外で待とう)
立ち上がってひそひそ声の中を抜けて宿屋を出た。
朝はまだ早かった。光がはっきりした色になっていなかった。首を回して大吾を探しながら、小さな街を眺めた。
いくつかの店がすでに開いていた。行き交う人々。ハンマーが金床を打つ音の余韻。遠くでの言い争い、笑い声。
目の前の店からパンの香りが漂ってきた。宿屋で食べたのと同じ匂いだった。
覗き込むと、いくつかの屋台がもう並んでいた。
目を引いたのは、市場のような場所だった。
入ってみると違いがすぐ分かった。売買はあるが、主役は物々交換だった。
食料と皮。素材と装飾品。
タケルの言葉が改めて意味を持った。ここはミズキリの手前最後の寄り場だ。
(着いた時、荷車がたくさんあった。ミズキリはそう遠くないはずだ)
人混みの中で思い出したことがあった。来た道を振り返ると、同時に着いた荷車はたった二台だけだった。
(こんなに人がどこから来た)
屋台の間を歩きながら、さりげなく取引を見て、会話に耳を傾けた。
それはミズキリでもっと値がつく。じゃあそっちで売るか。
この指輪に対してルーン石二個以上は出せない。こんなものは他では見つからないが。
最近イノシシの皮の値段が上がっているのはなぜだ。手に入りにくくなっているからだ。
都からの道はまだきついか。検問所の確認が厳しくて、荷物の検査で時間がかかった。
別の道を使えばいい。
(いた)
もっと聞こうと、隣の屋台を見ているふりをした。
北の幹線路よりメインの道で戻る方がいい。ナリワダチが終わって、緋吹砂に近い道は危険になっている。
そうだな、あの辺りは盗賊が増えた。
(変な名前ばかり増やさないでくれ)
それでもメインの道には気をつけた方がいい。聞いた話では……
「お若いの、何かお探しで?」
口から一度、素早く息を吸い込んだ。
「必要なものを見ています」
(驚いた)
「マナ石がいい値段で出ていますよ」
「もし必要なものがあったら声をかけます」
「はい、どうぞ」
商人が離れた。カインはまた二人の会話に意識を戻した。
……では出発しよう。来週戻る。黎明にまた会おう。
(くそっ、道の話を聞き逃した!)
手が右目に向かった。
「聞けばよかったな」
「何か気に入るものはありましたか、若いの」
「……いいえ」
屋台を離れながら、口から息を吐いた。
(まあ、まだ人はいる。また何か聞こえるかもしれない)
「どこへ行く、カゲヤ」
大吾の声で、ぴたりと止まった。
「探して……いました」
「ん……出発するぞ。行くぞ」
二人で荷車の方へ向かった。荷車は他の多くの間に停まっていた。
「値のつくものは見つからなかっただろう」
(ここにいたのか)
大吾が番人代を払った。荷車に乗り込んで街を出始めた。
出口のところで、四人のグループが手を上げて止めた。止まると、一人が笑いながら近づいてきた。
「萌えるマナを。失礼、ミズキリへ向かっておられますか」
「萌えるマナを。そうだ」
「次の検問所まで距離があります。お供しましょうか」
(なるほど。商業の街なら護衛屋がいるのは自然だ。道は危ないこともある)
「必要ない」
「実力がないと言っているわけではありません。ただ北の道には見張りがない区間があります。兵士を特定の場所に集めているので」
「知っている。情報は入っている。マナがお前たちを守るように」
それだけ言って、大吾は旅を続けた。カインが振り返って、笑みを浮かべた。
(大吾が片手でへし折れるような連中が護衛を売りに来た。ははっ)
荷車の動きでグループが遠ざかると、その笑みがじわじわと消えた。
(待って……北?)
顔を上げた。太陽の角度がまだ早い時間を示していた。
(あっちが東……)
前を向いた。
(西へ向かっている)
安堵なのか、怒りなのか、やるせなさなのか、自分でも分からないまま、理解が落ちてきた。
「道を見ていろ」
両手が顔に向かった。交差点に差し掛かったところで、一台の荷車が右へ曲がっていくのを見た。
(ここでは……西から太陽が出るのか)
大吾が右へ曲がった瞬間、両手が頬を引っ張り、下まぶたを下げた。
(最初に目が覚めた時に逃げていたら……)
「カゲヤ、気を張れ」
(静かにパニックを起こさせてくれ)
旅の間、カインは地平線を黙って見ていた。
(聖花道での任務の時さえ、考えなかった)
荷車が止まったことで、検問所に着いていたのに気づいた。
前回の三人より多い、七人の兵士がいた。前の荷商人を囲んで、道中のこと、危険なものを見かけなかったかを聞いていた。
その後、荷車と荷物を丁寧に調べた。
退屈から生まれた危険な考えが、カインの頭をよぎった。
「何をしていたんですか」
「ん」
……
(それは「ノー」ということか)
……
「連絡を取ろうとしていた。誰もいなかったので、ミズキリでする」
「なるほど」
「着いたら最初にそれをする。風守家にメッセージを送る」
「盾林の件で?ダンジョンの手助けのために?」
「ん……違う」
その唸りがカインを揺るがした。まるで誇りのような音だった。喉で笑ったような。
見ると、大吾の目が全開になっていた。
「戦いでお前に勝てる候補がいる」
(一日も経っていない)
「アサヒ狩人。またお会いできて光栄です」
兵士が大吾に挨拶してから同じ質問を繰り返した。状況を違う目で見ていなければ、心の中で笑っていただろう。
(落ち着け、カゲヤ。そんなに早く誰かを思いついたはずがない。俺のレベルを知らない)
(イノシシはカウントしないとして)
兵士の確認が終わった。拍子抜けするほど早かった。
荷車が動き出した。雪に覆われた山がだんだん大きくなっていた。カインはそれを見ていなかった。
「条件は……同じくらい厳しいことを願う」
「そうだ。知っている家族の中では、風守が条件を満たせるだろう」
「戦いで俺に勝てるとは思えない」
その瞬間、カインは何かを感じ取った。大吾の笑みだった。小さく、真剣で、しかし完全に自信に満ちていた。
「受けるかどうか分からないが、もし向こうの後継が来るなら……」
(もう何も言わない。約束する)
カインは大吾の隣に座った。黙って、負けを認めながら。認めたくなくて、目的地を眺め始めた。
道が下り始めた時、カインは顔を上げた。
雪山がずっと近くに来ていた。その大きさに目を奪われた。
気づかなかった自分を責める余裕もなかった。
視線が頂上から始まった。霧が緩やかに、しかし止まることを許さない力で回っていた。
その下、雪が中腹で止まっている。さらに下——遠くから見えていたあの線が、今ははっきりと判別できた。
山の麓の方に、山にしっかりと固定された巨大な構造物があった。それが麓に広がる街へと繋がっていた。
街は真ん中を流れる川に沿って伸びていた。
分析しているだけのふりをやめた。荷車の端を掴みながら立ち上がった。近づくほどに、都の細かいところが見えてきた。
木造の建物。ほぼ儀式的なほど深い赤に塗られていた。水の流れに沿って、赤い欄干が続いていた。
気づかないうちに口元に笑みが浮かんでいた。
大吾が横目で見て、一度唸った。
郊外に荷車を停めた。また兵士たちが大吾に挨拶した。
荷車から降りた時、別の道を見ると、遠くから一台の荷車がこちらへ向かってくるのが見えた。
「来い」
カインは大吾についてミズキリの中へ入った。最初に感じたのは、水の香りが街全体に満ちていることだった。
歩く間に別の匂いが届いた。体がわずかに反応した。
(これは……間違いない)
大吾の後を追う足が止まった。そのまま一つの屋台へ向かった。
小さな火鉢の上で、小さな魚が焼かれていた。
大吾は気づいてカゲヤが止まったのを見た。
(そうだ……欲しい。絶対に欲しい)
「言われなくても分かっている」
(何を言われなくても)
「魚は買わない。行くぞ、カゲヤ」
大吾が離れていくのを見て口が開いた。追いかけた。
「決めつけないで。少し試してみたい」
「もう何度も食べている。ここで食べ物で遊ぶな」
(カゲヤ……これが俺がお前を嫌いな理由の第一位だ)
大きな頭領の後をついて歩いた。不満を一切隠さずに。
二人は大きな窓のある建物に入った。
大吾がカウンターに近づくと、すぐに認識された。
「脈打つマナを、アサヒ狩人」
「脈打つマナを。盾林の砦へ行ける人員はいるか」
「移動できる者がおります。急ぎの配達をご希望でしたら、ナリワダチのご利用をお勧めします。費用は込みになりますが」
「ん。それで」
「こちらへどうぞ、アサヒ狩人」
受付の女性が紙と白鳥の羽根の筆、かすかに光る墨を差し出した。
大吾がメッセージを書くと、文字がゆっくりと消えていった。彼女がそれを受け取り、折りたたんで封筒に入れ、その場所の紋章の入った封蝋で封をした。
「銀貨百枚と銅貨五十枚になります」
唸りとともに大吾が払った。
「承りました。風守家への配達は責任を持って行います」
「頼む」
(今、俺の未来が封をされるのを見た気がする)
「行くぞ、カゲヤ」
二人が建物を出た。大吾が次の目的地を見た。歩き出す前に、振り返ってカゲヤに銅貨を十枚渡した。
「ほら」
(これは俺が思っているものか。どうでもいい。俺にとってはそういうことだ)
何も言わずに、カインは魚の屋台へまっすぐ向かった。
「いくらですか」
「串一本、銅貨十枚」
カインが銅貨を渡し、一番気に入ったものを選んだ。急いでいる様子を隠そうと何度も息を吹きかけた。
一口かじった。最初に感じたのは……不味かった。噛み続けた。より力を入れながら。
飲み込んだ。想像以上に苦労した。それを絶対に認めないまま、もう一口、もう一口と食べ続けた。
串を食べ終えて、棒を売り手に返して大吾のところへ戻った。
「無理して食べただろう」
「気に入れるようになろうとしている」
二人は大吾の次の目的地へ向かった。カインは三歩後ろをついて歩いた。
手を上げて右目に触れた。指先が軽く額をなでた。
(俺は俺のままでいる。カゲヤ)
お久しぶりです…!戻ってきました。更新が遅れてしまい、申し訳ありません。
実は仕事で怒涛の一週間を過ごしており、家に帰ることすらできませんでした(笑)。
でも、これを言い訳にするつもりはありません。世の中には、仕事でヘトヘトに疲れていても、そこからさらに力を振り絞って頑張っている方がたくさんいることを私は知っています。
ですので、今回のメッセージで私が一番お伝えしたいのは……「毎日頑張っている皆さんは、本当にすごいです!」ということです。毎日お疲れ様です!




