過去の影と旅立ちの道
朝の光が、住宅地の外れにある小さな廃屋の馬小屋を照らしていた。
中では、緑の髪をした少年が膝をついて手を押さえていた。手首から指の関節にかけて切り傷があり、かなり血が出ていた。
床には、ガラスの破片が散らばっていた。
目の前には年上の若者が二人と、傷を負った少年と同じくらいの年齢の者が一人いて、互いに言い合っていた。
「なぜそんなことをした。脅すだけだと思っていた」
「返事が気に入らなかった」
「まさかビビっているのか、ルカン」もう一人が言った。
「そうじゃない!ただ瓶を投げつける必要はなかっただろう」
そのグループのリーダーが緑髪の少年へ一歩踏み出した。
「こんなやつがヴォイド・ストライダーになれると思っているのが腹立たしい」
「アルカ・ノヴァに行くのは俺たちだ。お前みたいなやつがその名前を汚すべきじゃない」
ルカンは腕を上げかけて、止まった。介入するかどうか迷っていた。残りの二人が少年の前に立った。
「今言ったことをもう一度言ってみろ」
「聞こえなかったか。アルカ・ノヴァで清掃員になれるかもしれないって言ったんだ」
全員が声のした高い窓の方を向いた。
「そうだ、ディランはそんなこと言っていない。嘘になるから。入れてすらもらえないと思う」
「カイン!何してるんだ」
カインはディランの態度が変わったのに気づいた。怖がっているようだった。
「ぶらぶらしていた」
「馬鹿なこと言ってないで行けよ!」
「見せ物を見逃すのか」
「かわいいな、仲間の助けに来たのか」
「友達がお前をぼこにするのを見たかった。でも見ての通り、武器まで使って一人じゃないとできないんだな」
年上の若者がもう一本の瓶を取り出した。
「待て……外したら恥ずかしいぞ」
「お前に投げるとは言っていない」
素早い動作で、ディランに向けて構えた。それを見てカインは苛立ちと心配が混ざった。注意を自分に引きつけられなかった。
「……それは好都合だ。思い切り投げろ。大人が来た時、事故だったとは言えなくなる」
「信じると思うか。誰かが近づく音なんて聞こえない」
「そうだな。時間がかかると言われたから先に来た。でも好きにしろ、俺が嘘をついているかもしれない」
リーダーが地面に唾を吐いてから背を向けた。
「行くぞ」
「逃がすのか。どうせ嘘に決まってる」
「行くぞ、と言った。入試の結果が出る前にリスクを負いたくない」
カインは三人が出ていくのを眺めた。ルカンが一度だけ振り返った。
「リスクを負いたくなかったなら、なぜこんなことをした」
「うるさい……カイン」ディランが小声で言った。
「え?ちょっと待ってくれ、ディラン。今下りる」
ひどい不格好さで、ゆっくりと下りて、最後に滑って床に落ちた。
「どうやって上ったのに下り方を知らないんだ」
「考えなかった」カインは腰をさすりながら答えた。
「誰から聞いた」
「それより先に傷を診てもらいに行くべきだ」
カインがディランを立ち上がらせた。
「俺には関係ある」
「……エラーラだ。お前がいじめられていると話してくれた。ついていくよう頼まれた」
「気づいてたのか。他に誰か知っているか」
「誰も」
カインが布切れを取り出してディランの傷を巻き始めた。
「きれいな布だ。その辺で拾ったわけじゃない」
「どこにあった」
「こういう場面のために持っていた。衣装の一部だった」
「じゃあ汚れるな」
「物は洗えばいい、ディラン」
巻き終えて、二人で馬小屋を出た。
「家まで送る」
「え?こんな姿で母親にどう見せるんだ」
「遊んでいて転んだと言えばいい、馬鹿なことを言うな、ディラン」
「嘘はつきたくない」
「『遊んでいて転んだ』と俺が言い……」
「分かったよ」ディランが遮った。
家の近くでディランが立ち止まった。
「クラスに遅刻させたな」
「気にするな。ここを出たら走って行く。お前が部屋に着くより先に間に合う」
ディランは傷を守っている布をそっと握った。
「ここでいい。お姫様でもないのに玄関まで付き添わなくていい」
「よろしいでしょうか、ディラン様」
二人が笑った。足元の地面まで和らぐようだった。
「演技、うまくいくといいな」
「ヴォイド・ストライダー、うまくいくといいな」
手を振って別れ、カインが背を向けた。
「なあ……エラーラにありがとうって伝えてくれ」
「もちろん」
「また明日、カイン」
「またな、ディラン」
ディランの笑顔を中心にカインの視界が暗くなって、完全に真っ黒になった。
瞼がゆっくりと開いていくにつれ、視野に毛皮の天蓋が映ってきた。
(ディラン)
体が荷台の木と一緒に揺れていた。
(あの時言えばよかったのか——実は俺が先にエラーラを落ち着かせたこと。お前がいじめられているのに気づいていたのは前からだったこと)
起き上がって、荷台の後方へ顔を向けた。
(……いや。それを言ったら気まずくなっていた。俺たちが子どもだった頃は特に。ディランは馬鹿じゃない。エラーラに聞いていなければいいが)
土の道が遠ざかっていくのを眺めた。
(元気でいるといいが……)
素材と袋の中にいたが、大吾はカゲヤの動きに気づいていた。
「起きたか。来い」
(少し待ってくれ……せっかちな人だ)
「今行きます」
渋々立ち上がって前の方へ向かった。操縦棒を確認した——大吾がしっかりと握っている小さなそれ。
(まだどう動くか分からないが、馬がいらないのは不思議だ)
「次の分かれ道を取る。気をつけておけ」
カインは道が枝分かれするのを確認しようと前を見たが、視線を奪ったのは地平線だった。
遠目でも巨大に見える山。半分以上が雪で覆われ、頂上は厚い霞の中に消えていた。
目を細めて、細かいところを見ようとした。
(山から下りてくる大きな線がある……水か。そしてあれは……)
「よそ見をするな」
「はいはい」
立ったまま、荷台の端を掴んで周囲を見渡した。
すぐにまた気が散った。右手側に広大な平原と、遠くに作物の畑。面白いことに、家畜が草を食んでいる辺りには雪がなかった。
左手側は森が葉を落として、不規則な台地が透けて見えていた。
太陽に向かって顔を上げて、手で光を遮った。
(ちょうど真上にいる。どっちへ向かっているのか全く分からない)
景色がゆっくりと流れていった。大吾は荷台を揺らさないようにしていて、進みは遅かった。
(もしこれがマナで動くなら、お前のあの化け物みたいな量があれば、もっと速くできるはずだ)
横目で操縦棒をもう一度見た。
(これを操縦しろと言われたら一日で着く。でも……これを動かすのにどれだけマナを使うか分からない)
しばらくして、カインは意図的に大吾に背を向けていた。しっかり見ているふりをした背筋だったが、顔は永遠に続く退屈を正直に表していた。
ごまかしながら寄りかかったが、目が地面に落ちて、ゆっくり過ぎていく石を数え始めた。
(三……四……)
ぼんやりしていたせいで、荷台が止まって誰かの声がした時に思わず反応した。
「脈打つマナを、アサヒ狩人。こんなに早く来られるとは思っていませんでした」
大吾がいつものように唸ってから答えた。
「脈打つマナを。いい狩りができた」
「それは納得できます」
カインは検問所のようだと気づいた。鎧は見覚えがなかったが、兵士だと分かった。
「ミズキリへの道はどんな状況か」
「野生動物と時々魔物が出たという報告があります。この辺りでは普通のことです。先に進むほど注意が必要かと」
「アサヒ狩人に注意しろと言う必要はない」
「多くて困ることはありません」大吾が動かずに言った。
兵士たちが大吾に話しかける言い方と、大吾が返す言い方で、カインは知らない歴史がここにもあると思った。
「これ以上お時間を取りません、アサヒ狩人。どうぞ」
「先にフユノ村へ寄る」
「承知しました。その方向には何も報告がありません」
唸りとともに、大吾は荷台を右へ向けた。
「マナがお前たちを守るように」
兵士たちは荷台が遠ざかるのを見ていた。
「あの若者は誰だ」
「息子じゃないか?よく似ていた」
「息子?そうは思えない。体格が違う」
「でもかなり背が高かった」
「二人とも仕事に戻れ」
「はい!」
その短いやり取りの後、旅はまたカインを苦しめる同じリズムに戻った。
もう一度空を確認すると、太陽が自然に下がり始めていた。
(前の方に沈んでいる。よし、西がどっちか分かった)
しかしその満足感は、太陽が下がるにつれてじわじわと薄れていった。
(五日間ずっとこれか。歩いた方が早い)
視線をどこに向ければいいかも分からず、雲で時間を潰していると、ようやく村が見えてきた。
そのままの勢いで立ち上がったので、大吾まで反応した。
「お願いだから、あれが行く村だと言ってくれ」
「そうだ」
「では先に行っています」
(もう限界だ)
「座れ。荷台は常に一緒にいないといけない」
カインが下りて荷台の横を歩き始めると、大吾は唸るだけだった。
村に入ると、二人のネサリが出迎えた。
「アサヒ頭領。随分と久しぶりです。一ヶ月以上お見えにならなかったので心配していました」
「長い数週間だった」
「荷台はいつもの場所に。私が見ておきます」
「任せる」
荷台を預けて、大吾が一番大きな小屋へ向かった。カインがついていった。
(どこへ行ってもお前は慕われているな、大吾)
着くと、三度ドアを叩いた。少ししてドアが開いた。見覚えのある顔立ちのネサリだった。
「脈打つマナを、アサヒ頭領」
「脈打つマナを、シラミネ頭領」
(え?)
「お待ちしていました。話すことがたくさんある。どうぞ」
「ん」
「アサヒさん。お元気そうで何よりです」
「ああ……はい。俺もです」
大吾の後に続いて、カインは机の横に座った。シラミネが台所の方へ歩いていった。
「いつも通りで?」
「ああ」
まるで何年も続く習慣のように、茶を準備し始めた。部屋に静けさが落ちた。
(何かしゃべってくれ。何でもいい)
大吾を見ずにいられなかった。
(この人は誰だ)
水が温まる音まで聞こえるほどだった。時間をかけて茶を仕上げ、机に近づき、三つの椀に注いで、それぞれに差し出し、自分の分を持って向かいに座った。
二人が一口飲んで椀を置いた。
「そうだった」
シラミネが立ち上がり、小さな壺を持ってきた。
「これをどうぞ、アサヒさん」
「ありがとうございます……」
蓋を開けると、蜂蜜の香りが出てきた。
(ああ……甘いやつか)
茶に二匙入れてから一口飲み、相手をどう観察するかを隠そうとしながら。
(この……方はカゲヤを知っていた)
「では、どこから話しましょうか、アサヒ」
「お好きなところから」
「ん。前のやり方に戻した。変えてみたら競争が増えすぎた」
「そう変えるなと言った」
「あなたの例に倣うだけではいられなかった。もっと努力させたかった。農業と畜産が主な俺たちが狩りに力を入れすぎた。でも結局いつも通り、あなたが正しかった」
「いい試みだった」
「期待ほどではなかった」
そのやり取りの後、二人はまた茶を飲むために黙った。その沈黙に戻ることがカインには拷問だった。
(村の話をしておいてまた黙るな。この人は誰だ。何か話してくれ……待って、なぜ気になるんだ)
「茶はいかがですか、アサヒさん」
「ああ……はい」
「それは良かった」
「シラミネ、本当に聞きたいことを聞け」
大吾が姿勢を変えた。シラミネも同じようにした。
「そうですね。いつも教えてくれて感謝しています」
「何年もの付き合いだ。当然のことをしているだけだ」
「ありがとうございます」
「ん」
大吾が唸った後、二人はまた茶に戻った。
(それをやめてくれ!)
「では……息子はどうですか、アサヒ」
(分かってた!)
「問題がある」
「やはり変わっていない……まだやることがたくさんある」
「多い」
「まだムスビガリが問題ですか」
「そう思う。村に帰らせた方がいいかもしれない」
「それは……義務を果たさなければ意味がない」
(あなたまで)
カインが突然立ち上がった。
「大きなことを言う。自分も失敗をしたばかりなのに」
二人が驚いてカゲヤを見た。
「カゲヤ、謝れ」
大吾がかなり真剣なトーンで言った。
「構いませんよ、アサヒ。息子の友人が怒るのは当然です。ちょうど目が覚めたところでしょう、アサヒさん。あなたはどう思いますか」
(まずい)




